連載コラム視点633
渡久地明(沖縄観光速報社)


科学技術立県を宣言しよう

 大学院大学の建設予定地が恩納村に決まった。観光業界では大学院大学がどのような影響があるのか図りかねているが、基本的にはどんな学校ができても、地域にとってはプラスになる。

 大学院とは大学四年までの教育を受けた後、さらに高度な内容の研究を行うための機関で、修士課程二年、博士課程三年がある。

 戦後しばらくの間、大学院がある大学は旧帝大など一部に限られたが、その後、全国の国立大学が大学院を設置できるようになり、最近では県内の私立大学にも大学院がある。

 普通、大学四年生で卒業研究に取り組み、卒業するが、大学院に進む場合、同じ大学の大学院に進んでさらに研究を深めるという人が多い。大学院という特別な建物があるわけではなく、卒業研究の四年生を助手にして、他の大学生や教官と一緒に研究を続けることが多いようだ。

 もちろん、他の大学の大学院に進むこともできる。

 沖縄の大学院大学は大学四年間の教育は行わず、修士以上の研究を中心に行う大学ということになる。研究が中心であるが、特別講義もあり、講義その他は英語で行われる。

 沖縄大学院大学はノーベル賞級の学長や教授陣をそろえて世界最高の自然科学系の研究を行うという構想である。教授陣・学生・一般の職員で数百人規模になる。仮に五百人と想定しておこう。

 大学施設は研究所が建ち並び、教授の邸宅としてかなり広い、たぶんプール付きといった高級なものができるだろう。

 学生寮も景観を損なわないようにするという配慮があることから、地形に合わせて低層の建物が予想される。

 大学にいる五百人はほとんどが県外から集まるだろうから、沖縄にとってはまさにビジターであり、ビジターズ産業、つまり観光産業にとってプラスになる。新たな五百人のビジターは二泊三日滞在する観光客に換算すると六万人前後になる。さらに五百人が平均して年間十人の県外客(同業の研究者や家族)を誘致すると想定すると、五千人が上乗せになる。

 このような効果があることは分かるが、もっと重要なことはこれまでほとんど科学技術とは無縁だった沖縄にこのような施設ができることの意味である。

 この大学院に進学できる県内の大学生は、はじめはあまりいないだろう。しかし、何年か経つと徐々に沖縄の学生も入っていけるようになる。もともと学力とはあまり先験的なものではない。一つの研究を十年も続けると誰でもそれなりの成果を出せるようになる。トップクォークを見つけてノーベル賞がうわさされるフェルミ研究所の葉恭平博士は沖縄大学院大学のアドバイザーにもなっている が、四歳とか六歳の頃から数学にのめり込んで、そのまま研究者になった。天才でもあり、裏にはこのような努力というか背景があった。これを意識的にやったらどうだろう。

 プロ野球の沖縄キャンプが始まったら十年、二十年後には県内の小中高校生の野球が全国トップクラスに躍りだしたのと同じ効果が出てくるはずだ。

 これにならって、この際、沖縄県は科学技術立県を宣言して、小学校から科学技術教育を強化し、未来の人材を世界中に供給してはどうだろう。間違いなく国際社会に大きく貢献することになる。沖縄はその時、持続的な発展の方策を得る。(明)(「観光とけいざい」第633号03年4月15日号)

 


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