連載コラム視点すぺしゃる641
渡久地明(沖縄観光速報社)


受け入れ態勢練り直し求められる沖縄観光

■旅行内容、消費・行動パターンが顕著に変化

 昨年(〇二年)の観光収入がテロの年を大きく下回ったという沖縄県の統計は不思議とあまり話題に上らないが、極めて重大な問題提起である。(本紙・渡久地明)

■予想された業界の収益構造の変容

 筆者は統計の取り方の変更があったため、統計数値に連続性がないのではないか(実態はそこまで大幅に減っていないのではないか)、との疑問を呈したが、その後、多くの業界マンの実感を聞いたところ、「ホントに売上が減っている」「売上は増えている」という声に分かれ、割合は八対二くらいで売上が減っていると応える人の方が多いのである。もちろん業種によるばらつきは大きい。この 夏に限るとどこも好調のようである。

 テロで売上が激減し、その翌年、人数ベースでは大きく前年を上回ったが、売上はテロの年より減ったということについてはさまざまな解釈があった。@割引航空運賃の多様化Aテロ後の集客のためのパック旅行の単価の下落B沖縄を知り尽くした(インターネットでの情報収集も含む)リピーターの増加で、無駄な支出を省いた(同じ「モノ」なら安い店舗に集中する)Cレンタカー利用者の大幅な拡大で交通費、食費、娯楽費が減少した、などである。

 これらの変化はテロ前からの傾向であり、その変化は予想されたものでもあった。筆者は九六年の「総合産業への変容が求められる五百万人時代の沖縄観光」(公庫レポート)というレポートの中で、消費金額は減少し続ける、業界とは別のスーパーや食堂にお客の流れが変わり、収益構造が変化すると予想し、その通りになったわけである。

 観光客は県内で消費してはいるが、支出先が従来の観光コースから離れていっているのである。

 しかし、この状態を放置していれば、観光業界の本流であり、井戸を掘った人達の労苦が報われないという事態になる。新規参入業者は後発の利点がある。先発企業の足りないところを充分に補強・改良して人気を集めることができる。最近では旅行社を通さない集客で九割の稼働を目指すと記者会見で述べる新設の那覇市内ホテルもあり、ホントに呆れる。観光収入が増えない中での新規ホテル は既存ホテルの売上を奪っているのであり、新規に参入させてもらうという姿勢が必要だ。

 現実にはあらゆる業種でこのような変化が起こっており、観光客の行動パターンは県内隅々に行き渡り、従来の観光地以外での消費が増えている。結果として従来の観光地での消費は減少する。

 この変化を大局的に見れば、沖縄旅行そのものへの需要は大変大きなものがあり、観光客数は毎年四%台の勢いで拡大している。これは好不況の影響は関係がない。これまで三十年の観光客数の推移がそれを物語る。しかし、消費金額の方は不況の影響を強く受け激減していると見ることが出来る。

 観光客数なのか観光収入なのか、いわゆる量か質かの議論は、消費額が減少することが分かっているときには観光客数を大幅に増やしてカバーしなければならなかったのである。

■地元産品志向がますます顕著に

 もう一度、最新の情報を基に業種別の変化を見てみよう。

 観光客は六割以上がリピーターであり、沖縄のことは県民あるいは旅行社のカウンターより詳しいという人が増えた。情報はインターネットで入手し、ホテルなどもネットで予約するケースが激増していると見るべきである。一度行ったことのある沖縄本島よりも、まだいったことがない離島に行ってみたい。一度行った観光施設に行くより新しくできた水族館に行きたい。ホテルは那覇市内なら新設のところがよい。または格安の駅前ホテル、ドミトリーでもよい。

 日本人の休暇の取り方も、八月の夏休みから混雑しない七月、九月に分散した。シーズンを外せば混雑も少なく、旅行費用も安い。安い時期に休暇がとりやすくなった。

 買い物はコンビニ・スーパーで済ませ、食べるところも地元客に人気がある食堂が好き。朝食は前の晩に買ったコンビニのサンドイッチ。ホテルでの夕食はせいぜい三人に一人、または三泊のうち一回だけ。

 航空会社は団体から個人へ、個人はインターネットでのチケット販売へ舵を取っている。割引運賃は二、三年前からすでに定着し、あまり割引制度を使わないといわれた県内客も割引設定日に動くほどになった。この結果、一部で旅客は増えたが、単価が下落し、総収入も前年割れという事例が見られるほどである。しかし基本的に運賃設定の通りに搭乗客をコントロールしやすい体制が整いつつある。

