連載コラム視点638
渡久地明(沖縄観光速報社)


入店お断りのとんでもない店

  長い階段を上って、行き着いた店のドアに本日休業とあると、腹が立つ。そんなお知らせは階段を登る前に貼っておけよ、といいたい。何で店のドアなんだろうと思う。

 ある人が東京からのゲストを海洋博記念公園に連れていったところ、木曜日で「休園日」だった、という。海洋博公園まで後何キロの表示がたくさんあるから、那覇市内を出る前に本日休園日を案内すべきであった。もっとも、海洋博公園は水族館オープン後、年中無休になったのでこのようなことはなくなった。

 東海岸をドライブしてもっとビックリしたことがある。普段滅多に通らない道であり、あるガラス工房が評判というガイドブックの記事を頼りに行くと、小さな看板があり、矢印が出ている。

 県道をそれてずいぶん奧に行くと、坂の上にそれらしい建物があり、坂の入口に「上に駐車スペースは三台(体の不自由な方専用のみ)下に止めるか、この先五〇m展望台(左側)に止めて下さい」とある。

 で、車を展望台に止め、歩いて登ると工房と店舗がある。店舗に入ろうとしたらドアに「当店は喫茶店です。見学施設ではありません。喫茶以外のご入店は店内狭いため(見学のみorトイレ貸し)一切お断りしております」とある。

 もともと冷たいものも欲しかったので、ビールを注文したが、だんだん腹が立ってきた。観光ガイドブックで自分の店を紹介して、道の途中に看板を立てておきながら、こんな張り紙を出す精神はどういうことだろう。ついでに、トイレも水圧が弱いので、「使用後五分は水が流れません」というような張り紙である。腹が立ち出すとどんどんあらが目立ち始める。

 デパートに出しているというガラス製品はそれほど評価に値するようなものではなく、創造性のかけらもない。

 喫茶店といっても店内は狭くて窮屈。他の人が頼んだジュースは缶ジュースをグラスに入れ替えて氷を入れただけ。地元のフルーツを使ったフレッシュなものではない。

 泥棒よけなのかイヌを飼っているが、お客にほえる。

 とんでもない店である。

 展望台の駐車場に戻ると、県内客らしい夫婦がいたので「すばらしい景色ですね」と話しかけた。すると、もともとはここに集落があり、子供の頃まで住んでいたのだという。周辺に自分の土地があり、何かできないかと毎週のように通っているという。

 「あのガラス工房は本土の人の経営ですか」

 「そのようです。デパートに商品を出したり、インターネットで注文を受けているそうです」

 「入口に見学だけの人はお断りと書いてありますよ。変ですね」

 「店ができたころ私たちも一度行って、千円くらいのものを買いましたよ。でも二度目に言ったときその張り紙に気づいて二度と行きません」

 「やっぱり。地元の人の発想じゃないですよね」

 「ここには七十年前には小学校があって、わたしが子供の頃は目の前をくじらが泳いでいました。水田もあり、交易船が通っていたので、水や薪を補給していました。三十年ほど前から過疎でみんな移り住んで誰もいなくなりました…」

 ということである。道がきれいになると人はかえっていなくなり、あらたに顰蹙があらわれた。(明)(「観光とけいざい」第638号03年7月15日)

 


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