緊急レポート 「2010年観光危機」旅客増えず、客室は激増

(「観光とけいざい」第718号(07年3月1日)。WEB公開07年07月21日)

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那覇空港はいますぐ着工すべきだ

 本紙は観光客一千万人を目指すべきだと十年前から述べてきた。また、一千万人到達の時期は空港問題が解決されることを前提に、一八年頃だと予測してきた。ところが、空港問題の解決の見通しが現在のところない。仲井眞知事は十五年の滑走路増設を公約にしているが、それでは間に合わない。本論は那覇空港の平行滑走路を早期に完成させるべきであると改めて述べるものだが、完成が遅れた場合どのようなことが起こるか、過去の例を参考に詳述する。(本紙編集長・渡久地明)

目前に来た那覇空港の09年限界

■新滑走路間に合わず、危機の恐れ

 今年度の観光客数の目標値は五百九十万人である。県は昨年の五百六十四万人に比べ、四・六%増を計画している。二月八日に開かれた県と観光事業者らの意見交換会では、目標に対して特に異論は出なかったので、業界もこの数値に違和感はないと見られる。

 今年は昨年休止していたクルーズ船が復活するので外国人客の六万人増が予定されており、それを除いた国内客の伸びは三・五%増と前年並みの平凡な成長を見込めばよいので、筆者も達成可能だと見ている。

 問題はその後、だ。〇七年度五百九十万人をクリアしたら、〇八年度は六百二十万人程度が射程に入り、その次の〇九年には六百五十万人の線が見える。この六百五十万人は那覇空港が限界に達するとされている数値である。県は那覇空港の限界は六百四十万人だが、宮古・石垣、クルーズ船で十万人を上乗せするとしていた。

 目標値が検討されたのは沖縄県の第四次観光基本計画を定める観光審議会(尚弘子委員長)である。米国同時テロが起こって業界に悲観的なムードが広がっていた〇一年度後半であり、〇二年から始まる沖縄振興計画がスタートする前年度だった。観光審議会当初の事務局案では、那覇空港の受け入れ限界は六百万人であるから、六百万人を計画すべきと政府委員が主張。大学教授なども使って六百万人へ誘導した。

 しかし、あまりにも低い目標にJAL沖縄支店長は「沖縄の計画らしく777万人」、ANA沖縄支店長は「沖縄が必要ならば千万人でも計画すべき」など、航空会社を中心に現場を熟知した民間委員の多くが強く反発、七百万人以上を提唱した(現状は七百万人ペースで進行中。本紙は八百万人を主張した)。最終的には県当局(前局長から代わったばかりの宜名真盛男観光リゾート局長=現観光商工部長)が六百五十万人を打ち出し、六百万人と七百万人の間をとって委員会をまとめた格好になった(本紙第606、611号参照)。

650万人はホントに限界か

■訓練分散で770万人可能では

 最大の問題は、那覇空港は本当に六百五十万人で限界になるのかという点だ。現状でも立て込む時期には那覇空港上空で航空機が待たされるということが頻繁に起きており、限界に近いと見られている。県、内閣府沖縄総合事務局、国交省大阪航空局で組織する那覇空港調査連絡調整会議は那覇空港の一日の発着限界は自衛隊・海上保安庁のこれまでの平均八十四回を含めて三百八十回としている。

 調整会議の試算では沖縄観光の年間二%台前半の伸びを想定した場合、ピークの夏場に限ると一〇年には一日あたり発着回数が三百七十五回となり、限界に到達するとしている。しかし、この限界はピーク月の八月に限ったものであり、それ以外の月はまだまだ伸ばす余地がある。また、自衛隊や海上保安庁がピーク時の訓練をオフ時に分散すれば、観光客数をさらに伸ばす余裕がいくらか出てくる。

 さらに、限界とされる一時間あたりの発着回数三十三回をさらに詰めて、あと数回増やすことは、現状でもときどき見られることから、これを恒常化することは「絶対無理」ではない。

 また、現状ではスカイマーク一社で健闘している深夜便のさらなる便数の拡大で、ピーク時の観光客数はさらに増やせる。夜間便の利用が増えると空港周辺のホテル需要が拡大しよう。

 つまり、那覇空港は一時間あたり発着回数には、自衛隊の訓練分散や嘉手納空港への訓練移転、発着間隔を詰めることでまだ拡大余地がある。また、一日当たりでは深夜便の拡大の余裕がある。年間ベースでは八月以外の観光客数の拡大でさらに余裕がある。八月の一日当たり発着回数を発着間隔の詰め、自衛隊の訓練分散、夜間便の増便で、一日四百回への拡大は可能ではないか。さらに機材の大型化で那覇空港に到着する観光客数は三割以上拡大可能だ。

