連載コラム視点617
渡久地明(沖縄観光速報社)


自然の保護の仕方に問題がある

 自然環境の保全と開発はいつも対立しているわけではなく、時には開発によって自然を豊かにする、という考え方も成り立つ。

 観光開発の場合、日本では風光明媚な景勝地に何かの施設をつくってきたが、逆に何も役に立ちそうにない原野を開発して観光地にした例が身近にある。沼地だったワイキキは周辺を埋めて運河を造り、ビーチを造成した。砂漠の真ん中にカジノホテルをいくつもつくって世界最大規模の観光地になったのがラスベガスである。オレンジ畑しかなかった田舎にディズニーワールドが出来て人口数十万人の都市が出来たのもつい最近のことだっ た。

 沖縄に目を転じると、使い道のない原野のようなところはあまりなく、どこをとっても豊かな自然に恵まれており、これほど有望な観光の適地はないということになっている。逆に、どこも自然が豊かだから、開発しようとすると地元の反対運動などが起こる。

 しかし、国頭村の金剛石林山では非常に珍しいことが起こっている。地域の強い要望で、人があるく道やチケット売場など最小限の建物を建て、開業したところ大変人気もあり、過疎化が進む国頭村で五十人の雇用が予定された。さらに内容を充実して百人規模の雇用が生まれる見込みだった。

 ところが、この施設に沖縄県から待ったがかかり、現状を回復するよう命令がでたのである。施設側は入口や駐車場を移動することとした。これに対して地元は住民決起大会を開いて県に抗議し、命令の期限などを猶予するよう求めている。この地元の動きに対し施設側は全く関与していないが、地元の行動に大変感動しているのは確かである。

 観光開発をずーっと見てきたが、開発に対して反対の住民大会は聞いたことはあるが、施設側の行為に対して沖縄県が改善を求め、それに対して地域住民が決起したという話しは滅多にないことだった。

 決議文は結構緩やかな調子になっているが、地元の怒りは大変である。

 「国頭村は自然保護で制約を受けている」「ヤンバルには六つの大きなダムがあり、そのために国はどれだけ自然を破壊したことか。魚道がないから、魚がいなくなった川もある。ダムの恩恵は中南部の県民だけで、地元には破壊された自然だけが残った」「保護された森林も、保護地区だけを残してまわりの木を全部切って畑にしようではないか。いままでは保護林のまわりも保護しており、その原野は何も生み出してこなかった」「自然を保護する場合であっても地元の権利が優先される」「米軍のヘリパッド建設など地元は体を張って阻止してきた。今回の県のやり方はいやがらせでしかない。徹底的に追及する」。

 国頭村の辺戸岬には金剛石林山と同じカルストの自然石があり、保護区になっているようだが、誰も管理していないため、石を切り取って自宅の庭に飾るという乱暴なことが行われている。金剛石林山は企業としてこのような自然破壊を二十年以上に渡って防いできたという役割も地元では大変評価されている。

 地元をこれほど怒らせる行政に正義はないと見た。(明) (「観光とけいざい」第617号02年8月1日号)  


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