第582号(2001年1月1日号)


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PCとLinuxが21世紀の科学のカギ フェルミ研究所、葉博士が最先端技術を披露

 フェルミ研究所でトップクォークを発見して注目を集め、沖縄とも縁が深い葉恭平博士の講演会(写真)が沖縄県庁講堂で十二月四日、開催された(主催・沖縄情報通信懇談会、沖縄インターネット協議会、後援・沖縄県)。

■クォーク発生年間数個 宇宙の成り立ちを解明する

 葉博士は現代物理学は宇宙がどうなっているのかを解明する学問であると述べ、宇宙がいまから百四十億年前に生まれ、五百億個の銀河で構成されていると一般的な解説を行った。  そして宇宙の成り立ちを解明するために宇宙の最少の構成要素である素粒子やクォークの研究が進み、九五年には葉博士らが六種類あって最後まで発見されなかったトップクォークを発見したことを紹介。

 「それまで十八年間七十人のチームでトップを発見しようとしたが果たせず、ボクが研究を学生と二人で引き継ぎ、二カ月で発見できた。コンピュータをフルに活用したが、その前に少し手で計算した。ちょっとは頭も使った」という秘話を明らかに した。 クォークの研究は次の十年はなぜクォークが六種類しかないのか、なぜ十個じゃないのかといった研究が深まるという。

 クォークそのものは十のマイナス十八乗センチメートル以下の大きさで原子の十のマイナス八乗センチメートルよりはるかに小さい。トップクォークの寿命は十のマイナス二十四乗秒である。

 トップクォーク発見の実験に用いた加速器は円周六キロメートル、超伝導コイルを巻き、一兆電子ボルトで加速し、粒子と反粒子を衝突させる。一兆回に一回の衝突で一回クォークが発生する。一秒に一回の衝突なら、一年が約三千万秒だから百万年 かかってやっと一個見つけることができる。毎秒百万回の衝突を行えば、一年に十個くらいのクォークが発見できるというわけだ。

 この実験では一秒に一テラバイトの情報が発生する。トップクォークは九五年の発見以来まだ二十個程度しか見つかっていない。そこで加速器の規模を拡大して、もっと効率を高めようとしている。毎秒一テラバイトの情報を処理するにはコンピュー タを使う。フェルミ研究所でもクレイ社のスパコンを使っていたが、一台千万ドルのマシンを五十台くらい使う。これではこれではとてもコストが合わないので、もっと安いものを自分でつくることにした。

■もうスパコンは使わない PCのクラスターで計算

 九二年からフェルミ研究所ではワークステーションを数百、数千台つないでスパコン以上の能力を引き出す方法を実現した。この時はIBMのワークステーション五百台を使った。パラレルコンピュータを自分でつくった。

 九六年からはワークステーションでもコスト高で、PCを使おうということになった。PCの方がはるかに安く、性能も向上したからだ。早いものが欲しくなればチップを代えればいいというのもPCの利点だ。

 OSはリーナックスを採用した。リーナックスの利点はオープンソース、電源を落とさずに何年も使えるという安定性、UNIXソフトの書き換えが三週間程度でできるといった点だ。

 九七年からペンティアムプロを使っているが、計算速度は八五年のVAX\780というマシンがMIPS当たり五万ドルしたのに対し、わずか四ドルというコストに下がった。最近の一ギガヘルツ超のチップを使えば二ドルまで下がる。

 というわけでフェルミ研究所のコンピュータはみんなPCになった。ワークステーションは全部高校に寄付した。同じことはフェルミ研究所だけでなく、最近ではNASAもPCを使い始めている。

 リーナックスはこの数年で大きく普及したが、最大手のレッドハットの社長はフェルミ研究所を見てリーナックスの将来を確信した。

 九八年まで大企業はリーナックスは使っていなかったが、九八年には米軍もリーナックスを使い始めた。レッドハットの社長に「リーナックスをサポートするんだったら全米の大学と研究機関二百以上がついてくる」とリストアップした資料を渡した。 それを見てIBM、インテルなど大手企業が続々リーナックスのサポートを表明した。

 レッドハットの社長が最近出版した著書の前書きにはフェルミ研究所という単語がいくつも出てくる。フェルミ研究所がリーナックスを採用したことが、世界を動かしたわけだ。

■物理学は計算する 21世紀の科学をリードする

 二十一世紀の科学はバイオ、ゲノム、DNAなどの学問が一層進展する時代だ。ところがここで最大の問題は計算するという技術だということになってきた。

 最近、タウニュートリノが質量を持つかどうかの重要な実験結果が出ている。宇宙を満たしている大量のタウニュートリノに質量があれば宇宙の重さが改めて決まる。フェルミ研究所でもタウニュートリノに関する実験を行っている。宇宙が収束に向 かうのか、発散するのかという問題に解決を与えることになる。

 これらの分野が二十一世紀の学問の中心となって行くが、他の科学も含めて高エネルギー物理学者に比べてあまり計算をしてこなかった。天文学者もニュートリノの研究者も高エネルギー物理学者に計算を頼んでやってもらっている。

 この点でPCをクラスターにして超高速の計算を行う手法とコンピュータそのものは将来にわたって世界をリードするだろう。

 人類がいままで見つけた銀河はわずかに四百万個だ。宇宙には五百億ギャラクシーある。今後、五年、十年で数億のギャラクシーが見えるようになる。コンピュータを使ってもっと遠いところが綺麗に見えるようになる。そしてそのコンピュータはイ ンターネットを使って世界のどこからでもコントロールできる。沖縄の若い人達もインターネットを使って世界を勉強して欲しい。


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