入域絶好調だが、稼働率は伸び悩む
観光週間特集 もっと大きな成長目指すべき

(「観光とけいざい」第683号05年08月01日。WEB公開05年09月13日)

沖縄観光速報社・記者座談会

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(1)10%増で稼働率前年並み 伸びる余地のある月が伸びている
(2)ウェディングが好調 DFSは売上46億円程度か
(3)沖縄らしさに人気 掘りさげたマーケティング必要


 沖縄観光は一〜六月までの観光客数が四・一%増の二百五十九万八千百人で折り返し、好調だ。一方で県発表の数値は増えているが、売上は上がらないという声もある。記者座談会で今年前半を詳しく振り返って、沖縄観光に何が起こっているか、大胆に突っ込んでみよう。

10%増で稼働率前年並み 伸びる余地のある月が伸びている

《A》 まず、現状。

《B》 好調というか、予定通りだろう。予定を上回る勢いなら好調とか絶好調といっても良いが。

《C》 数値の伸びをどう見るかだ。航空会社から沖縄路線を見ると明らかに絶好調。GWの実績や夏休みの予約状況は沖縄の一人勝ちといえる。逆に他の路線が伸びないので、航空会社全体としては不調。

 県内ホテルの客室稼働率を見ると、前年を上回ったのは六月だけ。一〜五月まで稼働率は前年割れだった。六月は観光客数の伸びが一〇%と大きく伸びて平均稼働率はかろうじて前年比プラスとなったが、他の月の観光客数は数%の伸びにとどまったため、稼働率は前年割れとなった。

《B》 なるほど。それで那覇市内ホテルから厳しいという声が聞かれるのか。ということはホテルがどんどん建設されており、お客が分散している。お客が新しいところに流れ込むと、既存ホテルの稼働率が下がる。既存ホテルの稼働率を下げないためには観光客数のもっと大きな伸びが必要だということになり、平均四%程度の伸びでは県内ホテルは景気がいいとはいえない。

《C》 その通りだ。既存ホテルの稼働率が前年を上回るためには、六月の例で見られるように一〇%くらいは観光客が増えなければならない。ただし、最ピークの八月は毎年一〇〇%近い稼働率をたたき出すから、観光客が伸びる余地は新しいホテルができた分だけとなり、それほど高い伸びは期待できない。他の季節は客室に相当余裕があるから伸びる余地があって伸びた。

《D》 そこまでの話は数字ばかりで、沖縄観光の好調の中身を全部説明していないと思う。実際にはIDB総会やDFS効果、マリオットやジ・アッタテラスなど高級ホテルの話題があり、誘客につながっているのでは。

《A》 確かに客室が増えたから単純にお客が増えたというわけには行かないだろう。九五年頃の観光不況は客室は大きく増えたのにお客がついてこなかった。ここ数年は客室の増加に応じてお客も増えているが、九五年といまではどこに違いがあるのだろう。

《B》 大きく変わったのは九五年頃からマスコミで沖縄の露出が当たり前になってきたことがある。政治的によく取り上げられた。それが最近では沖縄出身のタレントやミュージシャンが活躍して、沖縄がグッと身近になった。もともと沖縄の人は大学生や社会人も含めて日本中にいるが、沖縄出身というと面白がられるようになった。文化の違いが際だっているから、珍しいという見方はある。

《A》 マスコミで沖縄が身近になり、インターネットでも個別の情報が充実してくると、次はいってみようとなるのは自然な感情だというわけか。

《C》 NHKの大河ドラマの舞台に毎年お客が増えたり、韓流ブームでそれが実証されているね。全国ネットのTV番組をつくっているディレクターと久々に話をしたら、韓流ブームは完璧につくったもので、日本向け、中国向けにそれぞれ工夫しており、日本人を動かすのに成功した。マーケティング優先の番組になっていて、予定したとおりの場所に日本人観光客が来ているという。それを国家が資金を出して後押ししている。

 「沖縄でも同じことをするべきですよ」とディレクター氏はいうんだね。いまはフィルムオフィスというのは相手が来たら、ロケ地を紹介するという活動内容だが、番組をつくって相手に売るというところまで行くと面白い。

