客室増え、伸びる要因整い始めた
再びキャンペーンが必要になる時期だ

(「観光とけいざい」第670号05年01月01日。WEB公開05年02月06日)

沖縄観光速報社・記者座談会

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 専門記者が集まって昨年の回顧と今年の展望を話し合った。昨年のトピックスは意外と盛り上がらなかった観光客数、活発な国際チェーンの動き、年末になってDFSの開業、OCVBの予算が問題になった。今年は五百四十万人の目標を沖縄県が打ち出している。この目標に対し業界は強気と弱気が混在しているようだ。

台風で低い伸び 予算削減で観光行政にも影響

《A》 観光客数が盛り上がりに欠けたのはなんといっても予想以上に台風が多かったというもので、前年並みなら県の目標五百二十五万人は達成していただろう。

《B》 オーバーブッキングを警戒して客室販売をかなり押さえ気味にしたといわれている。結果として県内中小ホテルにお客が回らなかったという。また、九月の料金設定が前年まではオフ料金だったのが、昨シーズンは九月十五日までトップ料金を継続。リゾートホテルなどは九月後半の客室が先に売れた。直前になって前半も売れたが、前半は台風で大幅に前年割れとなった。

《C》 修学旅行は〇三年度に沖縄は高校の行き先で初めてトップになった。この傾向は今後も続くと見られる。ただし全国の修旅を担当する旅行社によると、不況で高校生が減っているそうだ。修学旅行に参加できない生徒が増えると、もし沖縄が割高なら目的地から外れていくだろう。すでに三泊四日を二泊三日にするなど工夫が始まっている。

《A》 ピークシーズンの十一月が割高となるため、十二月にシフトしているのが目立つ。県内受入施設も修旅の受入体制を十二月にシフトして、十一月は団体や個人向けにプログラムを組み直している。十月までマリンレジャーを組み込めた修旅だが、十二月になるとマリンではなくなる。低調だった十二月がこれでかなり底上げされる。

《C》 高校生が減っているというのは県内の観光施設でもアルバイトの学生が学校を辞めたというケースが出てきて長期不況は深刻だ。観光客数は増えるが、消費金額が減少しているように見える。

《B》 OCVBが予算が組めないという話しも構造改革、三位一体改革から来ている。この問題は本紙で今年は予算を組めないという外郭団体が続出しそうだ、解散・再構築もあり得ると見通したら、沖縄タイムスの県がビューローに解散してはと申し入れたという記事になった。

《A》 ビューローの松本会長は「解散は聞いたこともないし、内部で検討したこともない」ときっぱり記者懇談会で否定していた。

《B》 松本会長も心労が多い。確か前の理事長が急にやめたときも理由について「全く聞いてません」といっていたね。同じような発言を記者達は二度聞いたわけだ。

《A》 県の宜名真局長も解散とは言っていない。ただし、時代のニーズに合わせて財団から社団へといった改革は必要ではないかと言っている。県の全部局が予算を七割で要求するように言われており、ビューローも大幅な予算削減を心配したのだろうと言う。観光予算に関しては全力を尽くすと言っている。

《D》 県は観光リゾート局を商工労働部などと合併しようとしていたが。

《C》 観光リゾート局がどこかの部の中にはいると、観光行政は停滞するだろう。商工労働全体を見る部長が同時に観光も見るより、部長級の局長が独立に観光を指揮する方がはるかに成果が出やすい。部の中に埋もれてしまうような組織改編はやらない方がよい。もし構造改革の一環で予算削減の方便になるようなら、統合は反対すべきだ。

《D》 結局どうなるのか。

《B》 いわゆる構造改革を進めるなら、現状のOCVBに仕事を発注すると、OCVB経由で下請けに値段をたたいて再発注し、非効率な成果しか出てこないので、予算を出す人は直で従来の下請けやOCVBと関わりがないピュアな組織に発注すると、いいものをより安く得られ、効率が上がるということになる。

 すでに大手は大型施設の運営受託をターゲットに準備を整えている。このような構造改革が進むなら観光行政も納税者の批判を受けずに効率が上がり、予算を増やせる。ただしOCVBの存在意義を新たに構築して、突破口を開く道もある。

期待集まるDFS ショッピング観光に波及する

《D》 次ぎに明るい展望としてDFSの開業があった。ハワイに次ぐ規模で免税品が那覇市内で買えるようになった。レンタカーが常時六百台待機して、ゆいレールおもろまち駅まで行けば快適にレンタカーが受け取れ、待ち時間にショッピングが出きる。旅行各社が商品化している。

