《沖縄観光1,000万人の可能性》
リゾートタウン整備事業創設とその効果


(財)沖縄協会発行「季刊沖縄」第20号、2001年4月30日)

沖縄観光速報社・渡久地明



変化が顕在化してきた

 観光産業に異変が起こっている。これまで観光産業は入域観光客数ベースで伸びたり縮んだりを繰り返し、全体としては増加傾向を維持してきた。業界は成長のマイナス局面では力を合わせてキャンペーンを打ったり、成長が見込めるとなると大型リゾートが建設されるなど、これまで29年の間、柔軟な対応で臨み、市場を1972年の47万人から2000年の452万人まで10倍に拡大した。そして今年、2001年の観光客数の目標は3次振計の目標でもあった500万人である。前年に比べ10.6%の伸びを達成しようと意気込んでいる。

 反面、多くの業界人が指摘するように、沖縄観光にさまざまな変化が現れている。「観光客は増えているのに、売り上げが伸びない」というのが代表的な声だが、他にも「業界の横のつながりが薄くなり、パーティーに社長が出てこなくなった」「リーダーシップがない」「新しい開発計画が全くなくなった」「老舗ホテルが閉鎖したが、明日は我が身だ」「インターネットの普及で中抜きが起こっている」……と悲観的なのだ。

 バブル崩壊後の沖縄観光は一時的に観光客が低迷したが、ここ3年は明らかに好調だった。しかし、昨年4月に大きな変化が起こる。

 航空運賃が自由化され、航空各社はこぞってノーマル運賃を高めに設定する一方、全国一律1万円など大幅な割引運賃を設定して個人客にアピールした。これが旅行業界では航空会社の直売体制、旅行会社の中抜きと批判された。ところが実際には大幅な割引の恩恵を受ける利用客はごくわずかであり、むしろ、航空会社の利用客は微減し、収益は拡大するという結果になった。

 60%の座席稼働率を70%にするための運賃体系に過ぎなかったことが明らかになったわけだ。運賃そのものを下げても、航空機を3倍に増やし、売り上げは5倍にするといったダイナミックな政策も理論的にはあり得るが、空港の発着枠がないという根本的な制限があるため、航空会社は大量に旅客を運ぶという本来の仕事ができないのである。

 運賃改定の影響は全国の観光地に直ちに波及した。航空各社の実績はマイナスに転じ、それまで16カ月連続して月間の過去最高を記録していた沖縄の観光客数も4 、5 月には前年比マイナスに転じた。これに驚いた航空各社は6月には旅行社に卸していた運賃を一斉に下げる。しかし、沖縄は7月のサミット開催の準備などがあり、6月には旅行が手控えられ、7月は物理的にホテルがとれないという理由で観光客数は前年比2割以上の減少となった。さらに8月は4個の台風来襲が追い打ちをかけた。9月からは再び増加基調に転じたが、前半のマイナスをカバーするまでにはいたらなかった。

 国内で唯一、好調に見えた沖縄観光だが、水面下ではいくつもの異変が起こっていた。好調に見えたホテルの統廃合が始まっており、稼働率が年間7割を超えていた那覇東急ホテルが11月末付けで閉鎖することになった。それまでにも沖縄ハーバービューホテルの経営からJTBが手を引き、共同で運営に当たっていた全日空グループが引き継いだ。業界ではホテルの稼働率と経営状態は無関係なものというのが常識になった。ある大手ホテルは「客単価が下がっているので、稼働率100%にしないと利益が出ない。毎日オーバーブッキングしないかとヒヤヒヤです」とうち明ける。

 旅行客はホテルで食事をとらなくなり、空港からレンタカーを借りて乗り付け、チェックイン。そのままレンタカーでホテルの外のレストランに直行するようになった。この影響は特に那覇市内のホテルで大きく出ている。

 レンタカーは旅行客に行動の自由を提供し、台数は年々増加。夏のピーク時には1万台を超える車両を用意し、タクシーの3,500台をはるかに越えて旅行客に快適なサービスを提供している。