《A》 その番組見たよ。ということは外国人を日本に呼び込むビジットジャパンキャンペーンの答えも見えているね。それくらいマスコミの影響が大きく、しかも先進地は綿密なマーケティングに基づいて戦略的に番組をつくっているわけだ。

《C》 「ちゅらさん」には何か戦略があったわけじゃなかったが、沖縄をグッと身近にしてくれたね。

《D》 マスコミの露出以外には九五年当時は超円高で海外が人気があった。〇一年以降はテロで海外は恒常的に危険というムードができ、最近の中国、韓国での反日ムードの影響は大きい。スマトラ沖地震も短期的にこの方面の需要を冷やし、国内旅行にプラスに働いているだろう。

ウェディングが好調 DFSは売上46億円程度か

《A》 話を今年に戻そう。IDB総会、リゾートウェディング、DFS効果はどうか。

《C》 IDB総会は大成功で、課題は地元でそのノウハウを継承できているかだった。検証シンポジウムが開かれ、最大の課題として取り上げられたが、受入体制は十分にあることが証明された。しかし、広報はヘタだった。ま、会議の内容を詳しくフォローするのは難しいと思うが、何が行われ、話し合われているのか伝わらなかった。国内金融機関の参加やマスコミ取材も少なく、あまり盛り上がらなかった。会議が成功したというところだけがポイントで、それが最も重要だと思う。

《D》 リゾートウェディングは昨年チャペルを新設した万座ビーチの実績が年間千件以上で大成功。チャペル開設とほぼ同時に、第二チャペルを建てようという企画もあったが、タイミングを逃したというほど好調。

《B》 DFSは航空各社、旅行社各社は当然にパンフレットに掲載して、沖縄の魅力が増えたとアピールした。手数料が小さいという不満はあるが、パンフレットに載せないわけには行かない施設だ。で、どのくらいの集客になっているのかはよく分からない。

 ただし、売上を推定するヒントとして、輸入額が税関統計からおおざっぱに計算できる。それによると、昨年十二月に十七億円、今年一月から六月まで二十九億円、合計輸入額は四十六億円増えた。内容は「精油・香料・化粧品」「非金属鉱物製品」「旅行用具・ハンドバック」「衣類・付属品」「その他雑製品」となっている。輸入相手先が西欧、北米が中心で、DFSが輸入したブランド品であると見られる。これらの輸入品がDFSの店頭に並び、倉庫に搬入された。

 お客が店頭で購入すると、那覇空港ビルの引き渡し場所で商品が引き渡される。

《C》 これは輸入された額で、実際に店頭で売れた額ではないよね。

《B》 輸入原価、仕入額といって良い。実際の輸入はお客が購入したときになる。県内に商品を搬入する際に税関には申告し、売れるまで保税扱いになっている。

《A》 平均の販売額が輸入額の三倍として、三分の一が売れたとすると、半年で約五十億円の売上というわけだ。ブランド品の力は強いね。

《D》 十五年ほど前、全国でブランド品のニセモノが出回ったことがあって、ルイ・ヴィトンやシャネルの担当者が沖縄で記者懇談会を開いて実情を説明し、法律違反であり厳しく追及するとキャンペーンを張ったことがある。

 その時の担当者は「わたしたちはものを売っているんじゃなくて、文化を売っているんです」といっていたのが印象的だ。

《C》 実際に店頭で売っているのはモノであって文化を売っているんだというと意味が分からないという人はいるよね。しかし、文化を売るというブランドのコンセプトなら、高額でもお客は喜んで買うという身近な実例だ。県産品もブランド化というより、文化を売るといった方が開発しやすいかも知れないね。だから、必ずしも物産ではない、音楽や本、料理、建築物に広がっていく。実際に、韓流ブームで沖縄物産ブームが終わったという人がいる。物産からいま沖縄の建築様式が注目され始めたというんだ。沖縄ブームを子細に見ていくと旅行や物産、少し前の文学賞ラッシュ、最近の音楽やTVタレント、次の建築様式や材料とさまざまに移り変わっているわけだ。

《A》 その中で観光産業は細かい変動はあったが、常に注目されてきたと言える。海外ブランド品のメーカーが文化を売っているというのは面白いが、ホテルにもそれがいわれ始めている。七月に大がかりなリニューアルを完了した万座ビーチの菊池総支配人は「沖縄であることを掘りさげたリゾートが求められ、それが勝負になる」といっているね。