 旅行会社もインターネット販売に力を入れている。沖縄商品は平均単価が下がっており、格安の航空券と格安のホテルを組み合わせるとパック旅行より個人で手配する旅行の方が安くなってきた。高額商品の開発も行っているが、高級人気リゾートを最大限確保し、できるだけ多くの客室の販売権を握ることが勝敗を分ける。個人ではとれないが、○○旅行社の商品なら手頃なものがある、という売り方である。

 ホテルは明暗を分けている。総じて那覇市内の既存ホテルが厳しいという。従来、西海岸のリゾートホテルが夏場の主流で、那覇と組み合わせて旅行商品がつくられたが、最近はリゾートに直行、那覇を素通りして帰るパターンとなった。西海岸リゾートも夏場以外の集客に苦労した時期もあったが、最近では通年リゾートホテルに人気が集まっている。

 加えて、新設の駅前ホテル、スーパーホテル、ウィークリーマンション、ドミトリーと形態が異なり、本来競争相手ではないはずの宿泊施設との競争が拡大している。人気を盛り返した民宿が特にこの夏、好調である。お客はいるが消費単価が減少して、利益がとれない状態なのだという(グラフ参照。四月の落ち込みはイラク戦争とSARSの影響と見られる)。

 しかし、那覇市内でも大規模・高級なシティーホテルは絶好調のところと普通に好調、苦戦までさまざまである。いま、既存の最有力ホテルを上回る大規模シティーリゾートを計画すればヒットする可能性が高いと思われる。

 これに対して、ホテル組合は医療と組み合わせた健康保養型の長期滞在観光に注目する。医療関係者による健康状態の管理と、地元の食材を使った長寿料理の提供は、レストランやしっかりした地元の調理師を雇っている本来のホテルにしかできないサービスであり、この方向に正解があると見ている。

 県内交通はバス・タクシーが苦戦している。県内のバス会社は有力四社のうち三社が経営破綻。貸切バスの利用料も下がっている。稼働率も下がっていると見られる。観光タクシーもテロ後の回復はまだ、という。一方でレンタカーは好調である。台数が増加、一台当たり売上は減少しているが、最初からレンタカーが組み込まれたタイプの旅行商品が売れている。

 観光施設も明暗を分けている。水族館効果でやんばるまでレンタカーを使って足を伸ばす観光客が増えて、沿線の観光施設が賑わっている。一方、道の駅・コンビニとの競争も激しく、売れ筋も道の駅にあるような地元の特産品に移っている。品揃えを大幅に変更する必要があるというところがある。売上拡大に地場産品の活用、自社製造の特産品を創出しようという動きがある。また、レンタカーを呼び込むために従来とは異なる施設デザインも必要になり、販売ルートや情報の出し方を模索している。

 土産品店は自社製造の特産品を持っているところが強い。店頭販売価格はスーパーと同じ、というところに人気が集まっている。観光客が買う土産品そのものが「地場産品」の特に農水産品にシフトしており、従来のみやげのためのみやげ品は利益率は高いが、滅多に売れないようになった。お土産品の六割は那覇空港で売れるというが、空港の売店の多くが県内農水産品を扱っているのは観光客のニーズをうまく捉えているからである。

 レストランも売上を大きく落としている。特にホテルのレストランは厳しく、「レンタカーでチェックインした観光客は夕食は車に乗ってどこかに行く」のが当たり前になった。多くがリピーターであり、自分の好みの店やガイドブック、インターネットで調べたところへ行く。近頃は沖縄の普通の食堂でゴーヤーチャンプルを食べるのに人気がある。

■不況で支出控えても客数は増加

 これら一連の変化に共通なのは観光客が消費の勘所をわきまえたということである。同時に支出をなるべく減らそうとしている。同じことはハワイの米国人客が前々からやっていた。滞在は二週間と長いが、消費金額は四泊しかしない日本人よりはるかに少なかったのである。ワイキキの大通り沿いのホテルに泊まるのではなく、ビーチから少し遠ざかるとコンドミニアムや一泊四十ドルのホテルがたくさんある。多くのアメリカ人はそこに泊まっていた。もちろん高級リゾートに泊まるアメリカ人も多いが、それよりも安いホテルに滞在するアメリカ人の方がずっと多かったのだ。その結果、観光客数は湾岸戦争後、伸び悩んでいるのだが、最近になって超大型・超高級の不動産開発がハワイ島で始まって、これには世界中のお金持ちが集まっているといい、新たな展開が予想される。

