連載コラム視点611
渡久地明(沖縄観光速報社)


苦肉の650万人、責任は

 次の十年の沖縄県の観光客の目標値が、観光審議会で一旦七百万人とすることに決めたのに、苦肉の数字六百五十万人で最終答申された。

 この数字の意味は、次の十年で那覇空港の沖合展開が完成しない、ことを世界中に発信したということに尽きる。

 いまの体制が続けば、飛行機をできるだけジャンボに代えて満席にしても受入能力は六百八十万人である(日航の試算)。

 では、空港はできないのか。

 実は空港ができないことを前提にして事務当局は最初六百万人という数字を作ってあった。しかし、審議会で七百万人としたのは本紙報道の通り、空港を作れという意味である。それには二○○三年からの八次空整に取り入れられなければならないが、例の経済政策音痴の小泉首相が公共工事の削減をぶちあげたので、当然着工すべき空港がどうなるか分からなくなってきた。このどうなるか分からなくするということそのものがホントは新たな利権の発生なのだが。

 しかし、八次空整に那覇空港を入れる、という担保をどうやら県は取ったらしく、それにしても二〇〇三年から調査設計に一年、二〇〇四年に着工しても七、八年がかりの工事で、目標年次の二○一一年の完成は間に合わないので七百万人を六百五十万人まで値下げして、最終答申にしたという。

 これは次の十年で八百万人のポテンシャルがある(渡久地明試算)沖縄観光をインフラができないため、制限したのと同じであり、明かな失政である。二〇一一年頃八百万人を迎え入れるには七次空整かその途中で那覇の沖合展開を取り入れるべきであった。それをやらなかったことのつけが回ってきたのである。

 事務当局(この場合、県より国であるが)はその失敗を隠すために、沖縄観光そのものが十年経っても六百万人程度にしかならないということをあの手この手を使って、将来予想のグラフに至っては「統計でウソをつく法」(ダレル・ハフ、講談社ブルーバックス)に出ているような錯覚を使い、強力に主張したのである。このようなウソに国民はだまされてはいけない。六百五十万人程度にしかホントに成長できなかったとしたら、責任も追及すべきである。

 さて、では業界はどうするか。私は業界は六百五十万人という誰かの都合や失敗で作られた目標などほとんど相手にしないだろうと思う。

 一方、観光基本計画にはたくさんの「メニュー」が盛り込まれているが、いずれもウェルネスとかエコとか福祉行政だったり、農林水産行政に属するものの比重が高い。つまり、本筋の観光を取り逃がしている。ゆえに、業界はこれまで同様だれの指示も受けず、補助も受けず、自ら信じる道を歩く以外にない。振り返ってみると、そのことが業界を鍛えてきたと言える。

 数年後、空港の滑走路不足は深刻な問題となるであろう。その時でさえ、自衛隊の使用頻度を削減するという方法で、民間需要を二割方吸収して七百万人台は可能だ。自衛隊の内部にも下地島での訓練移転というオプションはある。自衛隊を動かすことが、いよいよ日程に上ってきたのだ。(明)(「観光とけいざい」第611号02年4月15日付け)  


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