需要強く、伸びる余地があり、伸びた
好調な上半期を振り返る

(「観光とけいざい」第661号04年08月01日。WEB公開04年09月05日)

沖縄観光速報社・記者座談会

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(1)沖縄ブームと露出度アップ 6月までの好調要因
(2)高級リゾート・ラッシュの様相 ジワリ動き始めた品質競争
(3)7月上・中旬に落ち込み 小規模、民宿に多く影響出る
(4)基地縮小に多くの報道上半期のニュース解説
普天間返還の可能性、好調な物産販売、カジノ新局面、不評の観光情報プラットホーム、南部の落ち込み


 今年前半の観光客数は過去最高となり、好調を維持している。七月に伸び悩んでいるが、県観光リゾート局は七月の記者懇談会で早くも年間の目標が達成可能と発表した。この間の動向について解説も交え、本紙記者座談会で総まとめした。

沖縄ブームと露出度アップ 6月までの好調要因

《A》 〇四年前半の観光客数は二百四十九万六千七百人(七・〇%増)と過去最高を記録した。四、五、六月のオフの入込が好調で、四月の一三・七%増、五月の一三・三%増、六月の五・八%増と大きく伸ばした。昨年来の傾向だが、沖縄人気が強く、伸びる余地がある時期に延びた。また、六月まで県調査では修学旅行が大幅に伸びている。修学旅行は昨年実績の三十四万人から、今年は予約ベースの統計で四十万人に増える。六月までに五万二千人の増となるから、前半の伸びに占める修学旅行の割合は約三割と大きなシェアを占めた。

《B》 修学旅行が前半の伸びを底上げしたが、これは従来の十、十一月が満杯状態で他の月に分散したものだ。それにしても、修旅以外で十万人上乗せしたわけで、これは大きいと判断するのか、意外と小さいと見るのか。沖縄人気の要因は何だろう。

《C》 一般にいわれるのは前年のSARSの反動増だ。〇三年は四月と六月が前年割れだった。四月はイラク戦争の影響もあった。五月は連休の曜日配列がよく、大幅に伸びた。昨年の夏は逆にSARSで海外が落ち込んだ分、沖縄に旅行が振り向けられる「特需」が起こって伸びたとする見方が主流だ。

 これ以外に沖縄ブームといわれるものがある。新聞やTVでほとんど毎日沖縄に関するニュースや健康食品、長寿の秘密といったものが放送され、全く沖縄と関係がない番組でも、出演者が沖縄の話題を出すことがある。メディアに登場することを露出といい、その頻度を露出度というが、これが高まっている。

《D》 なぜ露出度が高まっているのかがカギだと思う。ブームなら時間がたてば飽きられるだろう。もっと普遍的な要因なら、沖縄の露出は今後も減少しないということになる。長寿や健康食品に関しては沖縄の注目度は国際的になっている。長寿の秘訣を探るには長期間かかり、とても一年や二年では足りないから、しばらく続くと見て良い。また、県産品が売れているが、これまでほとんど注目されなかったものが日本中に普及する途中であると見れば、沖縄の注目度というのは長期的に維持される。わしたショップや物産企業連合の神戸進出、泡盛の普及はブームではなく、沖縄文化が全国で当たり前のものとして受け入れられようとしているように見える。これを定着させるための戦略的な動きをわしたショップや泡盛業界、健康食品産業がやっているものと考える。

《A》 そう見ると、沖縄の発展に障害はないように見えるが、たまたまいま調子がいいから舞い上がっているだけなのでは。バブルの頃、日本経済は持続的発展過程に入ったという人が多かったが、実際にはバブルは弾けた。それに似てないか。

《D》 県産品の価格が異常に上がっているわけではない。旅行商品の価格もバブル期の土地のように値上がりしてはいないわけで、いわゆる投機的な動きではない。観光業界の場合、旅客は増えているが、それに伴って個別企業の売上が増えているかというとそうでもない。最近の動きでいうと、駅前ホテルや民宿・ドミトリーの大幅な増加から見て、むしろ、沖縄の滞在費用は安くなっている。安く滞在しようと思えば、かなり安くなるという幅が広がった状態だ。