 全国の旅行業界にも典型的な変動が起こった。2001年早々、業界2位、3位の近畿日本ツーリストと日本旅行、JR西日本の旅行部門が統合するというニュースだ。この統合によって新会社は業界トップのJTBに売り上げ規模で肩を並べることになるが、沖縄の両社の支店を含めて全国の店舗の統廃合や大幅な人員削減が行われることは間違いない。

 旅行・観光産業は利益のでない産業に成り下がってしまったのか。観光客の消費が減り、航空会社、旅行社、ホテル、交通機関などがこぞってコストダウンやリストラを断行している。沖縄の場合、全国に比べると元気があるとはいえ先に述べたいくつかのマイナス要因も重なって業界全体に悲観的なムードが漂っている。

 長期低落傾向が予想されるなか、打開策ももちろん検討されている。昨年11月の那覇市長選と今年3月の浦添市長選で保守系候補が当選。稲嶺県政は懸案の那覇軍港の浦添地先移転を進展させる環境を整えた。そこで、軍港の移転を期にこの際ハブ港湾と同時にリゾートを整備しようという動きに勢いがついてきた。ぜひとも実現して欲しいが、その話は他の論者に譲る。

 また、エコツアーやウェルネスツアーの推進も最近有力視されており、実際に有力であると思うが、これらは本来のリゾート客の目的からすると、選択肢を増やすという意味で重要であり、話題性は高いとはいえ、全体の大きな需要からすると主流を占めるまでにはいたらないと思われるので、ここでは特に触れないが、一つのアイデアがあるので後に紹介しよう。

 それよりも、大局的な観点から観光産業の成長を阻むものがあるとすればそれをなくし、成長に必要な手段があれば、これを積極的に取り入れるべきである。

 2000年10月、3月まで沖縄県観光リゾート局長を務めて定年退職した大城栄禄氏を中心に沖縄観光振興研究会が結成され、11月に「ポスト3次振計での先導的観光基盤整備事業導入について(PDF)」と題する要望書を沖縄県や沖縄総合事務局などに提出した。私もこの研究会のメンバーであり、内容を一言でいうと国の政策として観光地の基盤整備を行う制度を設けて欲しい、というものだ。細かい法律上の制約は抜きにして大胆に補足すると、農業や工業にはそれぞれ農地整備、工業団地の造成など手厚い振興策があり、都市部では区画整理事業があるが、同様な制度を観光産業の振興のために新たに設けるべきだ、と述べている。

 背景には沖縄観光の長期低落が予想されることもある。しかし、それよりもいわゆる「沖縄方面」であるハワイ、グアム、バリ島、タイ、マレーシアなどとの熾烈な競争が今後予想され、このままではきたるアジアの大観光時代に沖縄の地位はますます低下すると見通して、大がかりなテコ入れが必要であると考えざるを得なかったのである。ハワイやグアムは別として、東南アジアのリゾートは政府の強力なテコ入れによって世界中からリゾート客を誘致しようと躍起になっている。これらの地域に沖縄が完敗するという、超悲観的なシナリオが見えてきているのである。

 沖縄が国内はもとより他の「沖縄方面」の旅行目的地に比べ、有利な条件を備えていることは確かである。安全性、快適性、海の美しさ、世界遺産の存在など東南アジアの多くのリゾートに比べて優位にある。しかし、価格や受け入れ能力という点ではどうか。価格ではすでにハワイやバリ島と並んでおり、受け入れ体制では超高級リゾートから低価格宿泊施設までそろった東南アジアにはかなわない。

 航空運賃のところで述べたが、空港に余裕がなければ旅客は増やしようがないのと同じで、沖縄側に受け入れ能力がなければ旅客は増えない。最近では観光客数を量と捉え、消費金額を質と捉えて「量より質を重視すべき」という議論も起こっているが、過去20年近く一貫して減少している観光客一人当たりの消費金額を上向かせるには、新規リゾートの建設など大がかりな投資が必要であり、この行為は本質的に量の拡大を前提にしなければならない。中小ホテルが閉館し、新たな高級ホテルが取って代わるというなら、観光客数の拡大をそれほど伴わずに消費金額は増えるかも知れないが、そうすれば消費者のニーズに応えられない高値の観光地ということになって、旅行客も面白くないし、取って代わられる方の中小ホテルはたまったものではない。