《B》 デザイナーなどコンセプトをつくる人は昔からそのような考え方だね。リージェント沖縄ができたときには、沖縄文化を掘りさげてデザインしたといっていた。それがいま強みになっているかも知れない。

《C》 建築がブームになるなら、ホテルもそれを取り入れると確かに最強の施設になるだろう。

《A》 実際に高級リゾートはどうか。マリオットは。

《B》 月間一万人、客室稼働率で五〇%前後を目標にしているが、七月の実績で客室稼働が四割前後と目標には届いていない。しかし、八月には目標を達成するだろうということだ。これから東京・大阪など大都市圏でTVCMを計画しており、知名度を高める計画だ。

《C》 リゾートホテルは稼働率四割で利益が出る設計をしなければならないと随分前に平良朝敬社長が本紙のインタビューで述べたことがある。超高級ホテルになっているから、四割でも利益は出ていると思うよ。

《B》 マリオットは民間最大級の投資であり、資金は都市銀行からも調達した。このくらいの規模になると沖縄公庫は別格だが、県内金融機関では対応できないということもあるようだ。いま、沖縄のホテルを運営したいという海外チェーンは多い。ただし、ホテルを建設するまでは行かない。世界の有力チェーンはラスベガスなどを除いて、随分前から建物を自前で建てることはやらなくなっている。地元有力資本が建てたホテルを運営するのが、最も効率がよい。上海で世界の有力ホテルがどんどんオープンしているが、地方政府が投資したり、農民組織が資金を出している。ホテルマネジメント会社は、建設にあたってコンセプトや規格、デザインに最大限ノウハウを提供し、品質を高め、運営している。

 沖縄では具体的に土地やホテルを買いたいという話は大きなもので十数件は確実にある。建設会社をグループ内に持ち、建物を建てる段階から仕事がとれるところは、自前で建設し、運営も行う。それ以外だと、すでにあるホテルを買い取ったり、運営契約を結ぶ方が効率的。投資したがっているのは米国、中国など海外の企業も含まれ、国内企業ももちろんある。

《A》 かりゆしグループは〇七年の東京のホテル開業ラッシュの次は沖縄にくるといっているね。

《B》 そこまでかりゆしグループには見えているなら、次にどう動くかが注目される。

沖縄らしさに人気 掘りさげたマーケティング必要

《A》 流通の変化はどうか。

《D》 インターネットはますます便利になってきている。例えば、アップルコンピュータはパソコン画面で四人が互いの顔を見ながらおしゃべりができる仕組みを標準装備している。これを使うと話をしながら、データも送信でき旅行の価格や行程の提示なども話しながらできる。ライブドアのスカイプというTV電話もほぼ同じ機能。まだ相手の顔が見える状態ではないが、話しながらデータの送受信ができる。しかも、インターネットだから通話料はタダだ。これと旅行業が結びつけば、店舗は不要になる。あるいは巨大なTV画面を都会の中心地において、応対する社員は土地の安い郊外で良いということになる。

《C》 中央ツーリストの二十四時間店舗が成功しているが、結構深夜の問い合わせがあるようだ。インターネットのTV電話が普及するとこのような形態が強みを発揮するね。無人化では不親切だから深夜でもTV電話で人が対応する仕組みだ。お客も旅行会社も相手のところにわざわざ出向く必要がなくなり、互いに手間が省ける。

《D》 インターネットといえば楽天トラベルの手数料アップの問題があったが。

《C》 旅行業の主導権を旅行会社がとるのか、ネット由来企業がとるのかの最初の目に見えるせめぎ合いと見る。旅行観光産業の流通形態がネットに移行するのは目に見えている。しかし、ネット上で誰が生き残るかがよく見えない。わたしは熾烈な競争を経て、結局は旅行会社が生き残ると見ている。というのも、すべての旅行商品の材料を持っているのが既存の旅行会社であり、これを最大限に活かすためにも旅行会社がネットを最大限に活用していかなければならないからだ。先ほどのTV電話で豊富な在庫の中から旅行商品を販売できるのは旅行会社だろう。