《A》 安くなったから観光客が増えているというわけか。それは分かりやすい。

 一方で、滞在中の消費金額を増やすことを質の充実といって、質を重視しろという人が増えたね。

高級リゾート・ラッシュの様相 ジワリ動き始めた品質競争

《B》 それは屁理屈で新振計をつくる際に観光客数の目標をどうするかということになって、長期不況で右肩上がりの経済は終わったとか、那覇空港の滑走路の沖合展開が間に合わないから六百万人しか受け入れられないという意見が通った。航空会社、ホテルなど業界の審議委員が七百万人以上を主張していたので、五十万人を先島やクルーズ船で上乗せして六百五十万人と妥協した。これでは従来の伸びを下回り、必要な収益が見込めないから、客単価を上げることで解決しようとした。そのためには滞在期間を伸ばすことなどが盛り込まれたわけだ。

 しかし、従来のような成長が見込めないというのは迷信だ。沖縄観光そのものは停滞と成長を繰り返し、例えば九一年から九四年の停滞期五年間の成長率(観光客数)は一・七%、八〇年〜八六年の七年間は二・一%と右肩下がりに近い停滞を経験している。停滞が長期化するとバブルとは逆に将来を悲観する意見が主流を占めるようになるが、六百五十万人という低い数値を目標に掲げるとは情けない。目標設定の観光審議会が開かれたのはテロ後の十二月だから、明らかに委縮したんだろ う。

《C》 滑走路の問題は。

《B》 旧運輸省は一本の滑走路の離発着限界は年間十六万回と試算していたが、〇一年十二月三日付けの朝日新聞にこんな記事がある。

 《関西空港の発着可能回数について、旧運輸省(現国土交通省)が「運用次第で公表値の年間十六万回から二十二万回以上に増やせる」との試算を二年前にまとめながら、公表を控えていたことが一日明らかになった》

 というものだ。ちょうど沖縄で観光審議会が開かれている頃の記事だが、滑走路建設が間に合わないという説明に、この試算は入っていない。記事は関空の場合の試算だから、そのまま沖縄に適用できないかも知れない。しかし、発着時間を詰めて発着回数を増やすトライアルを運輸省は羽田で実施しており、従来の十六万回が十八万回に増やせるとの試算がある。トライアルに参加したJALはHPで、「十八万回プラスα」が可能だといっている。このαは関空の試算例からかなり大きくなるかも知れない。

《C》 つまり、那覇空港の六百万人という限界もJALのトライアル結果から一三%は伸ばせて六百八十万人程度まで可能。それに先島の五十万人を上乗せして七百三十万人くらいは問題ないわけだ。

《A》 ならば量より質といって、六百五十万人におさえるというのは話しにならない。

 量をセーブしようとしたら弊害が大きすぎる。質で解決はできないだろう。

 私は一貫して観光客数を拡大することが沖縄観光の発展そのものである、と述べてきた。数の増大は質の転換をもたらすから、質の転換をことさら叫ぶ必要はないと考えている。

 それを表す実例が続々出てきた。例えば、西海岸で始まろうとしている超高級リゾートのオープンラッシュだ。来年の四月にはかりゆしグループの最新鋭ホテルがオープンするが、このホテルはその後の高級ホテルの競争の先駆けになる。さらに、ブセナのオールスイート、宜野湾市に進出が予定されているプリンスホテル、万座のオールスイート、アリビラ周辺に立地が予想されるリゾート、糸満市のエンターテイメントリゾートは基本的に高級路線での勝負となろう。ホテル名も国際有力チェーンがでてくるだろう。この他にも読谷村の北側にある与区田ビーチはサンエーが所有する土地で植栽が整えられており、着手となれば相当大がかりな開発となりそうだ。

《C》 高級リゾートの競争は沖縄リゾートの質を一挙に高めるものとなる。いま上げた例が全部実現すればざっと三千室前後の客室が整うことになり、それに見合って客数が増えなければ、既存ホテルの稼働率が下がることになる。

 高級リゾートラッシュで、いま八〇%稼働しているホテルが六〇%に落ち込んだ上、集客のために室料をさらに落とさなければならないとしたら、これは観光危機だね。廃業が続出するだろう。実際、八〇年代前半、沖縄観光は歴史の長い中小ホテルがいくつも自主廃業した経験がある。この中には、もしいまでもあれば、歴史と伝統のあるクラシックホテルとして人気が集まったろうに、と思われるところもある。サミットのあとに那覇東急が閉鎖したが、客単価が将来にわたって上げられ ないと悲観したからだった。これと同じことがまた起こるとしたら、ゾッとする。