 それに加え〇九年の那覇港クルーズ船バースの供用、一三年の石垣空港供用で宮古・石垣・久米島直行便、クルーズ船で月間十万人の上乗せは可能ではないか。

 すると最ピークの八月は現状の約五十七万人が、七十万人以上まで拡大可能となる。これを勘案して〇七年以降これまで通りの伸びを維持するとするとし、一三年の沖縄県観光客数のパターンを示すと図1のようになる。年間観光客数は七百七十万人程度となる。

 一四年以降は滑走路の拡張がなければ、これ以上の伸びは難しい状態になる。これ以降の拡大は自衛隊の全面的な那覇空港から嘉手納その他への移転が必要となる。

 一方、県は年間観光客数の限界を六百五十万人としており、これが本当なら〇九年には沖縄観光は頭打ちとなる。

 観光客六百五十万人の到達が過去三十年間のトレンドにしたがって〇九年になると想定すると、一〇年以降、那覇空港の沖合い平行滑走路が供用となるまで観光客の伸びはわずかなものとなる。ここでは年間一%増を想定した。それをグラフに描いたのが図2である。

大きな需給ギャップ発生か

■沖合い滑走路、13年には欲しい

 空港容量いっぱいで席が取れない状態が続くと、航空運賃は割引がなくなり、値上げも予想される。すると、夏場の沖縄よりアジアのリゾート地の割安感が高まり、沖縄への観光客数は減る可能性が高まる。特に為替相場で一ドル百円程度のドル安・円高局面となると沖縄は敬遠される。これは九三〜九五年まで三年間継続したバブル後の沖縄観光危機の再来となる。

 バブル時に計画されたリゾートホテルが続々開業時期を迎え、一方で超円高が進行した。日本人の海外旅行ブームが起こり、過去最大の年間千八百万人が海外に出かけ、沖縄観光は伸び悩んだ。

 需要不足と供給増で県内ホテルの稼働率は大きく低下し、価格を下げて需要を喚起しようとしたが、とうとう民間だけでは持ちこたえられなくなり、県・政府が特別対策を展開し、需要を拡大して乗り切った。

 図2は観光客数の横這いの期間を一〇〜一二年として描いてある。本来はこのような横這いがあってはならないが、十年の滑走路供用はもはや手遅れで、不可能に近いと思うのでそうした。

 横這いが三年以上続くと持ちこたえられない企業が続出する恐れがあることから、最悪でも三年後には新滑走路を供用して回復に転じなければならない。その場合、十三年から毎年年率一一%増とすることで、十六年の約千万人が達成される。観光客数が六百五十万人で限界になるとする県の想定が本当なら、那覇空港はどうしても一三年には供用されていなければならない。

キャンペーンが無効になる

■10年以降、空港制限で旅客増えず

 一方、県内では一〇年頃に向けて県内各地で新規の大型リゾートが続々計画されている(図3)。

 大型の埋立地の造成が一段落し、豊見城市の豊崎に三プロジェクトで一千室規模のリゾートが開業、糸満市西崎にも五百室前後の大型リゾートが開業を目指している。北谷町の埋立地に四百五十室、宜野湾市にも五百室規模の大型計画が進んでいる。さらに、西海岸では瀬底島の建設が進行しており、かりゆしエグゼスは三月二日に起工式を行い、インブビーチ再開発のウェスティンホテルが三月二十八日に起工式を予定している。ザ・テラスの拡張も計画があり、この他の計画も目白押しである。これらリゾートは〇七〜一〇年に続々開業が予定されている。

 つまり、一〇年まで客室が勢いよく増加し、那覇空港もまだ余裕があるので観光客数は順調に伸びるが、それ以降、観光客数が増えず、客室は格段に増えた状態が出現する。一一年までに建設が予定されているホテル客室数の合計は六千室を超える。年間八割稼働と見込むと観光客数に換算して百五十万人を上乗せする。雇用もそれに応じて発生し、失業率が改善に向かい、県民所得は増加傾向に転じる。しかし、それもつかの間、空港ができないため供給過剰で賃金は上がらず、いったん、雇用は増えたのに再び供給過剰状態が出現することになる。

 十一年以降の計画も目白押しの状態で、空港が着工されるとさらに計画は増える。嘉手納以南の軍用地が一四年に全面返還されると、リゾート建設適地がドーンと放出されるから、一千万人の受け入れに問題はないと考えられる。

 問題は一一年以降である。大量に増えた供給に対し、需要が増やせないのだ。航空会社はフル稼働している状態だから割引期間を減らしたり、運賃を上げたりするだろう。それに対し、県内ホテルは客室がだぶついているので値下げ競争となる恐れがある。これが三年続くと、立ち行かないところが出てくる。一一年は踏ん張っても一二年、一三年をのりきれないというところが出てくる。那覇空港が本当に六百五十万人で頭打ちになるなら、一一年から那覇空港供用まで数年間、沖縄観光の危機が継続することになる。

 同じ危機は沖縄観光はこれまで少なくとも三度経験してきた(図2および図4の@、B、Cの期間)。最初は七六年の海洋博後の落ち込み、二度目は前述した九三年頃から三年間にわたる期間で、沖縄観光は危機的状況となった。三度目は米国同時テロである。