《B》 異論もある。旅行会社はネットのノウハウがなく、一方、ヤフーや楽天、ライブドアなどネット事業者はネット活用のノウハウと資金力がある。ネット業者が旅行業界を蚕食していき、勝ち残るのはネット事業者ではないか。

《C》 確かにネット事業者にはネットに特化したマーケティング力がある。しかし、旅行のノウハウは旅行会社に敵わないだろう。つまり、旅行会社のノウハウこそが最後に生き残るのであって、ネット業者がそのノウハウを買い取るということはあり得る。

《D》 いま、旅行業界の地殻変動はますますJTBが大きくなり、二番手、三番手を引き離しているという見方がある。かわって、JAL、ANA系の旅行会社のユニット商品を全国の中小旅行社が売っている。航空会社は子会社に最も有利に座席を提供するので、JTBを除く大手が航空会社系のユニットに押されているというんだ。結果として、一昔前のような大手旅行会社同士の熾烈な戦いが精彩を欠くようになり、全体として活気がなくなりつつある。

《C》 旅行会社は現実世界ではJTB一人勝ち状態。それに加え、航空会社系旅行社に追い上げられ、ネットでは宿泊予約系にお客をとられるという状態か。

《D》 だから旅行社こそ持てる資源を最大活用するためにネットに力を入れなければならない。もっとも、TV電話が普及したら、システム投資よりも、本来自社が持っている商品をネット上でどんどん販売すればよいので、旅行会社は有利になると思う。手持ちの商品を磨き上げればいい。これは本来の仕事だ。

《B》 旅行・航空会社にはネット事業者には負けられないという意気込みを感じるね。楽天トラベルの提携ホテルが激減したのにはこのような背景があるだろう。ホテルと旅行社は普段はイヌとネコのようなケンカもするが、互いに旅行観光産業を数十年かけて造り上げてきたという「戦友」の意識もある。そこにネット企業が入り込もうとすると、成果だけ横取りされるという意識が働くと思う。「井戸を掘ったのはわれわれである」という自負がある。しかし、ネットは本当に便利であり、お客がネットでの取引を望んでいるのだから、旅行商品はどうしてもネット取引が主流になっていく。この流れのど真ん中に陣取るには旅行会社も早くノウハウを確立しないといけない。TV電話が普及すると商品知識が豊富な旅行会社が圧倒的に有利、沖縄旅行なら、沖縄に拠点があって、どこに何があり、何が流行っているかを良く知っている地元密着の旅行社が圧倒的に有利になる。

《C》 話が随分先のところにいっているようだが、下半期の展望は。

《D》 気象条件が平年並み、九月までの台風の直撃が三、四個なら五百四十万人は行ける。それでも、競争相手は増えているから、余裕はない。毎月一〇%ずつ伸びて、やっと業界の隅々まで潤う状態。航空会社、有力観光施設などは非常に好調ということになる。

《D》 来年以降もどんどんホテルはできるから、既存ホテルの稼働率を落とさないためのキャンペーンは常に必要だ。

《C》 五百四十万人で好調と見られるのに、伸び方がまだ足りないというわけか。観光政策は年々難しくなってくるね。昔は露出を高めるキャンペーンを張れば良かったが、今後は手の込んだマーケティングや話題造り、TV番組造り、受け入れ側の品質の向上とやるべきことは増えている。

 その中でリゾートウェディングが大成功している。最近の大きなヒットだ。

《A》 日本全体の旅行需要が年間三億五千万人。この需要はほとんど変化していないが、団塊の世代がリタイヤして、年に数回旅行に出るようになると需要はさらに増える。沖縄観光はいま、五百四十万人くらいでシェアは二%に届かないほど少ない。長期的には五%のシェアをとれるから千八百万人くらいは行ける。この間、県内・国内労働力は豊富である。

 昨年六月の本紙三十周年記念特集「沖縄観光成長の法則」で示した通りの成長が継続しており、それに向けて走る作業は楽しいものになるだろう。変なものを出したらお客からそっぽを向かれるから、どんどん沖縄を掘りさげていくことだ。本来この作業は地元の人にとって、いや沖縄で本気で仕事をする人にとって、面白い仕事になるはずだ。  


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