連載コラム視点647
渡久地明(沖縄観光速報社)


デフレは克服できる

 ホテルの年間平均客室稼働率が七〇%であるとする。いま、県内主要ホテルの平均稼働率はこの程度であると見ておく。ところが夏の繁忙期は九〇%以上となり、連日満室の状態が続く。しかし四月から六月までは五〇%程度しか稼働しない。

 夏の客室料金は高騰する。何しろお客はたくさんいるのに客室がないのだから、客室料金は上がる一方である。決まった料金より上乗せしてでも宿泊したいという人もいるくらいだ。このように供給を遥かに上回る需要があるとき、インフレギャップがあるという。この時、従業員やホテル施設はフル稼働する。

 一方、閑散期の客室料金はピーク時の三分の一まで下がる。客室は大量にあるが、お客がいない。安くしてお客を呼び込もうとするから価格は下がる一方である。このように供給は十分なのに需要が足りないとき、デフレギャップがあるという。

 いま、日本はデフレ不況であるが、これはホテルにたとえれば一年中お客がいない状態であり、客室料金は毎日値下げ競争が起こっているのと同じである。すなわち、需要不足で商品が売れず、メーカーは値下げしてものを売ろうとする。物価が下がり続けているいまの日本の状態はこれである。

 で、客室稼働率が連日五〇%程度で長期的にこの水準しか期待できないとなると、百人いた従業員を半分に減らすのは経営者として当然の成り行きであろう。

 ホテルの例を引いたが大ざっぱにいって日本中の企業、工場で稼働率が低い状態となり、人が余るので、企業がリストラに走らざるを得ず、失業者が増えているのが、いまのデフレ不況なのである。失業者どころか自殺者や犯罪も増えているのである。良いデフレというものはなく、絶対に起こしてはならないのである。

 もちろん企業によっては利益を出しているところもあるが、それはホテルの例でいえば、客室稼働率が高まって利益がでているのか、何でも切りつめて、とにかく利益を出しているのかを見極めなければならない。いま、利益を出して話題になっている企業はリストラが成功したから、というところが多いことに注意しなくてはならない。

 ではデフレを克服するには何が必要かという話しになると、デフレギャップを埋めることという、非常に分かりやすい結論に行き着く。だれがやるのか。当然、政府である。

 ホテルの場合は営業担当者がお客を集める。ホテル全体あるいは地域全体の観光産業のためならみんなで負担して観光協会などが誘客活動を行う。

 国中が不況の場合は、政府がありとあらゆる財政・金融政策をつぎ込んでデフレギャップを埋めデフレを克服しなければならない。国は企業とは異なり、国民をリストラすることはできないのである。経済学と経営学は異なるのである。

 その手法について《国債の日銀の直接引き受け↓積極財政策》《政府通貨発行↓公共投資または国民に一律配布》《インフレターゲット(金融政策)》などがあり、どれも有効である。

 面白いことに七十年前、《国債の日銀の直接引き受けによる積極財政》を世界に先駆けて実行し、世界恐慌をいち早く脱したのは日本であった。現在でもこの政策は有効である。デフレを脱却すれば財政は健全化に向かい、国の借金が減少していくことも相当精密に分かっているのである。(明)(「観光とけいざい」第647号03年12月合併号)

 


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