 三度とも県内観光業界、旅行・航空会社など民間が大幅に料金を下げて需要喚起策をとり、政府、県が財政出動も含めた支援を行って乗り切った。県内の五十代中盤以降の業界人は三度ともこれら危機を鮮明に記憶していることと思う。

 これらの危機で沖縄観光がそのまま沈んでしまえば、危機を乗り切るための支援策予算よりもはるかに大きな社会的損失が発生し、その回復には莫大な費用がかかることになる。巨大な損失を回避するために政府も支援を惜しまなかったのだ。

 しかし、一一年観光危機は需要を拡大させるこれまでの回復策が働かない。滑走路が限界になっているなら、これ以上観光客は増やせないからだ。

夜間の観光施設必要

■危機回避のために

 まっとうな解決策としては、那覇空港の滑走路を一一年までに完成させることだ。そのためには、いま着工すべきだ。

 それ以外の解決策としては、観光消費を増やす、滞在日数を増やしてホテル稼働率が落ち込まないようにするといったことが考えられる。

 観光消費を増やすためには、これまで取り組みが少なかった夜間のエンターテイメントの充実などが考えられる。海洋博記念公園、首里城などは夜間の営業を検討すべきだろう。すでに玉泉洞や琉球村などは夜間営業を夏休みなど実施しているが、それの通年化が必要になると思われる。

 夜間の利用は深夜便の需要を増やす。また、県内客の観光行動にも影響を及ぼし、混雑道路の解消につながる可能性がある。夏の週末の国道五十八号の混み方はすでに数年前から尋常ではない状態になっている。三十年前の開業時にあれほどすいていた沖縄自動車道も最近は渋滞することがあるので驚く。

 さらに消費金額を増やすためのエンターテイメントの導入はカジノ論議とあわせて活発化すべきだろう。滑走路が間に合わなかった損失を取り戻すためにできることは何でもやらなければならない。さもなければ、せっかく縮小に転じる失業率は再び悪化し、県民所得は縮小、県内経済全体を後退させるという大規模な沖縄経済危機が発生する。

 一日当たり消費金額を増やすには、県内企業の努力だけでは困難な可能性がある。デフレは継続しており、旅行する人が出発時点でサイフのヒモを引き締めており、これを緩めるには景気回復が必要であると思われる。沖縄を訪れたことがない国民は六割を占め、行かない理由の最大のものは「家計の都合」である。家計を底上げすることで沖縄の需要が強まり、価格も上がると予想される。

 また、滞在日数を増やすには休暇制度の変更が必要になるかも知れない。学校の夏休みの時期を西と東でズラすという手もある。

 それに比べて発着間隔を詰めたり、自衛隊の訓練を移転して、那覇空港の民間利用を増やせ、という一見面倒な要求は、特に財政出動の必要もなく、すぐに実行に移せるものだ。那覇空港を七百万人を超える限界まで徹底して使えという意味はこれに尽きる。その上でもちろん、那覇空港の沖展は急務である。いますぐ着工すべきだ。

ホテル稼働率10年に最低

■開業ラッシュで供給増 650万人では立ち行かない

 沖縄振興計画の観光部門で一一年に六百五十万人としている目標を想定して今後のホテル定員稼働率を推計すると、一〇年にはテロがあった〇一年を下回り、需要不足が発生するとことが分かった。NPO法人沖縄観光連盟(山入端好盛理事長)が報告書にまとめた。

 報告では現在公表されている一二年までのホテル建設計画を元に毎年の収容力の増加と観光客数から、全県平均の定員稼働率を割り出した(図5)。それによると、〇七年の一日当たり宿泊施設収容人員八万二千六百二十八人は、一一年には九万九千七百十一人に拡大。一方、〇七年の観光客数五百九十万人は一一年に六百五十万人に達する。この間、稼働率は毎年前年割れし、一一年に五六・三%となる。特に一〇年の稼働率は五五・二%とテロがあった〇一年の五六・四%を下回る。稼働率の前年割れが続く一〇年までに、県内中小ホテルの中には立ち行かなくなるところも出てくると警告している。

 逆に、観光客が目標以上に増加すれば、県内ホテルの稼働率は前年並みを維持できる。そのためには一一年の観光客数は七百十万人まで拡大する必要があるとした(図6)。

 山入端理事長は「これからの誘客活動は他力本願ではなく自ら@どの時期にAどこからBどんな客層をCどのくらいの人数をDどんな素材(商品)で誘致するかが肝要だ」と述べている。

(この部分、「観光とけいざい」第725号(07年7月1日付)。図6は紙面に掲載しなかったが、WEB収録に当たって追加した。図3の通りホテル客室が増えた場合の観光客数と県内ホテル稼働率を定量的に試算した。この試算の後もどんどんホテル構想が取り沙汰されており、ホテル稼働率は一〇年にはもっと低下する=低下させないためには七百数十万人の観光客が必要と予想される。渡久地明)


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