連載コラム視点642
渡久地明(沖縄観光速報社)


政府投資が中国の活力

 二十年前、西側(死語であるが)の記者としておそらく初めて私が中国の経済特区を取材してから二十年たつ。この時の深センの工場はまだほほえましいものだった。この間、人々の暮らしは見違えるほど豊かになっている。いままでは単に土地があって人口が多いから発展するのは当然と思っていたが、今回の取材でこれまであまり考えていなかったビックリがあったので、お伝えしたい。

 中国はどんどん発展しているが、中国政府は国民からは税金を取っていないそうだ。政府は企業から徹底的に集金(赤字企業も黒字企業も役人が張り付いてインチキさせないようにしている)、税収としている。

 農民は収穫の五%を納めれば、あとは自由に売れる。米は一キロたったの三十円である。土地の使用権を持っているのは農民であり、農家の家というのが、まるでリゾート開発のように立ち並んでいた。二年前に行ったときは政府が造っているマンションかと思っていたが、そうではないということである。

 五星ホテル、四星ホテルが上海にどんどんできているが、これらはほとんど政府や地方政府(上海以外の省や市など)の投資であり、政府がつくった超高級ホテルをヒルトン、シェラトンが経営しているというわけだ。この投資は成金の誰かがやっているのかと思っていたがそうではなかった。

 国民は税金を払っていないので、政府の金の使い道はどうでもいいと思っており、政府の赤字・黒字が話題に上ることはない。このことがかえって政府に思い切った投資を促進させている。政府が動くと関連の企業がみんなついてくるので、例えばホテルなどは納入業者、建築会社、旅行会社が一丸となって盛り立てている。今回の取材は浙江省と上海市の招待(日本のマスコミ七十社)であったが、宿泊ホテルは四星の地元オペレーターホテルであった。上海の観光客は年間八千万人でほとんどが国内客。外国人客は二百八十万人(昨年実績)である。数年前から国民を動かすために五月と十月に一週間の国民の休日を設けてある。これが中国観光の強みとなっている。ちなみに、五月の連休は日本のゴールデンウィークと重なり、中国でもゴールデンウィークといっている。この時期は中国国民の旅行シーズンになっているので、日本から行くと相当に混雑しており、入れない観光地もあるので時期を外した方がよいという。

 役人はマンション無料、各種の利権、副収入があり、だれもが儲けを追求するので経済は大変うまく回っている。

 国民は子供をよりよい仕事に就けるよう、猛勉強をさせている。世界の有力企業や役人に人気が集まっている。

 ホームレスはいない。物乞いはいたが、地元の人はそれは「商売だ」「その証拠に夜になったら家に帰る」という。

 この経済の好循環は十三億人の国民のパワーをフルに活用することによって長期的に続けることができると思われる。日本はたったの一億人で戦後四十年は繁栄したわけだから、人口比で考えて十倍、四百年続く可能性がある。中国の歴史を振り返ると不可能ではないだろう。

 それまでの自主独立政策から改革開放政策に転じ、中国の潜在的なパワーを引き出したトウ小平さんというのはホントに偉い政治家であったのだと思う。運営の仕方次第で国の栄枯盛衰は必ずコントロールできるのだ。(明)(「観光とけいざい」第642号03年9月15日)

 


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