連載コラム視点609
渡久地明(沖縄観光速報社)


鈴木宗男が県知事だったら

 鈴木宗男という人は相当に嫌われ者となっているが、疑惑の中身については鈴木宗男という個人とは区別して検証する必要があるのではないかと思っている。ワイドショウで面白おかしく伝えられる情報とは別にいくつかをまじめに考えたい。

 毎日、変な話が暴露されるので追いつくのが大変だが、例えば、北方領土のビザ無し交流で元住民が桜の木を植樹しようと持ち込んだら、検疫が必要だといわれ、同行した外務官僚は領土であるから検疫の必要はないと譲らず、植樹そのものをやめてしまったケース。鈴木宗男はこれに腹を立ててその官僚を殴ったりけったという。しかし、領土だから検疫や必要な証明書がいらないと言った官僚はホントは検疫が必要なのを知らなかったのではないか。領土だから検疫がいらないと言うのは、 相当に無理がある。

 復帰前の沖縄も日本の領土のようであったが、植物や甲子園の土など自由に持ち込めなかったことはみんな知っている。こういう基本的なことを知らない役人を殴ってしまった(本人は事実無根と反論)のにすぎない。

 第二に地元の建築業者が基準に足りない評価でもともと受注できない工事なのに基準を下げて受注させたたことも問題になっている。しかし、よく考えたら地元に工事を優先発注すべきと言うのは沖縄の建設会社もみんなそういっている。これは絶対にできないというのがこれまでの常識だったが、なんだ基準はいかようにも変えられるではないか。同じことをやれば県内建設業界は躍進できるだろう。

 第三に軍用地料も鈴木宗男が防衛庁にねじ込んで抑制の予定が、高い伸びになったという。単純にいい人ではないだろうか。地主側はお礼に献金をしたのだが、そのやり方に不手際があって問題になっている。しかし、地主の多くは鈴木宗男の働きで相当に得をしたことは間違いない。

 こう見ると鈴木宗男のような存在は、もし沖縄側が本気で活用したなら実にいろいろな利があった可能性が高い。

 一方、逆の効果もあった。九四年頃、沖縄観光は不振で、運輸省観光部が沖縄のためにできることはないかと省内に号令をかけたことがあった。その時出てきたアイデアの一つが、県内の三つの海域で免許無しでも水上バイクが運転できるようにしたことだ。官報で告示されたが、鈴木宗男は運輸省に電話を入れ、折角の制度を没にした。

 問題は九五年以来、沖縄側が制度として一国二制度を求めて受け入れられなかったのに対し、鈴木宗男は恫喝によって特例の山を各省庁に築いたと言うことだ。一国二制度は日本にとって重大な特例であると思う。制度として困難でも、結果として鈴木宗男ならできたとするなら、この人が沖縄県知事でも良かった、と言うことができる。

 コトの本質は官僚対政治家の権力構造であり、地域(日本全体)を活かすには官僚をねじ伏せる手法は今後どうしても必要だ。それが手っ取り早い恫喝によるのかそれとも時間がかかる別の方法をとるのかだ。本当はこれまでの政治体制や官僚制度とは全く別の体制が必要なのであり、それが改革であるという点に尽きる。(明)(「観光とけいざい」第609号02年3月15日付け)  


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