《A》 沖縄型特定免税店制度の空港外展開というわけだが、意外に買う人は少ないのではないかという見方があるね。一方でルイヴィトンの国内五十店舗目のオープンであり、それだけでショッピング客が集まるという見方もある。

《B》 DFSの創業社長の一人は沖縄にいた。六〇年代日本人が当時フリーゾーンだった沖縄で免税品を大量に買うのを見てアメリカの青年がDFSを思いついた。

 復帰後、これができなくなったので沖縄撤退。それと前後して世界中でDFSを展開した。沖縄で着想したアイデアが世界に広まったわけで、DFSの引き渡し式典で現社長が「六〇年代と七〇年代に沖縄にDFSがあった」と言及していた。沖縄の貿易業の古株はこのことを良く知っていて「DFSの社長は沖縄にいたよ」という話しをしている。

 その後、創業者長はDFSを売却、大金持ちになったが、買い取ったのがルイ・ヴィトン=ヘネシー連合。アイデアは沖縄にあった、というわけ。

 ルイ・ヴィトン商品は関税がかかっていないので県民が入店して買える唯一のブランドだと店長がいっていた。県産品もおいてあってそれも買えるが。

《A》 面白いね。ルイ・ヴィトンが関税がかかっていないというのは。

《B》 正確には「ルイヴィトンは輸入済、内貨になっているので航空券がなくても買える」。

 また、「外国人が買えない」のは誤解に基づくもので、DFSはその誤解をそのまま使っているだけ。現状で県内で外国人観光客が関税、内国消費税がついた物品を購入し、手続をすれば空港で関税、消費税が払い戻される。

 沖縄型特定免税店は日本国民を対象にしたものだから、外国人は買えない、というのは間違い。外国人が買えないようにしているのはDFSが料金体系を変えるなど面倒な作業をする必要が出てくるために過ぎない。

《A》 なるほど。外国人が利用できるように制度を変更しようというのは、勘違いか。

《B》 勘違いだ。

 DFSの効果はレンタカーをターゲットに、改めて県内にショッピング観光を再構築しようという動きになって現れている。これが大きい。

計量モデルで549万人 成長の法則から収容人員追加

《D》 五百四十万人について、琉球大学の大城ゼミのマクロ計量モデルが〇五年度は五百四十九万人を予想しているね。マクロ計量モデルというのはどんなものか。

《C》 GDPの予測などマクロ経済学ではいくつもの方程式を組み合わせて精密な経済予測が出きる。政府もこのようなマクロ経済モデルを使っているが、大城ゼミでは三十四本の方程式を組み込み、外生変数に@沖縄県人口A住宅着工数B卸売物価指数C国内総生産D外国為替レートE一般会計予算F銀行の貸出約定金利G観光客消費額H収容人員を使う。この中の収容人員は前年まで考慮していなかったが、今回から取り入れたそうだ。本紙レポート「沖縄観光成長の法則」の考えを取り入 れたと大城教授はいっている。

《B》 Aさんは大城先生のところで実践経済学という講義を担当したね。

《A》 「沖縄観光成長の法則」を二コマ使って解説している。内容は昨年来バラバラに本紙で記事にしたものを、統一的に記述して一本のレポートにしたのだが、それをおきなわ観光情報学会で講演した。それが好評だ。簡単に要約すると沖縄観光は海洋博に向けたホテルの充実で百八十万人までの受入体制が整い、海洋博とその後のキャンペーンで伸びた。そこで客室不足となったが、二次振計で三百万人を目指して受入を整備、それに応じてキャンペーンを展開して伸びた。三次振計でも同じ手法で伸び、いま新振計で六百五十万人を目指して順調に伸びている。この需要と供給のバランスを調整してきたのが、旅行社と航空会社であり、沖縄と市場の間を商品造成、価格設定でコントロールし、相互作用を起こさせた。最初リゾートを供給して国民にリゾートライフの楽しみ方を沖縄側から国民に作用して影響を与えた。次ぎに国民が世界中を旅行すると沖縄に新たなリゾートライフを要求し、作用した。これを繰り返した。つまり、沖縄観光は計画してその通りに伸びる力を持っている。決して水商売ではないということだ。この仕組みが作用し続ければ、失業がなくなる二〇一三年に観光客数は八百万人まで拡大でき、それ以上の伸びは労働力の移転や生産性の拡大で実現し、千万人到達は二〇一八年だと述べた。全文が本紙HP「沖縄観光ニュース」にPDFにしておいてある。大学や政府の研究機関などからかなりアクセスが多く、好評だ。毎週三百件前後、安定してダウンロードされている。