《B》 小泉構造改革というのはこのことではないのか。新しい産業を興して、効率の悪い分野を縮小しようというものだが、新しい産業は何もおこらなかった。現実には景気が拡大する中で企業は効率化を図ることができるが、景気が悪いときにこれはできない。新しいものを開発するより、ものが売れないのだから従業員を解雇した方が早い。すると失業者が増え、社会保障費が増えるだけで、政府の支出は身動きがとれないものとなり、よけい景気が悪くなる。

 観光業界の場合、既存ホテルの生産性を維持した上で、地域を活性化させるにはどうしても全体の数の拡大が必要となるわけだ。実際にはオープンするホテルの客室数などは事前に分かっているのだから、既存ホテルの稼働率を落とさないために入域客数をどの程度増加させなければならないかの精密な目標を立てることができる。

《D》 もう一つ身近な実例として、七月上・中旬の旅客数の減少が座間味村に波及したことを紹介しよう。

7月上・中旬に落ち込み 小規模、民宿に多く影響出る

《D》 例年ダイビング客であふれかえる七月の座間味村で、七割以上の民宿で前年を下回る実績となったという報告だ。七月上・中旬は沖縄全体でも航空到着便の乗客数は五%程度の減少だった。那覇市内の有力ホテルは前年並みを維持したが、全体に不振。観光施設にも影響が出ている。

 減少要因は@沖縄本島のホテルがオーバーブッキングを避けるため客室を慎重にコントロールしたA運賃やホテル価格が上昇し、お客が集まらなかったことなどが考えられるが、実際には後に述べるB航空会社が政策を誤った結果だった。

 七月の不振が座間味村に影響を与えた経路は@オーバーブッキングしたホテルから座間味村へのお客の誘導がなかったA沖縄本島の旅客がどうしようもなく満杯になったところで座間味村にお客が振り向けられたが、今年はそれがなかったことが考えられる。座間味村はこの他、フェリーの予約受付が一ヶ月前からとなっており、二ヶ月前から始まる航空座席の予約に間に合わず、予約の対象になりにくい、という問題がある。

 客数をセーブすると沖縄本島の有力ホテルは前年並みの稼働になるかも知れないが、座間味村などの離島は目に見えて入込が減少するということになる。お客が増えすぎてやっと離島までお客が回ってくるという仕組みだったことが改めて分かる。

《B》 なるほど。有力ホテルでは客単価が上がって客室は前年並みに稼働したので、いやな言い方だが、質が上がった。しかし、集客力の弱い離島にしわ寄せが行ったわけだ。ということはおそらく沖縄本島の民宿の稼働率も今年は伸びないのでは。

 もちろんここではオーバーブッキングをせよといっているのではない。有力ホテルが質を高めようとすると、やり方によってはこのような現象が起こるということだ。

《D》 同じことを影響力が大きい航空会社が行えば、つまり、五百人乗りジャンボで六割の利用率より、三百人乗り中型機を満席にしたほうがよいという政策をとるとどうなるか。ジャンボならあと四割ある空席を埋めようと割引を出してお客を上乗せでき、四百人、五百人になるかも知れないが、三百人乗りだとこれ以上伸びようがないから、価格を上げるだけとなる。旅行社に渡す席数を減らして、直接販売する割合を増やそうとするかも知れない。航空会社の収益は三百人乗りの機材を定価で満席にすれば、最大になる。しかし、五百人乗りのジャンボに四百人乗せても、三百人で満席の中型機で利益は同じになることもある。三百人で満席を優先する政策を選べば、お客が増えることによって利益が増える旅行社や観光施設、レストランなどのビジネスチャンスが失われる。観光地自体の活力がなくなる。座間味村の例がこの間の事情を的確に示している。ホテルの場合は滞在日数が増えれば、旅客数が増えなくても売上を増やせるから、必ずしも量が必要とはならない。

 観光業界は個々の企業を見れば、高級化で売上が増えるというところはいくらでもあるが、全体を見れば数が増えることによって恩恵を受ける事業の方がはるかに多い。沖縄全体にとっても数を追う政策が正解だ。高級化は放っておいても、やる人が必ず出てくる。逆に低価格化も誰かが必ずやる。サービス向上や供給不足の改善、異業種間の調整も重要だが、お客がいない、少ししか増えなくなることが大きな問題で、需要サイドの政策を沖縄県や航空会社は最優先すべきだ。

《B》 それは今年の一月以降の航空会社の政策を見ると分かるね。JALが供給を絞って座席利用率を高めているのに対し、ANAは供給を大幅に拡大して利用者を増やした。ANAは今年前半の伸びに大きく寄与している。

