連載コラム視点644
渡久地明(沖縄観光速報社)


小泉改革は緊縮ではないというが…

 マクロ経済学では不況下の小泉改革が間違いであることは初歩の中の初歩である。自民党総裁選で高村氏が「景気の悪いときは財政出動、景気が良くなったら過熱しないように緊縮財政」と述べたのが正しい。その上で「亀井氏のいう真水十兆、総額五十兆円の積極財政を景気の回復が完全になるまでブレーキを踏まずにやる」のが正解である。

 抵抗勢力とか政治と業界の癒着という意見があるが、そのとき問われるのは汚職であって、財政政策では断じてない。

 このようにいうと「渡久地さん、今景気が悪いといって困ってる人はいませんよ」という反論がある。しかしこれは二重の意味で間違い。

 困っている人は現実にたくさんいる。経済的理由による自殺者が年間七千人あり、全体の三万人の二〜三割を占める。これはイラク戦争の死者の数どころではない。痛みを押し付けた小泉政治はイラク戦争以上の死者を日本で出している。この間違いはどんなことをしても正さなくてはならない。

 これだけでも大変なことだが、日本の人口に占める自殺者の割合は〇・〇一%以下であり、身の回りにほとんどいないということになる。見えないからいないという貧困な空想力しかないから、痛みなんか大したことはないとなる。

 いや無理矢理、大したことはないという意見の理解に努めてみよう。会社が破産すれば借金はチャラになるので払う必要がない。社長は借金地獄から開放されるので本当はその方が健康によい。損害は誰かが埋める。最も多く損害を埋めるのは税収が減る政府である。従業員は失業保険でしばらく暮らせる。生活保護という手もある。つまり、経済が行き詰まっても個人は最後は食うには困らない。結局、大変そうだが本当は自殺するほど困った状態ではないよ、ということらしい。

 企業が倒産するとその分の税収が減り、失業保険や生活保護の予算を出費する。この額が昨年、赤字国債は三十兆円以下にするといってできなかった上乗せの六兆円に相当するのである。税収不足を赤字国債で埋めたのが小泉さんであり、結局、政府の予算額は前年並みとなった。

 総裁選の討論で高村さんが「緊縮財政で景気は回復しない」と述べたのに対し小泉さんは「私は赤字国債を発行して予算規模は減っていない。緊縮ではない」と述べた。これは経済学で言えば小泉さんが正しい。このような社会全体の経済システムが内包する復元作用を経済学ではビルトインスタビライザーという。もし、小泉さんが公約を守って赤字国債を本当に三十兆円以下しか発行せず、不足分は公共投資の削減などでカバーしたら、今よりもっと悲惨な状態になっていたのである。逆 に今は(赤字)国債をどんどん出さなければならないのである。

 そして、その(赤字)国債を倒産や失業をカバーするカネに回すより、必要な公共投資に回して景気を回復させ、その過程で失業や倒産をなくそう、惨めな思いをする人をなくさねばならないというのが、亀井氏、高村氏、藤井氏らの政策であった。この政策の向かう方向には高速道路の目標通りの建設が入る。クマが通るような無駄な高速道路なのではなく、せっかく造った高速道路を使わない方が無駄なのである。

 どちらが優れているかは明白である。ではなぜ小泉さんに人気があるのか、本当に真剣に考えなければならない。(明)(「観光とけいざい」第644号03年10月15日)

 


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