 ヨーロッパも休暇で長い夏休みをとるが、多くは田舎に帰って両親の家に泊まったり、友人知人のところで間に合わせていた。

 このような長期的な支出の削減傾向の裏にある長期にわたる日本の不況の影響は無視できない。不況になると旅行需要は減ると見るのがこれまでの常識だった。年末になると沖縄県は毎年次の年の観光客数の目標を定めるが、数値目標のよりどころにGNPの成長率を引用していた。しかし、この二十年の観光客数の伸びは、結局、GNPとは無関係に常に増加傾向にあることが分かる。

 つまり、景気とは無関係に観光客数は一貫して伸びていたが、ここにきて不況の影響で消費額がガタンと下がった。加速が付いて下がった感じだ。これを反映して沖縄では一万円出して食べる料理がない、五万円出して泊まるシティーホテルがないという状態になっている。宿泊部門で新たな大型投資が起こっていないため、沖縄旅行の品質が高まっていないのである。消費額は下がりっぱなしである。豪華とかエクセレントといった旅行商品が少なくなってしまった。それでもこの夏は高級なリゾートから先に売り切れたことに注目すべきである。

 われわれは不況で安い旅行が当たり前という状態におさまってしまってはならないと思う。

 体験学習やエコツーリズムは有望であるが、リーディング産業としてのリゾート構築を目指す沖縄にとっては、それらはメニューの中の一つでしかない。それらの開発は地域や各企業に任せておけばよい。

 土地や建築単価が下がっており、金利も安い。若い人材も豊富である。心配された那覇空港の滑走路の制限は、八百万人くらいなら十分対応できることが分かった。旅行社は高級な商品をつくって個人がインターネットでは手に入れにくい商品を販売したい。

 東京の高級国際ホテルチェーンの進出ラッシュは日本経済の回復を見越した動きと考えられる。いま、本当のメガリゾートをつくり出すチャンスと捉え、打って出る戦略が必要だ。


えげつない商売は止めよう

■日本の旅文化を考える

 夏休みも終わり、国内旅行も一段落した感があります。ここで、夏休みのあり方について観光の面から考えてみたいと思います。

 夏休みは学校が休みに入り、親子が触れ合う絶好の機会です。しかし、旅行に出掛けるにも、航空運賃は全て割引が廃止され個人の旅行は目が飛び出るほどの運賃を払わないと搭乗できません。

 特に、普段会社勤めで休暇がとれない人が故郷を思い年に一度のお盆休みを利用して、故郷に帰省し、墓参りをする時は割引が効かなくなっています。

 まさしく、人出を見込んだ、足元を見た「悪徳商法」と変わりはありません。これで公共交通だと胸を張る経営者の感覚は普通とは思えません。故郷への足の便は良くなっても、ますます遠くになる故郷に思いを馳せ、家に閉じこもり不況に悩まされる父親の姿が思いやられます。

 永年続いている盆・正月・連休など、一連の「割引中止」はもう止めてください。いつでも、普段通りに帰省出来、親兄弟や親戚と久しぶりに語らえる時こそ、割引があっても良いのではないでしょうか。

 夏休みこそ「ふるさと割引」があって当然で、まさしく公共交通であると胸が張れるのです。

 航空運賃・JR運賃などの乗り物だけではありません。普段一泊二食一万五千円で泊まれる宿が、どうしてこの時期に三万五千円も取るのでしょうか。食材が違う? サービス違う? 部屋の作りが違う?

 とんでもありません。どこも変わりはありません。ただ、オンシーズンだからとの理由で暴利を貪る経営者の猛省を願わざるを得ません。満足度の差で宿泊料金を決めないと、お客様は納得せずマイナスの宣伝をし、じり貧になることを経営者は心すべきであると思います。

 現代は、物やお金の価値よりも心の豊かさを求める時代になっています。観光産業の発展は、運賃政策・価格政策にあると言っても過言ではありません。夏休みを終えた今、再度多客期の観光のあり方を考えるときではないでしょうか。シーズンと言う、人の足元を見た商売はもう終わりにしてください。(投稿・旅行業)


那覇空港の発着限界16万回は誤り

■22万回可能、限界は800万人

 一一年の観光客目標六百五十万人の目標設定には二つの制限があった。一つは十年かけても景気が回復しないのでせいぜい六百万人という、不況を前提に伸びを期待できないとする意見。二つ目は那覇空港滑走路の限界が六百万人であり、それ以上は無理というものだった。

 この前提二つがいま崩れている。

 第一の不況で観光客の伸びにブレーキがかかるという考えは、不況と観光客数の伸びはほとんど関係がなく、むしろ不況の影響は消費金額に現れて、観光客数そのものは伸び続けているという現実によってナンセンスであったことが分かる。