 そこで観光客数の増大は今後も観光産業の成長の指標であり続け、常に増大する方向で市場に働きかけ、沖縄県内の受け入れ態勢を整備して行かねばならない。

 そのために、リゾートホテル単体の建設はもちろん、リゾートホテルや関連施設の集合体としてのリゾートタウンを整備すべきであり、リゾートタウンでは高級リゾートから良質の低価格宿泊施設が整備され、地域住民の経営するレストランや土産品店などが進出しやすい環境をつくり出し、地域との交流も促進する。利用価値が少ないと見られている荒れ地をわざと選んで、快適な空間をつくり出すこともできる。これなら海岸沿いの高価な土地よりもはるかに安い費用で、土地を確保でき、価格競争力のあるリゾート施設が建設可能になる。それに必要な道路やその他インフラを整備できるよう制度を設けるべきである。

 これによって、従来はリゾート地や農地としても利用が困難だった荒れ地を良質なリゾートタウンに生まれ変わらせることができる。リゾートタウンとはまちづくりそのものであり、全体として公共性があるから国が基礎的な整備をすることも可能であると考えるのである(Fig.1)。


Fig.1

 このような制度を沖縄振興策として取り入れて欲しいと要望したが、実際には日本全国どこでも歓迎されるし、効果を上げるのではないかとみられる。昨年12月の観光政策審議会の答申「21世紀初頭における観光振興方策について」には、21世紀初頭に早急に検討・実現すべき具体的施策の方向として真っ先に@観光まちづくりの推進を挙げている。(以下、A観光分野でのITの積極的活用、B高齢者等が旅行しやすい環境づくり、C外国人観光客来訪促進のための戦略的取組み、D観光産業の高度化・多様化、E連続休暇の拡大、F普及促進と長期滞在型旅行の普及、G国民の意識喚起)

 この理念をリゾートタウン整備事業として、拡大・発展させることができると全国の観光地にとって朗報となる。地域の特性を最大限に引き出すための事業展開に繋がり、日本全体が豊かな色彩に彩られると期待できる。

沖縄の潜在能力

 沖縄観光は伸びたり、後退したりを繰り返しながら全体として増加傾向にあった。復帰後の入域観光客数を年別にセミロググラフにとると図のようになり、復帰後、海洋博終了までをオミットして最少2乗法で直線を引くと相当キレイにデータが乗ってくる(Fig.2)。


Fig.2

 このグラフそのものは「沖縄観光1,000万人ポリシー」と題したレポートのために作成したもので、2005年までに1,000万人を達成するために何が必要となるかを、数人の仲間と考えたときのものである。

 解説すると、従来通りの努力が観光産業に振り向けられれば2016年には観光客数は1,000万人に到達し、ポスト3次振計の10年後となる2011年には800万人となっていてもおかしくない。この成長がいつまで続くかは今後の努力にかかっている。

 実際に沖縄が手本とすべきであると常に引き合いに出されるハワイは、成長が止まったようにみえる。ハワイは、2000年には1,000万人を目指し、「観光客が1,000万人になっても、ハワイは沈まないから安心して下さい」と担当者はいっていたものだが、1988年の700万人で頭打ちとなった。その後、600万人台前半まで減少し、最近700万人前後まで回復しているが、観光産業全体の運営を誤ると、たとえ1,000万人を受け入れるポテンシャルがあるハワイでも、沖縄でも、途中で頭打ちになる可能性はある。その場合、格差是正をポスト3次振計では目標から下ろしたとはいえ、新たな目標の「自立に向けた持続的発展」と「世界に開かれた交流・協力拠点の形成」の達成もおぼつかなくなる(この目標の達成度をどう測るのか不明だが…)。