《D》 実は七月の不振の要因を明快に指摘する人がいる。旅行社は沖縄商品を売り切って、航空会社にもっと座席を要求したのに対し、航空会社が渡さなかったという証言がある。

《A》 どういうことだ。

《B》 個人客をあてにしていたようだ。旅行社に席を出すよりもインターネットで個人客が集まるだろうと踏んだが、裏目に出たというんだ。ま、下旬から盛り返すと思うが。

《C》 航空会社はリストラでセールスマンを減らしたのではないか。インターネットで席が売れるなら経費のかかる営業マンはいらないってか。今年は旅行社へのセールスがなかったとも聞く。セールスを一年休んだらセールスのやり方を忘れるよ。

《A》 量か質かの問題は簡単にいうと百人しかお客がいないホテルに泊まるより、千人のホテルの方が面白いということだろう。千人収容のホテルならひょっとしたら学生時代の友達にであったりする。数年前、ロワジールホテルのプールサイドで家族でビールを飲んでいたら、学生時代の同級生家族にばったり出会い、メシを喰おうということになったが、家族だけだったらハンバーガーみたいなものを食べる予定が、琉球料理の高級コースになった。消費金額が増えたわけだ。

《C》 アハハ。高級料理を食おうと思っていたのに友人家族と会ったから居酒屋に格下げになるということもあり得るよ。それは冗談としても、人が多いということは出会いのチャンスが増えて本当に楽しい。映画「タイタニック」も出会いをきっかけに物語がスタートする。

《A》 そこは新しいポイントだ。観光産業というのは観光客と地元との交流を中心に議論されやすいが、お客の数が増えてくるとお客同士の相互作用というのが発生する。二十年ぶりに観光客同士が家族で出会ったら、豪勢な料理で高い酒を空けようということはある。県内では地元が沖縄文化を押し付けている感じだ。しかし、お客同士の交流で消費行動が高まるという仕組みが創れると思う。リゾートタウンを創ろうという提言を大城栄禄元観光リゾート局長が行っているが、それを狙って いる。

《C》 リゾートタウンの発想は観光客の密度を高めて何らかの相互作用を起こさせる、そのための広がりを持ったスペースを創ろうというもので、ワンビーチワンホテルではなく、まちづくりをしようという考えだ。いま、それができにくいのは西海岸などの場合、様々な規制があって木が切れないとか、土地の交換分合がやりにくいので、可能性が失われていると。それをできるようにしようというものだ。読谷のアリビラの周辺が実はそれができる、それを目的にしていた。集積のメリットは必ず出てくる。

基地縮小に多くの報道上半期のニュース解説
普天間返還の可能性、好調な物産販売、カジノ新局面、不評の観光情報プラットホーム、南部の落ち込み

《A》 今年の注目のニュースを短く解説して、締めくくりにしよう。

 メニューは米軍基地再編、物産企業連合の神戸進出、観光情報プラットホーム、カジノプレゼンテーション、南部観光の地盤沈下などだが。

《B》 米軍の世界的再編は沖縄に影響するのは確実だろう。普天間基地の代替施設なし返還の報道だが、その後、嘉手納に一部統合案や県外移転などが報じられた。また、米軍再編では世界中で最も強化されるのがグアムで、これからグアムは大景気になるというロサンゼルスタイムズの記事がある。沖縄基地は確実に動く。

《C》 小さく動いてもしょうがないが。

《B》 ラムズフェルドが昨年来沖した際、「SACOを見直せ」といったやり取りがあったのは確かだ。ラムズフェルドの発言は直後に広報担当から米系マスコミにはオフレコの条件付きのペーパーが配られ、辺野古がデッドロックに乗り上げているという部下の報告に対し、とにかく解決しろ、という発言があった。国内マスコミもそのペーパーに気がついていたが「毎日」が書くまで誰も手を出さなかった。また、稲嶺知事との会見ではラムズフェルドは手みやげとして重大な一言を胸ポケットに用意していたが、稲嶺知事の突き上げに本気で腹を立ててそれを言わないで切り上げたということだ。

《C》 五月頃から小泉側近からは沖縄基地が「動く」という話しは漏れてきているね。大手旅行社が返還基地の住宅群をそのままリゾートとして活用したいというのは面白かった。

《D》 物産企業連合の神戸進出は痛快なニュースだった。神戸市のビジネスセンスには定評があるが、人気のわしたショップを調査して、これをつくったのは誰だということになって宮城弘岩さんにたどり着いた。そこで物産企業連合を誘致したわけだが、宮城さんは率直に喜んでいたよ。