 ではどこまで伸びるか、伸ばすべきかというと、日本の年間の旅行需要は三億五千万人あり、このなかの三%を獲得するという想定には問題はないと思われる。つまり、千万人までは問題なく伸びる。それ以上も可能である。

 また、不況が十年続くという発言はもともと沖縄観光審議会でのお役人の発言であり、痛みを押し付ける政治から国民の幸福を追求するという当たり前の政治に転換して積極財政がとられれば景気は一気に回復する。このダイナミックな転換を役人が発想できないというだけだ。日本復活はそれほど遠い話しではない。それを見越して観光産業は高品質なハードやサービスを準備しておかなければ ならない。

 第二の滑走路限界は県内経済界の長年の希望である那覇空港の沖合い展開を早く実現しようという善意からでた統計の読み違いである。

 沖縄県がまとめた滑走路沖合展開の理屈は一本の滑走路の受入限界は発着回数で年間十六万回(旧運輸省試算)であり、二〇一〇年には発着回数は十四万八千回に達し、これに年間二万回の自衛隊機の発着を加えると限界の十六万回を越える。関空など他の空港が、発着回数が十三万回程度になると二本目を着工してきたことから、沖縄もすぐに着工すべきという理屈である(本紙第五五八号、九九年十一月十五日付)

 ところが、《関西空港の発着可能回数について、旧運輸省(現国土交通省)が「運用次第で公表値の年間十六万回から二十二万回以上に増やせる」との試算を二年前にまとめながら、公表を控えていたことが一日明らかになった》という事実がある(朝日新聞WEB版〇一年十二月三日)。それによると《関空では試算の直前、二本目の滑走路をつくる二期工事が始まっており、公表すれば拡張不要論が出かねないと判断した。無駄な公共事業を減らし、既存施設を有効活用するという建前とは逆の空港行政が明らかになったことで、二期工事の中止や中断を求める声が強まることも考えられる。…》というのだ。試算したのは旧運輸省であり、一本の滑走路の発着限界は十六万回でなく二十二万回以上という事実は間違いないだろう。緊縮財政がこのまま続けば六百五十万人程度の目標なら、那覇空港の沖合展開は見送る、といういいわけを国交省に与えるようなものである。

 県の試算は一回の発着の平均搭乗客数を経験上百人で固定している。年間二万回の自衛隊利用を差し引いた限界二十万回を採用し、一回当たり百人の搭乗だと往復二千万人、観光客数は到着客数だけ考えるから千万人程度は現滑走路で受入可能ということになる。

 六百万人という滑走路限界は早く沖合展開を実現するためにつくられた虚像であった。ただし、虚像だから滑走路沖展は要らないというわけではない。夏場の沖縄観光はフル稼働し、千万人達成に向けてトップシーズンは実際に限界に近いように見える。これを解決しなければ飛躍的な観光客の増加はあり得ない。この時期の不可解な沖縄商品の価格体系について、旅行業のプロからの投稿(別項)をぜひお読みいただきたい。こんなことをあと十年も続ければ沖縄観光はそっぽを向かれ、東南アジアのリゾートに客を奪われてしまうだろう。

 逆に言えば二〇一七年前後の千万人をにらみ二〇一一年には八百万人に達するという計画を立てたときに、滑走路の沖展が必要になる。もし沖合い滑走路建設に十年かかるなら二〇〇五年には着工、二〇一五年に頃には完成して、利用していなければならない。千万人が限界でも、とにかく〇五年前後の着工はデッドラインであることは間違いない。つまり那覇空港の限界で観光客は六百万人、離島やクルーズ船に頑張ってもらって六百五十万人とした県の目標は小さすぎて間違い。もしその通りに推移したら二〇一一年に滑走路はまだ余裕があることが分かったので、沖展はさらに先送りとなり、沖縄観光は衰退、元も子もなくなる。

 このことは滑走路の限界が来るのでいま投資すべきでないとしてきたホテル業界にとって明るいニュースである。県内有力企業が千五百室のホテル建設を宣言し、着工はまだだが、ネックは滑走路限界と聞いた。千万人まで滑走路限界がないことが分かればゴーサインを出しやすくなるであろう。

 二〇一一年の六百五十万人体制ではあと九千数百室のホテルが必要としていた県の見通しは、八百万人に向けて超高級ホテルを中心に二万室程度必要と大幅に上方修正する必要がある。(「観光とけいざい」第641号03年9月1日)

 


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