 観光客数については少なくとも次の10年で頭打ちを迎えないような施策が必要だが、最初のハードルはホテル不足である。現在の沖縄のホテルの受け入れ能力は約625万人である。月間最大の観光客数52万人(99年実績)を単純に12カ月繰り返すとしたら、625万人になるからだが、これはあまり現実的な数字ではない。実際にはこの数字の8掛け、約500万人でホテルの容量がパンク状態となる。もし今年500万人を達成したら、次の年からホテルが増えない限り、これ以上の成長は望めない。幸い、今年はカヌチャの200室増室などがあり、那覇市内にはビジネスマン向けのセルフオートマチックホテルなどが複数できて室数は東急ホテルの閉鎖を差し引いてもわずかに増える。来年以降、ラグナガーデンの増室、かりゆしグループや北谷にホテル建設の計画がある。また、世界の主要空港で免税店を経営しているDFSが沖縄に進出したいという計画があり、近々、態度を決めるという。しかし、それ以降、沖縄本島だけで400室規模のホテルが毎年2〜3軒はできていないと、観光客にとって窮屈な観光地となるのは明らかである。

 次のボトルネックは那覇空港の容量である。那覇空港の容量は年間発着回数13万回が限度だが(那覇空港に限らず成田など1本の滑走路の限界でもある)、1998年にすでに約11万回の発着があり、これには自衛隊のタッチアンドゴーが含まれない。県は2005年には発着回数は12万7,000回に達し、航空会社がリクエストする時間帯が大変込み合い、航空機の定時運航にかかわるサービスレベルが低下すると予測。2010年には処理能力が限界に達するとしている。航空会社の要望に応えられなくなる2005年には沖縄観光は危機を迎えるが、航空会社が機材の大型化などで対応し、深夜便などをフルに活用すれば2010年までは何とかなるという状態だ。しかし、明らかに2010年には空港の受け入れ能力が限界でこれ以上の成長は望めなくなる。では、観光客をセーブしてはどうかという考えもありそうだが、これはやはり平行滑走路を整備して、国民に自由な通行・旅行を保証すべきである。

 第三に800万人とか1,000万人といった大量の観光客によって、地域の文化や環境が変質するのではないかという危惧が出てくると思う。しかし、1,000万人という数字をもっと精密に見ると、実際には密度は低い。現状で観光客は概ね2泊3日のパターンであり、多く見積もって3泊4日で計算すると、1,000万人の観光客といっても、1日当たりに換算するとわずか11万人である。この数字を多いと見るか少ないと見るかだが、県民130万人に対して11万人とは10%以下であり、それほど多いとはいえない。多くの観光客が恩納村や那覇市など特定のホテルの集積地に偏在すると見ると、地域住民に与える影響はもっと少ないと見て良い。

 駐留米軍の軍人軍属が4万7,000人の規模であり、いまの計算の逆をやると、外国人観光客500万人に匹敵する。数字は大きくなるが、沖縄の文化・環境全体に米国人が与える影響もそれほど大きくはないことが経験的に理解されよう。もし強い影響があるなら、県民の英語能力は全国平均以上とならなければならないが、そうでもない。世界の軍事情勢に詳しく、ケンカに明け暮れて格闘技が盛んかというと、これもまた違う。

 ただし、基地周辺への影響が極めて大きいのは事実である。沖縄全体に与える影響が小さいというのは基地近傍には大きな影響があるが、近傍をはずれると影響は急激に小さくなるという意味である。観光客の影響もこれと同じで恩納村にホテルが多いからといって、恩納村の村民全体が文化的・思想的・県民性のようなものに影響を受けるかというとそうはならないと見る。逆に、沖縄の場合、観光客に沖縄病をうつすという実例の方が多く報告されているから、相手の影響を受けるのではなく、相手を変質させる県民性の方に強力なパワーがあると見て良い。

ではマーケットはあるのか

 沖縄観光には1,000万人のポテンシャルがあり、2016年にはこれまで同様の努力をそそぎ込めば年間観光客数1,000万人は達成可能であると述べた。そのための制限があればこれを取り除かなければならない。最大のボトルネックは滑走路の容量不足であり、那覇空港の平行滑走路の整備が最も急がれる。

 また、成長のためにできることはリゾートタウン整備事業などに代表されるインフラ整備であり、大胆に公共事業をつぎ込むべきである。これによって民間投資が誘発される。「滑走路を建設する」と政府が発表したとたんに、どっとリゾートホテルの計画が出てくるものと見られる。沖縄の観光振興を国が約束したと受け止められ、国際的なアナウンス効果は大きい。

