連載コラム視点602
渡久地明(沖縄観光速報社)


平和ボケか戦闘ボケか

 《「中立逸脱」と冊子回収 JETROアジア経済研》…十一月十二日の朝日新聞ホームページにこんな記事が出ている。

 内容は、アジア経済研究所がアジア十九カ国の新聞論調などからアジアがテロをどう見ているかを紹介するレポートを出したが、配布前に上層部の判断で回収、表に出なかった。WEB上でも掲載されたが、削除された、というものだ。

 実はこの情報は十月のうちにWEB上で流れており、削除される前に読んでおけ、と発信されていた。私もそのレポートのPDFを持っている。

 詳しく読んでもどうやら沖縄県民は戦闘ボケしているのか、問題はないように思うのだが、平和ボケの多くの日本国民には刺激が強すぎると言うことらしい。

 大胆に内容を説明すると、韓国と台湾を除いて湾岸までのアジア各国の新聞はテロは断固反対だが、アメリカにも攻撃される遠因があったのではないか、と見ているところが多い、ということである。

 つまり、このレポートは読みようによってはアメリカに追従する日本はイスラム諸国から反感を買うぞ、といっているようにもとれる。実際その通りで、地球の半分くらいの地域に対して日本はかなりやばいことになっていると私も思う。

 タリバンのスポークスマンも「日本は原爆を落とされたのに、何でアメリカの言うことを聞くのか」と言っているし、ビンラーディンもアメリカの残虐性を説明するために原爆投下を引き合いに出している。

 これがアジアの常識なのだ。ところが、日本の常識はどうやら「原爆を落とされたから、アメリカの言うことを聞く」という理屈になっている。これはアジアでも沖縄でも通用しない。

 今回のテロで沖縄の安全を確かめる電話がホテルなどに入った。が「安全です」との沖縄側の反応を聞いて「平和ボケしている」といった学校の先生がある。沖縄の安全性については地元のホテルに問い合わせるというのも変な話で、やはり、テロリストか米大統領に聞くべきだろう。文部科学省は米軍基地のある地域への修学旅行は注意するようにという文書を日本中に配ったが、文部科学省に何かが分かる訳がない。注意をしろとは即行くな、という意味と学校側に解釈されるだけである。

 一方、沖縄県民は戦争慣れはしているが、平和ボケではない。テロでアメリカ人五千人が死に、アフガニスタンでは無差別な空襲で民間人六百人が死んだ。沖縄は二千隻の軍艦に島が取り囲まれ、無差別な艦砲射撃、地上戦で二十万人が死んだ。このうち民間人は八万人以上である。

 アジアの常識からすれば当然、沖縄人はアメリカに復讐しなければならない。このような問いと六十年間向き合ってきた沖縄では、日本全体とは違う結論が出るのが自然である。テロ直後に米軍の核攻撃もあり得る、と私は述べたが、これも戦争ボケだからである。

 しかし、冷静に考えると沖縄の海兵隊が動いていないのは日本海に軍事的空白を作らぬためという軍事戦略もありえる。つまり、ホントに危ないのは原発が集中している日本海沿岸であり、そこへの攻撃を沖縄基地が守っている。もちろんこれも戦闘ボケの妄言であるが。しかし、沖縄基地の価値が 高まって来ているのは間違いない。(明)(「観光とけいざい」01年11月15日)  


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