連載コラム視点629
渡久地明(沖縄観光速報社)


北朝鮮はミサイルを撃てない

 北朝鮮のミサイルが沖縄を狙っているという記事が二月十三日発売の週刊新潮に載り、軍事的にはナンセンスであることがすぐ分かるのだが、本社にも二カ所から誌面のコピーがFAXで送信されてきた。

 「心配だ」という。年寄りが本気で心配しているので「北朝鮮がミサイルを飛ばそうにも燃料がない。飛んでも空中分解したり、命中精度も全然あてにならないから、全く心配無用である」と述べた。

 一方、JTB短観でも戦争が近づくと旅行需要の落ち込みが予想されており、航空会社の中にも予約状況が弱含みであるとする事実がある。

 北朝鮮に関しては、本紙読者なら昨年九月の神浦講演で、北朝鮮にミサイルを撃つ能力がないということを知っていると思う。北朝鮮のミサイル技術について神浦氏は次のように分析している。

 「簡単にいうとノドンはスッカドCを数基束ねて一段ロケットとし、その上に大き目のスカッド を載せて二段目にした二段式のロケット(ミサイル)です。射程は千三百キロ、弾頭重量は約一トンといわれています。その一トンの弾頭部分にさらに三段目のロケットを積み込んだのがテポドンです。ですからテポドンは人工衛星打ち上げロケットという説もウソではありません。ただし、打ち上げに成功しなかっただけです。…人工衛星の技術水準では、(北朝鮮は)日本から四十年以上は遅れ ています」

 これを知っていれば、「CIA長官、米本土到達可能ミサイル「北朝鮮保有」上院公聴会で証言」(朝日、二月十三日、夕刊)という記事は「北朝鮮は核実験もしていない。長射程ミサイル発射実験もしていない。それなのに、アメリカがわざわざ北朝鮮の核武装認定をしてやってどうするのだ。北朝鮮にそんな能力などないことはアメリカがよく知っていることなのである。しかし大ボラであっても、彼(CIAテネット長官)は公式の場所で証言した。その理由はなぜか。それは北朝鮮の核 開発問題に中国を誘い出したいからだ」(神浦氏)という分析になる。

 そしてもし北朝鮮が先に手を出したら、瞬時に反撃され、国そのものがなくなる。それはできない。

 だから全く心配は要らない。念のため(沖縄を北朝鮮ミサイルが狙うかどうか)、神浦氏に私が直接聞いたら「大丈夫、そんなことはありません。とにかく今は、北朝鮮ものなら何でも言いたい放題、書きたい放題の状態です。北朝鮮が東京にミサイルを射ち込むというのが古くなったので、沖縄を出したのだと思います」という返事である。

 軍事的には明快だが、われわれは米同時テロで軍事とは無関係に風説・風評が広まることを経験した。

 一方、経済的には北朝鮮のGDPが二兆円、日本は五百兆円、沖縄は三兆円である。一人当たりGDPは北朝鮮は日本の五十分の一、沖縄の二十五分の一である。この面からも北朝鮮が日本との戦争を維持する能力は全くないと結論できる。日本は北朝鮮の脅威を宣伝しすぎである。北朝鮮に関して言いたい放題、書きたい放題という状況になっているから、当然変な記事も出てくる。

 いまから軍事を勉強するのは大変ではあるが、当たり前に考えれば、風評の類はその場で吹き消すことができる。むしろ、脅威を煽る意見はそれによって何か得をしているのだ、と疑ったほうがよい。(明) (「観光とけいざい」第629号03年2月15日号)

 


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