 このように受け入れ態勢を充実して、では果たして観光客そのものはいるのか、という疑問が湧く。しかし、心配は無用である。いま、日本人は年間3億5,000万人が旅行に出かけている。1億3,000万人の人口で3億5,000万人が旅行に出かけるというのは計算が合わないようだが、日本人は年間3回は1泊以上の旅行に出かけている、のが実態である。このうち約1,800万人が海外旅行に出かけ、国内旅行に3億3,000万人が出かけるというわけだ。

 すると沖縄の現在の観光客数500万人というのは全体のシェアのわずか1.4%しかとっていないのであって、北海道と並ぶ国内2大観光地という割には貧弱な現状である。堂々たる数字というには10%のシェアはとらなければならないが、それだと3,500万人になり、ちょっと大きすぎるかも知れない。シェア3% 1,000万人というのは現実的に無理ではないと思われる。日本全体の観光産業に与える影響もわずかである。

 そこで長期的にはこの10〜15年の間に1,000万人を目指し、1,000万人後については次の世代に検討してもらえばよい。1,000万人達成が近づくにつれ、それまで不明だったさまざまな影響が評価できるようになり、それを次の目標の参考にすればよい。ちなみに、500万人までは環境や文化面、あるいは県民性への影響などは全くと言っていいほど研究されたことがない。ほとんどは経済波及効果についての影響調査であり、経済的な調査といっても、例えば観光収入のうち歩留まりがどこまであるのかといった精密な計算はなく、まだ完成しているわけではない。今後の精密な調査が待たれる。

観光によるまちづくり

 最後に、面白いアイデアを提供したい。かねて私は沖縄観光の魅力の一つに沖縄県民そのもののキャラクターがあると考えていた。これを測る数字はないが、沖縄病という言葉が通用するようになっているから、面白い奴に会いに行こうというニーズが少なからずあると思う。そこで100万県民が年間一人友達を呼べば観光客100万人がすぐ達成できる。沖縄観光のこのような側面はこれまで測定不能だからあまり論じられたことはない。

 しかし、先日沖縄ツーリストの東良和副社長が私のインタビューに答えて次のように明快な解決策を示している。

「500万人までは既存の旅行システムがよく作動する。しかし、それ以上になると既成概念を根本的に変えないと上乗せは難しいと見る。

 これまでの旅行会社のパッケージや航空会社の発地主義は考え直さなければならない。受け地主義という考えを提唱したい」。

──どういうことか。

「長期滞在キップが発行できると思う。4泊以上する旅客の航空券を一律に半額にする。

 これによってエコツーリズム、ウェルネスの市場を吸収できる。ダイビングも同じで、目的型の長期滞在旅行を吸収できる。

 いま、ダイビング業界では東京から2人、岡山から1人というように予約が入るが、ダイビングショップはこの航空券をとるのに時間を費やして本来の企画の仕事ができない。手を尽くして航空券がとれないということもある。長期滞在割引ができれば、ダイビング客はどこからでも半額のキップが取れ、ショップがキップの手配にきりきりまいということがなくなる。

 同じことが流通に乗っていない民宿や公共の宿泊施設の経営者を巻き込んで、旅行のプレイヤーとして参加できるようになる。『オレのところで4泊以上したら、キップは半額だよ』というセールスができる」。

──面白い!民宿といわず、個人の家でも4泊以上すればいいということにすれば、130万人県民が一人ずつ友達を呼ぶだけで100万人の集客力というわけだ。これやろうよ。

「航空会社も夕方着いて、午前中帰る便が使える。お客の方も2泊3日でホテルまで3時間かかるといったら不合理だと思うかも知れないが、長期滞在なら時間のかかるところでも平気で出かけるだろう」。

──これまで空港から時間がかかりすぎるという理由で何もできなかった原野などが利用できるようになるかもしれない。

「旅行社は純粋なランドパッケージをつくる。それにはエコツアーやウェルネスがあり、もっと地域の中に入っていく体験メニューなどが盛り込める。キップは単品でそれこそインターネットで日本全国どこからでも半額で買える。これが受け地主義の新しい旅行形態になる」。