《B》 沖縄の特産品とは何かを相当に掘り下げてコンセプトをつくっている。詳しく話しを聞くと沖縄の歴史や文化、地域性から生まれた県産品の位置づけが明快だ。県産品は沖縄文化そのものであり、それぞれにストーリーがついている。物産にストーリーをつけるというのは基本なんだが、県産品の場合、その由来が大交易時代やその前まで遡るものがいくらでもある。沖縄のウッチンは大岡越前に出てくる小石川養生所に納品されていた優れもので、他の地域でもできるけど沖縄のものが最も効用があった。このような由来を掘り下げて県産品とは何だろう、…だから現代にも通じる良品なのだ、というやり方。

《C》 海に開かれた神戸と沖縄の類似性や沖縄の人がもともと多いという文化を重視しているね。陳舜臣さんの「琉球の風」が表現している沖縄をつくり出すと宮城さんはいっているが、NHKが大河ドラマで放送したときは必ずしも評判はよくなかったのに、神戸出店に当たって非常に重視しているのは面白い。神戸の人たちもそ れを面白がっているようだ。

《A》 観光情報プラットホームは一億五千万円かけてできあがったが、評判は悪いね。誰でもいうのが「一億五千万円かけてつくったのに情報を登録するのに何で登録料が必要なんだ」というもの。業界人の素朴な疑問だと思うが。

《B》 当面はタダだから登録してくれと。しかし、ゆくゆくは有料にします、といっている。基本的には内容が優れていればお金を払うのにやぶさかではないが、そうはなっていないね。新しいものが何もない。最大の売りがソースコードをオープンにしていることというが、そんなものいじる人はいないだろう。その気にさせる魅 力がない。仕様を見た段階から失敗が予想されたが、業界の反応は早くもその通りになった。私は観光情報プラットホームの仕様のOCVBの記者発表の席上でかなり手厳しく批判したが、全く改善されなかった。アドバイスに入ったプロの意見もどんどん無視されたと聞いている。IT技術者の中には「観光業界からいかに金を巻 き上げるかというよくある悪いパターン」と見通しているよ。

《C》 観光を知らない人が仕様書を書いて、観光を知らないIT業者がとにかく受注した。できあがったものは観光業界にとっても良心的なIT技術者からも評価されないものになってしまった。2チャンネラーに評価させたらどうか。

《D》 二、三年前のデジタルアーカイブ事業と同じだね。あれの場合は東京で活躍しているというふれこみで、沖縄の文化を知らないプロデューサーが、県内の文化を知らないIT業者にとにかくコンテンツをつくらせた。二十年、三十年かけて本物のコンテンツを収集してきた県内のクリエーターがあまりのばかばかしさに途中で 降りた。県内の伝統行事の克明な記録のコンテンツを持っている事務所などがあるのに、それを使わないで改めて映像を取り直すというようなことをやった。ニセモノがホンモノを追い出した典型的実例だった。

《A》 予算を消化するという意味ではとにかくやるべきだったのでは。

《D》 おいおい。

《A》 一億五千万円の道路建設と同額の観光情報プラットホーム事業では、つくっている途中の経済波及効果は同じだろうといっている。一億五千万円で百人の失業保険を支払う場合の経済波及効果も同じだ。

《D》 経済波及効果は同じようなものになるというのは正しいが、投資効率を見るべきだろう。必要な道路はつくれば役に立つし、その後百年以上利用される。しかし、コンピュータ関連だと次々に技術革新があって二、三年でやり直しが必要になる。プラットホームやデジタルアーカイブの場合、つくった瞬間から役に立たないと いう意味で、経済学的には投資効率は小さかったといわざるを得ない。道路建設や道路標識を充実する方がはるかに有用だろう。もちろん名誉挽回のチャンスはあるが。

《A》 カジノは。

《B》 来年春にはカジノ議連が法案を提出することになっている。法律ができればどんどんやるべきと思う。その前に、記者会見で国場幸一郎氏は「観光地は常に新しいものができていなければならない。それがなければ停滞する。これを心配している」といっていた。ディズニーランドがいついっても新しい施設ができている、というのと同じ考えで、確かに新しいものが出てこなくなって衰退した観光地の実例がたくさんある。県内観光施設やホテルが常にリニューアルしているのはこのためだ。また、法案が通れば全国でカジノ施設が可能となり、沖縄が出遅れるわけには行かないという率直な問題意識だと思う。

