連載コラム視点610
渡久地明(沖縄観光速報社)


総合産業には総合行政が必要だ

 観光産業は総合産業である。ところが観光に関する政策が商工労働部にあってこの面に特化しているので様々な不都合が生じている。業界や行政の内部でも観光行政のあり方を考え直すべきだという声は少なからずある。

 沖縄県には企画開発、文化環境、福祉保険、土木建築部、農林水産部、商工労働部などがあって、それぞれが観光に関連する仕事を持っている。

 いま人気のウェルネスなどは明らかに福祉保険部がカバーすべき観光分野であると思う。さらに転地療法、タラソテラピーなどを取り入れようとしたら、もっと出番は増える。

 エコツアーは文化環境部や農林水産部に向いているかも知れない。すでにブルーツーリズムやグリーンツーリズムといったプログラムを持っている。

 リゾートタウンや海岸沿いの道路のセットバックなどは土木建設部になる。

 現在の観光リゾート局は商工労働部の一部なので観光振興のためのイベント開催や誘客活動、マーケティング、キャンペーンが中心となり、これはもちろん必要な観光行政である。

 ところが沖縄が国際的な観光地と比較され始めたら、キャンペーンだけでは間に合わない面が出てきた。旅客が少ないうちはそれで良かったが、産業として成長してくるともっと本格的な観光開発が必要になってきたのだ。

 観光客数が減って観光産業が不振になると、沖縄全体の景気を左右するようになった。もはや、観光産業の停滞や後戻りは許されなくなったのである。常に成長していなければ、沖縄全体の景気に響く。

 このような影響力を持つようになった観光産業だが、一方で沖縄観光はこれからだというプロの指摘もあとを絶たない。

 リゾートホテルは点在しており集積の相乗効果がまだまだ生まれていないといわれ続けている。その間に東南アジアの各国が政府主導で次々にリゾート地を建設し始めたため、これらインフラの整った先進的なリゾート地と沖縄が比較されるようになってきた。

 沖縄の文化や歴史などを無視してリゾート空間の快適性やコストだけを比較すると確かに東南アジアの方が有利である。

 問題を整理しよう。沖縄観光はキャンペーンなどは航空会社や旅行社の力を借りて先進的ものになってきた。しかし、リゾート地としての地域の整備はまだまだだというわけだ。

 沖縄観光のためにはホントに必要な開発がこれから行われなければならない。すでに空港の沖合展開が決まらないので、ホテル着工を見合わせている、というところが出てきた。二月、三月の県内ホテルの稼働率を見れば分かるように客室不足は深刻である。しかし、投資する側には客室不足だから着工する考えと、空港が出来ないうちに着工しても沖縄全体で客の奪い合いになるだけ、と醒めた目で見るむきもある。

 空港の問題は観光リゾート局ではあまり話題にならなかったが、実際には業界全体に大きな影響を既に与えている。

 観光産業が総合産業であることを再認識したら、観光行政もまた総合的に取り組まれる必要がある。(明) (「観光とけいざい」第610号02年4月1日付け)  


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