連載コラム視点645
渡久地明(沖縄観光速報社)


1000万人を目指す真意

 観光客千万人を目指すべきだ、というと、量より質という反論がある。しかし、質を追求すると同時に量も増えるので私が千万人といっていることと、質を重視すべきという考えはホントは同じモノのを別の視点から見ているのに過ぎない。

 しかし、量より質といっている人達には見えていないものがあるようだ。分かっているものと私が思いこんでいただけらしい。それを詳しく述べよう。

 一言でいえば観光客数を飛躍的に増やすことによってそこで生まれる新しいビジネス、消費チャンス、観光客同士や観光客と県民との相互作用を重視し、それを期待しているのである。

 どういうことか。簡単な実例でいえば、観光客が百五十万人という頃にはリゾートホテルは(成り立た)なかった。人数が増えるにしたがって、観光客の間にリゾートの使い方が浸透し、リゾートが成り立つようになったのである。

 例えば那覇市内では旅行社に頼らない駅前ホテルというものが成り立つようになった。沖縄観光の黎明期から井戸を掘った業界人の功績はおいといて、インターネットで集客するというのが最新の集客方法だとして流行っている。

 別のケースではDFSが那覇市新都心に進出するが、観光客が四百万人の規模では参入の魅力がなかった。しかし、これから千万人に向けて展望すれば大いに魅力的だと判断したのだと分析できよう。最近、外資系がリゾートを買収して話題になっているのは国内で唯一伸びている沖縄の可能性を買ったのである。

 さらに例を挙げると、本格的なタラソテラピー施設というのはすでに宜野座村にあるとはいえ、もっと観光客が増えて認知度を高めることによって本来の役目を果たすものとなる。

 イベント紹介のフリーペーパーはハワイにはいくらでもあるが、沖縄では少ない。これも五百万人程度の観光客ではペイしないというのが大きな理由であろう。逆にもっと増えれば成り立つ局面となる。

 文化を売ろうという試みも復帰以来ずっとあったが、これまで大成功という話しは少ない。沖縄芝居を見たいと思う人が日本人の一%いるとして、観光客五百万人ならたったの五万人。一日当たりでは百三十七人。もちろん一%を二%に拡大する仕事も必要だが、五百席の劇場では到底採算はとれない。

 しかし、芝居とは違ってモノという文化なら今でも大量に売れる。こちらに来る六百万人とか六百五十万人を考える必要はなく、来ていない一億三千万人を相手にできるからだ。観光と物産の違いはここにある。いま、物産の県外向け出荷が好調である。物産の製造・販売に観光業界が本気で参入すれば、大変面白い展開になろう。

 このように量より質という単純な議論からはなにも生まれない。

 最後の相互作用とは、客同士互いに初対面でも二人でテーブルを囲むよりも四人、八人と増れば座は賑やかになるだろう。中に一人でもムードメーカーがいて酒が進めば、テーブルの売上は増えよう。これと同じことを五百万人でやるより千万人でやれば、社会全体の効率は単純に倍になる以上に高まる。これが私が千万人といっている真意である。その時、失業や所得の問題が解決される。

 このことは量の拡大は質の転換をもたらすという法則そのものである。(明)(「観光とけいざい」第645号03年11月1日)

 


 |  視点645 |  HOME |
本ホームページに掲載の記事・写真の無断転載を禁じます。すべての著作権は沖縄観光速報社に帰属します。
Copyright (c) 1996 Okinawa Kankou Sokuhousya. No reproduction or republication without permission.