 ハワイの旅行商品がどれも4泊以上となっていることを旅行好きの読者なら知っているであろう。実は4泊以上がツアー造成の条件になっているからである。最近は3泊のハワイもあるようだが、ハワイの強さの裏にはこのような仕掛もあったというわけだ。  


 このレポートの発表後、文中で紹介した沖縄観光振興研究会の大城栄禄会長が琉球新報論壇に次の論説を投稿、掲載されていますので参考のため全文転載します。

リゾート都市としての基盤整備が必要

(大城栄禄・沖縄観光振興研究会会長)

 新振計では選択と集中がキーワードとなり、観光産業の一層の拡大とIT産業の育成が大きな柱となっている。観光産業は次の10年で現在の500万人体制から800万人体制への成長も見込める有力な分野である。しかし懸案もあり、思い切った政策がどうしても必要だ。その問題点と解決策を示したい。

 問題点とは目先の収益の低落傾向とは裏腹に長期的には客室不足が明らかとなってきたことである。これを解決すれば3億5,000万人の国内観光マーケットで、沖縄が800万人〜1,000万人を占めることは十分可能で、現在の売り上げの減少を補ってあまりある成果が得られる。

 沖縄観光の受入能力は現状の客室では最大で625万人、季節変動を考慮すると500万人である。すなわち、今後数年で客室不足が現実のものとなり、観光客数は伸びなくなる。これでは沖縄は旅行客にとって窮屈な観光地となり、沖縄観光の大きな牽引役である航空会社にとっては成長の望めない観光地となり、既存観光業界もアウトである。

 そこで客室の拡大が焦眉の急になるが、用地不足などいくつかの制限があってマーケットの拡大を主導するようなタイムリーな増室が困難になっている。解決には土地区画整理事業に似た観光基盤整備事業といったものが必要になってきた。イメージとしては農業分野の農地改良事業、工業分野の工業団地の造成、都市部では土地区画整理事業などの基盤整備が行われているが、観光分野でも同様の事業が出来るようにすべきである。

 有力なリゾートが見込める地域であっても、農地にはホテルは建設できないし、私有地が入り組んでいると道路の整備すら困難だ。すでに恩納村では返還軍用地の観光開発がストップしたり、後継者がなく畑をリゾート用地として提供したいのに出来ない、という声も出始めている。この解決にはリゾート空間としての環境を豊かにし、都市機能を整備した上で、投資を呼び込み、客室を増やす仕組みがいる。そうでないとマーケットはあるのに沖縄観光は成長できないという情けない事態に陥る。

 もちろん観光地は客室だけで成り立つものではない。国際標準の高級ホテルに加えて低価格の個性ある宿泊施設が中核となり、これらをとりまいて観光施設があり、地域住民が観光産業のプレーヤーとして参加するレストランやショップなどが生まれ、全体が集積することによってエコツアーや健康、文化、地域との交流をテーマにした観光が成り立つようになる。これはまちづくり、都市づくりである。これからのリゾート地に必要な都市機能を整備するのである。

 県は@観光振興地域制度・対象施設への宿泊施設追加A観光関連施設の集積促進事業B沖縄型特定免税店制度の空港外展開・消費税免除規定、を新法の観光関連分野で強く求めると報道されているが、「集積促進事業」の中にぜひ上記の機能を盛り込み、国も風格のある国際的なリゾート年の形成を通じて沖縄観光の一層の拡大を先導すべきである。(「琉球新報」2001年6月)


《関連1》<要望>ポスト3次振計での先導的観光基盤整備事業導入について(沖縄観光振興研究会会長大城栄禄、2000年11月24日)(PDF、69KB)

《関連2》新知事に望む「2005年ビジター1000万人」ポリシー(PDF、120KB)HTML

《関連3》需要創造に取り組む 沖縄ツーリスト副社長 東 良和

《関連4》リゾートタウン整備事業 沖縄観光振興研究会会長 大城 栄禄

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