《C》 それは分かる。しかしカジノというと地域住民の反対が起こると予想されるが。

《B》 プレゼンテーションを見たが、優れた内容だ。反対する人を説得できる。私も世界中のカジノを見たが、欧米のカジノの雰囲気はいいよ。マカオ、韓国のものはくらいイメージがあるが、計画は沖縄の開放的なイメージにあう内容だった。違和感はない。オープンしたら五年から十年で沖縄の観光客を倍にするとカジノ・オー ストリア社の設計者はいっているが、そのくらいのインパクトはある。このプレゼンテーションの直後、ある人気リゾートのビーチサイドで業界の先輩方と昼メシを食べたのだが、人気のリゾートでさえ影が薄く感じた。

《C》 それはあなたが世界中を見ているから、いろんな連想が湧くのだよ。まったくすぐにいろんな影響を受ける人だなあ。どんなイメージが湧いたのかここでは聞かないが、建設が楽しみだ。

《A》 南部観光の地盤沈下とは。

《D》 観光客の流れが本部町の美ら海水族館のオープン以降ガラリと変わって、お客が激減している。再活性化のために南部の施設事業者が結束して情報発信機能を高めようと活発に活動している。具体的には互いの施設をよく理解し合って、レンタカー客などに互いの施設をPRしていこうというものがある。

《A》 観光協会のようなものか。

《D》 複数の市町村を横断する組織になっていて、役所が入っていなのが特徴だ。

《A》 かつての観光協会や観光連盟はよくキャラバン隊を組んで大都市圏の旅行社営業本部にセールスをしていたが、最近はそのような活動が少なくなったようだ。南部の再活性化にそのような手法は取り入れられないのか。

《D》 ホントはそのような手法が必要かも知れない。「かも」というのは最近は旅行社自体が商品企画を地元に任せるケースが増えて、必ずしも東京で企画を立てているわけではない。また、旅行の販売方法が一昔前はセールスマンが団体を丹念に回っていたが、最近は個人旅行が増え、メディア集客やインターネットの比率が高まっ ている。観光協会のメンバーと一緒に私も大手旅行社の営本でのセールスをよく取材したものだが、最近はその種の取材が全くなくなった。

《A》 なんだか小沢一郎が民主党の若手に対して、選挙区まわりが足りない、といっている話に似ているな。

《D》 そのような面があると思う。観光が人と人との結びつきなら、お客はもちろん、旅行社との連携はどうしても必要だ。それが最近はメディアやインターネットに頼るようになって、仕事の仕方がずいぶん変わった。しかし、地道な人脈づくりで徐々にお客が入り始めた施設もある。基本はそこではないか。

《A》 もし美ら海水族館にお客が流れがというのが本当なら、幸い、美ら海水族館は国の施設なんだから、南部観光を案内する仕組みをつくってもらうという手もあるね。南部の細かい説明ができる人材を海洋博記念公園の情報センターに派遣して、お客を誘導する。そのためのインフラは用意してくれというのは無理な注文ではな い。

《D》 それで誘客効果があるかどうかは疑問だが、海洋博記念公園には情報センターができていて、建物のなかにコンピュータを置いて本部町の観光名所などが見られるようになっていた。無人の施設だから子供たちがパソコンにさわって遊んでいるだけのようだったが、ちゃんと面と向かって案内する人がいると効果が出てくるかもし れない。南部の一日バスツアーに参加したが、じっくり回れば三泊分のメニューが十分成り立つ内容だった。ビーチ、ゴルフ場があり、文化・芸能施設、観光農園、体験学習、グスクロード巡りなどエコツアーを組める体制が整っている。日本最古の人骨が発見されているし、沖縄をつくったという伝説のアマミキヨが上陸したのが新原ビーチ周 辺。謎のミントングスクにも興味は尽きない。斉場御嶽は世界遺産だ。

《C》 カジノ・オーストリア社は糸満市での開発を目指しているのだから、これができれば南部は脚光を浴びる。

《B》 カジノ・オーストリア社の理屈が面白い。なぜ西海岸ではないのかと聞いたら「すでに誰かが開発したところでは面白くない」「空港に近い南部がよい」ということだった。那覇市内ホテルとの結びつきを強化したり、ある程度の規模の拠点ホテルは必要だと思う。

《A》 南部はとにかく打てる手をどんどん打つべきで、本紙も紙面で協力していこうと思う。  


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