連載コラム視点643<拡大版>
渡久地明(沖縄観光速報社)


組織体質転換すべき 供給不足続く、開発体制が必要だ

■OCVB再生の道 饒波氏辞任を機に考える

 本論をOCVB有志に贈る。(本紙渡久地明)

 OCVBの饒波正之会長が体調不良を理由に突然辞任した。激務であることは分かるが、任期途中で仕事を投げ出した格好だ。私が見る限り精力的に海外出張をこなし、血色もよくピンピンしていたのだが…。いま、全く連絡が取れないのである。

 そこで辞任の理由は別のところにあるのではないかと、さまざまな憶測があり、インターネットではセクハラがうわさされた。このような悪質なうわさには名誉毀損で告訴すべきである。放置していることで、脇の甘さを批判されても仕方がない。

 なぜそうなったのだろう。

 OCVBは組織の体質に問題があると長年、業界から批判されていたのは事実である。私もこれまで何度もそれを指摘してきた。その指摘が正しかったのだ、といま改めていわねばならない。

 しかし後ろ向きの話しばかりをしてもしょうがないから、再生のための大胆な私の提案を以下に述べる。

 まず、OCVBは日本を代表する観光地・沖縄の観光推進団体として他の地域の手本になるような組織であるべきだ。少なくともそれを目標にして、いまはとりあえず異常な体質から当たり前の組織に正すべきである。そのための大規模な組織体制の改革をいまこそ断行すべきである。

 私がイメージする体制の変更とは、単純明快に当たり前の仕事をOCVBが主体的に行えるようにしてはどうかということだ。

 かつての観光協会は観光事業者が集まって会費を集め、共同で宣伝をしよう、受入体制や祭りを充実させよう、全国に誘客キャラバンをしようといった目的で発足したと思う。戦後の観光協会は社団法人沖縄県観光連盟になり、その後、観光連盟と財団法人沖縄県観光開発公社、沖縄コンベンションビューローを統合していまの財団法人沖縄観光コンベンションビューローになった。

 陣容はアルバイトも含めて百人体制となり、企画、誘客宣伝、受入体制、イベント、コンベンション誘致などの課題に取り組んでいる。

 これらの事業が不要であるとはいわない。しかし、やっている仕事の意味が不明だったり、事業の委託先の決定プロセスなどが不透明と見られるものが多い。

 例えば誘客宣伝事業として外客誘致を行っているが、最も魅力のある夏の沖縄には、海外からのお客は、国内客で満杯のためほとんど断られる。海外の旅行社が沖縄に送客しようとしたらオフシーズンしか部屋が取れない。その時には海外からのお客もいないのである。何のための海外誘致かと思う。そう聞くと「そのような予算項目があるからだ」という返事が返ってくる。

 ここで私は海外誘致が不要であるといっているのではない。外客受入はどうしても必要である。マーケットを国内だけに頼っていては、一流の観光地とは言えず、発展性もない。そのような受入体制ができていないのであるから、受入体制を万全なものにするための事業が必要なのである。これが当たり前の発想だろう。そのための手を打たなくてはならない。

 前身の観光開発公社は観光施設をつくったり、ホテルを引き受けるなど実際に観光開発をしていたのである。いま、できないわけがない。いまならリゾートを自ら手がけるというより、形を変えて民間の進出をサポートしたり、海外の有力投資家を説得して連れてくるという仕事が適当だろう。そのための構想と戦略を企画するのである。そしてこれを世界に向けて売り込まなくてはならない。あるいは、中国のように地方政府がリゾートを建設して国際チェーンを誘致するという開発体制も成り立つ。ブセナリゾートなどはこのやり方に似ている。うまくいくことが分かったのだから一〇〇%民間に払い下げるべきである。

 観光業界のイベントは世界中どこでもオフ対策であるが、沖縄は十年前のオフといまのオフの時期が変わり、なぜ満杯の十月、十一月にOCVBが主催するイベントがあるのか意味が分からなくなってしまった。オフがオンに切り替わってイベントポリシーが成功したのだったら、イベントそのものを民間に払い下げるべきである。

 反対に夏前の底上げを狙って始まった海のカーニバルはいつの間にか五月から八月まで期間を拡大し、本当にオフで人がいない四〜六月のイベントスケジュールはスカスカである。季節を拡大して参加人員が増えたように見せたいという計算があるという。驚いたことに、ある航空会社の沖縄支店長は「私は前任は大都市圏の販売責任者だったが、沖縄でこれだけのイベントが行われていたことを知らなかった。県外にはどんな営業をしているのか」と述べたことだ。これでは何のためのイベントなんだといわれても仕方がない。

 もちろんイベントが不要であるというつもりはない。今号の二面に十日ごとの航空到着客数の推移がある。これを見れば、いつイベントを打って集客すべきか、あるいは最適なコンベンションの開催時期が一目で分かるはずである。

 なぜ、こんな簡単な方針が分からないのか。オフを底上げする作業が大変難しいことはもちろん知っている。それを成し遂げるのがプロの技である。やり方はこれまで何度も海外視察をしてきて、充分に分かっている。なぜその知識を実用化しないのだろう。