《D》 で、マクロ計量モデルの続きだが、政府機関や経済研究所は二百本以上の方程式を組み込んだ独自のモデルを持っていて、かなり精密に経済予測が出きるようになっている。琉球大学の計算では新年度の県内経済は一・六%程度の成長を見通しているが、〇六年は増税の影響が出て再び落ち込むと懸念している。構造改革や三位一体改革、増税の負の影響をよく表す、精度の高いモデルになっていると思う。観光がかなり伸びるのは意外な感じだが、もともと景気と観光はあまり関係がないわけだから、いい線行くのでは。〇四年度の予測も五百二十三万人となっており、今年一〜三月の結果によっては的中率が高く、かなりよい精度になっていると思う。

《A》 県もこのような経済予測を持っているのか。

《B》 観光客数に関しては、ない。会議で決めている。

《C》 観光にもっと科学を取り入れて欲しいね。

空港着工は織込済みか 13年には新滑走路必要だが

《D》 最後にマリオットかりゆしや昨年暮れにはイシン・グループが不二ホテルを購入するなど目立つが、長期的にはどう見ているのだろう。いよいよ那覇空港が限界に来るのではないか。

《A》 那覇空港の拡張は成長する観光産業にとって不可欠だが、最近、鳴りを潜めたままだ。那覇空港は拡張せざるを得なくなり、近く着工すると私は予想しているが、逆に着工しないという前提で何が起こるか考えてみる。

 那覇空港は現状のままでは観光客六百万人程度しか受け入れられないという計算があるが、実際にはこれを上回るのは間違いない。JALと旧運輸省が羽田空港でトライアルした結果、従来の発着限界十六万回は十八万回プラスαまで伸ばせるといっている。一方、朝日新聞の記事によると旧運輸省は二十二万回という試算を持っていた。

 那覇空港は自衛隊機の使用が年間二万回前後あるから十八〜二十万回の発着能力があると見て良いだろう。

 その場合、年間の観光客の最大受入能力は八百万人台と計算できる。

《C》 すると沖縄への観光客数は現在の五百万人から六割以上増やせ、これまで通りの伸びを継続すると一三年頃八百万人に達するという計算になる。それ以上の伸びを目指すなら、一三年には滑走路がもう一本できている必要がある。そのためには今ごろ着工していなければならないが、その気配がないことが問題なわけだ。

《A》 さて、もし着工がないと仮定しても、今後三百万人の上乗せは可能だ。そのためにはリゾートホテルなどの受入施設がまだまだ必要で一三年に向け新たに一万室以上必要になる。

 この一万室の充実に向け、どんどんリゾートホテルが建設されるべきで、空港拡張が一三年に間に合わないという最悪のシナリオを描いてもホテル進出の余地は十分ある。新しいホテルにはお客が集中することが分かっているから、いま、リゾートを着工するのは戦略として正解だ。

《B》 さらに、既存ホテルのシェアを喰うという戦略を持てば客室増は一万室程度が限界だと考える必要はなくなる。つまり、いま競争力のあるリゾートを建設すると長期にわたって利益を生みだす仕組みになる。

《C》 しかし、そのような客室が整うと既存ホテルはシェアを喰われ競争激化となり、ほっておくと体力がないところから脱落し始める。このことは壮大なムダである。せっかく整った設備を遊ばせたり、廃棄したりすることになるからだ。これを回避し、伸びる産業をどんどん伸ばす政策が求められる。それには総需要の拡大が必要で、そのためには空港の拡張が明快に必要となり、着工する…という結論になる。総需要は国内で千万人超、北京オリンピックで観光ビッグバンが起こる中国を想定するとその倍は見込める。

《A》 つまり、那覇空港の拡張はもはや既定路線であり、政府が着工すると発表する前、いまこそが最も投資効率が高い状態だと考えられる。那覇空港の拡張着工がアナウンスされると、続々とリゾート開発が着手されると思われるが、アナウンス前のいま、次の手を打つところが現実にあるが、その「読み」のあらましは、以上のようなものだと考える。

《D》 なるほど。石垣空港が先に着工するから、那覇も着工というのは政府としても大型公共工事に力を入れすぎと見られるのを避けたいかも知れない。

《A》 この他、沖縄型経営が全国から注目されているという話題もあるが、それは次回に回そう。観光リゾート局長がいっているが、楽しい沖縄をつくって、満足度を高めていくことを追求していくと、沖縄はもっと面白くなって、魅力を高め、結果として観光客が増え、サービスの質も上がってくるというサイクルになる。それを意識して計画的につくり出すことが重要だと思う。  


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