連載コラム視点636
渡久地明(沖縄観光速報社)


ポチのままでも政策転換できる

 「(経済)改革の障壁となるものは無数にある。高齢化した労働者(依然として二、三〇%は終身雇用をエンジョイしている)、保護されている産業、いろんな産業を守って現状を維持することに慣れてしまっている官僚たちなど。それ以上に日本人は急進的な変化を好まず…、緊急性への認識の欠如と、確立された慣習を変更することを嫌う国民性により、政治的にも心理的にも痛みを伴うリストラ策は、たとえそれが必要なものであっても受け入れることは難しい」。

 これは小泉首相や竹中大臣の発言ではない。「米国と日本・成熟したパートナーシップに向けて」(〇〇年十月、アーミテージ・レポートと呼ばれるもの)の中の一節である。レポートの中心課題は安全保障だが、経済や沖縄問題(前回紹介済)にも踏み込んだ記述がある。経済に関する部分について、もう少し引用しよう。

 「日本における経済の自律的な再生は、市場を開放するために手を打つことと、民間部門がグローバル化に対応できるようにすることが鍵」「それでも回復に対する障害は残っている。とくに金融問題はいまだ適切に認識されておらず、財政刺激策も長期的な成長を促す可能性はあるにせよ、利益誘導型の公共事業に偏っているのが現状だ」「短期的には財政と金融による刺激策を継続する。日本の赤字は拡大するものの、将来的な成長につながるような分野には思い切って注力すべきである。利用者がいない橋やトンネルや新幹線を作るような時代は終わらせねばならない」「企業会計や商慣習、ルール作りにおける透明性が必要である。日本の経済統計の質は改善すべきであり…」

 これらの指摘はそれぞれ適切であると思われる。小泉内閣も同じような考えで改革に着手したはずだった。ところが、アメリカ側の指示に対してやり方が間違ったのである。

 「利益誘導型の公共工事をやめろ」という指示に対し、公共工事全般を平均的に縮小してしまった。

 「通る人がいない橋やトンネルをつくるのはやめろ」というのに対し、那覇空港の滑走路新設も検討ばかりでホントに必要なときに間に合わない。

 「痛みを伴うリストラは保護されている産業や官僚たち」に向けられるはずであったが、国民の大半、特に低所得者層(中流と思いこんでいる多くの国民を含む)に重いしわ寄せを行った。

 消費が冷え込んでいる日本でこの層こそが最も景気底上げに貢献しているのだ。入ってきた収入を右から左に消費しなければならないのがこの層であり、収入が足りなくて借金をするほどである。この層の消費が日本を支えているのだ。そこに失業手当のカットや年金の減額、医療費の負担増、消費税増税(予定)などをぶつけた政治はもはや政治ではない。それを支持する国民が多いとは、これこそ全国民的自虐的モラルハザードと認定せざるを得ない。小泉首相は安全保障問題で充分にアメリカのいう通りにした。そのため(イヌの)ポチと呼ばれている。

 経済問題はアメリカのいうことをきいているように見えるが、アメリカは「将来の成長につながる分野には思い切って投資しろ」といっているし、その投資で短期的には赤字が拡大することも予想している。いまの緊縮財政を超積極財政に転換してもポチとしての身分はアメリカから保証される。小泉純一郎はポチでもいいから早く政策転換すべきだ。アメリカからの独立は景気を回復させた後に回す他ない。(明)(「観光とけいざい」第636号03年6月15日)

 


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