 為替レートや株式市況は毎日、新聞に分析が出る。OCVBの調査部門の仕事にも毎日発表できるものがあるはずだ。テロ後のハワイは毎日の到着客数をインターネットで公表していた。週間ベースでは(東京の)銀行や証券会社なら調査の担当部門が細かい統計や分析をタイムリーに出している。OCVBからは一年がかりであまり実用にはならない報告書がときどき出るくらいだ。不思議なのは月ごとの観光消費額といった極めて基礎的なデータがなぜでてこないのだろうと思う。

 これも理由はOCVBの調査・研究部門が単なる調査・研究「発注」部署に成り下がってしまい、自前で分析ができないからである。そして、出てきた報告書は調査を委託された会社が出した成果をつぶしている可能性がある。都合の悪い結果が出てはまずいので、内容が変更されたという話しを実際にレポートをまとめた関係者からときどき聞くのである。こんなものはプロである業界人の役には立たない。

 極めつけは沖縄観光の十年計画のようなものが全くなく、審議会のようなところでも科学的なデータを出せないので、誰かが決めた目標にしぶしぶ追従するという主体性の無さだ。私は何回もいっているが、二〇一一年の観光客六百五十万人という数字には何のポリシーも戦略も科学的・経済学的根拠もないことを知っている。

 不況のおり、「量から質へ」という行政のかけ声がはやり、経済音痴のプランナーが趣味で出した数字を承認しただけである。当人が「私は経済は詳しくない」と講演会などでいっているくらいで、いい加減な数字であることは間違いない。

 何でこんなものを珍重するのだろう。もちろん業界はそのようには動かない。主体的に動いて八百万人を達成するだろう。しかし、世界から見たら、地方政府がたった六百五十万人しか打ち出せないような観光地にだれが関心を持つだろう、進出しようと思うだろうか。こんな弱気な観光地に進出する投資家はいないであろう。県内・国内の金融機関も二の足を踏んでいる。だから私が本当は八百万人以上になると具体的根拠を示して何度もいわなくてはならないので、そうしているのである。

 こう見てくると、OCVBというのは本当は何もできない個人の寄り合いであり、人数が多いだけで組織全体としてもまとまりがないのか、と疑わざるを得ない。

 ところが、いま述べたようなことを実現するのはそれほど難しくはない。内部には責任感をもって着実に成果を出せる人材がいるのである。これは長年、取材で出入りしている私がよく知っている。この人たちの活用の仕方次第でOCVBはプロの集団に生まれ変わることが出きる。

 OCVBと同じ建物にある別の県の外郭団体は大きな成果を上げて新聞紙上でも頻繁に取り上げられるようになった。トップになった専務理事が民間から有能な人材を集め、自由に仕事を進めてもらったら、すぐに成果が出てきた。すると県内の大手企業も若手のエースを出向させたい、というくらい活き活きしてきたのである。

 同じことはOCVBでもできる。民間から有能な若手を出してもらい、民間の発想で各部門を運営すべきである。この人たちは出向元に帰ればOCVBという組織の使い方が分かるから、さまざまな連携作業ができるようになるのである。いまは業界は「OCVBってなんなの」という冷めた感覚しかない。これでは力を結集することはできない。これではせっかく二十億円という税金を投じている組織を無駄に消費することになる。

 民間と人材を相互交流すればOCVBは民間の手法を取り入れてほとんどの業務が効果的に運営されるようになろう。OCVB職員の問題は、新卒で採用されると、観光業界の実態をハダで実感する機会がなく、実際のニーズとは無縁のことを仕事としてこなしてしまうことだ。OCVB職員は逆にホテルなどに一、二年出向させて観光客と直に触れ、現場の様子にも精通した人材に育て上げるべきである。OCVBが民間の人材を育成しようという計画があるが、おこがましい。その前にOCVB職員の人材育成が急務である。

 そしてOCVBのトップには県の天下りをおくべきではない。業界の誰もが認める業界生え抜きの人物が最も会長にはふさわしい。いうべき時にものがいえ、業界も行政もしたがえる人物でなくてはならない。これまで、行き先がない県の部長経験者や選挙の功労者が入れ替わり立ち替わりトップとなっていては、意地もプライドもある生え抜き職員はたまったものじゃなかった。どうでもいいプロパーはイエスマンとなってそれなりのポストを手に入れ、どうでもいい仕事を部下に押し付けていたのである。当の部長はトップのご機嫌さえうかがっていればポストにありつけた。そうでなく、ごく当たり前のことをしようとすると何年も閑職に追いやられた。これではOCVBという組織が業界からみて意味不明の仕事しかしない。そういわれる状態になっても不思議はない。

 前会長の辞任、民間からの新会長が就任するいま、不透明な体質を一掃するのにこれほど都合のいい時期はない。これを行うのは新会長というより内部の有志の仕事だろう。自ら変革を行う今世紀最初のチャンスだと思う。監督する立場の県の指導力も問われよう。(「観光とけいざい」第643号03年10月1日)

 


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