連載コラム視点650
渡久地明(沖縄観光速報社)


拡大こそが状況を好転させる

 沖縄県の予算内示があり総額六千億円、前年比三%減の緊縮予算が組まれた。緊縮予算となるのは三年連続で、不況の影響が大きい。その中でも観光予算は大幅な伸びとなり、沖縄県が観光産業に大きな期待を寄せ、観光を成長させることによって不況を乗り切ろうという意志が強力に表明されたものと受け止められる。

 予算の削減は小泉政権の財政の立て直し優先、構造改革の結論であるが、県内では公共工事の縮小となって現れている。国の財政が逼迫していることはだいぶ前から分かっていたので、建設会社などは仕事の縮小を前から予測していた。有力企業の中には観光産業に軸足を移すというところがでていた。政府支出が縮小を目指すのであれば、この傾向は今後も続き、成長産業である観光部門に参入するところは今後も増えるだろう。

 しかし、観光産業はノウハウの固まりでもあり、参入に躊躇するところも当然ある。また、事情が分からないままに参入して、苦労するところもあった。一方で、小規模のホテルなどは比較的参入しやすい分野であると思われる。インターネットなどでの集客が可能になってきたからだ。

 財政規模の縮小→公共事業の縮小→建設関連の不振→成長が見込まれる観光産業への参入、という経路が出来た場合、観光産業はますます成長する可能性はある。しかし、大規模リゾートなどは資金も必要となるため、小規模に参入する、小規模ホテルの増加という結果になると、中小の間で競争は激化し、価格はあまり上がらないとなりそうだ。

 望ましいのは沖縄の観光産業に大規模に参入し、目玉となるような開発を行って全体のパイを広げるというものである。

 しかし、長引く不況でこのような勇気のある人は少ない。七月に北谷にオープンするホテル、来年のかりゆしやDFSはこの時期、本当のパイオニアである。

 だが、これらのプロジェクトができあがると、どうやらその後が続かないようだ。これでは沖縄観光は足踏み状態になる。

 不況でも沖縄観光は成長を続けるということが保障されれば、大型の参入は今後必ずでてくる。私は成長は間違いないと見るが、実際に投資する人はそうは見ない場合がある。保障がないと投資はひかえられ、悪循環となる。最も分かりやすい保障は那覇空港の滑走路の拡張であるが、これも財政再建でどうなるかよく分からない。着工するという方針さえでれば随分風向きは変わると思うが。

 結局、不況→緊縮財政が、さらに不況を深刻化させるといういまのサイクルを変更する必要がある。いま、右肩下がりが当たり前という論調が主流のようであるが、大きく下がった国民経済を再び立て直して右肩上がりにすることは不可能ではない。もとの水準に戻すだけだからだ。これはバブルの再現をしろということではない。緊縮して財政を均衡させる方向から拡大均衡に転換すべきなのである。

 このような成長を沖縄観光は経験してきて、決して無理な話ではないことを知っているのである。かつて、県内に宿泊施設をこれ以上増やすべきではないという主張があった。しかし、もし二十年前の状態で客室の拡大がなければ、観光客が五百万人に達することはなかっただろう。航空運賃も高値に張り付いたままだっただろう。失業はもっと多く、所得の格差は一層開いていたであろう。拡大こそが状況を好転させる。(明)(「観光とけいざい」第650号04年2月1日号)

 


 |  視点651 |  HOME |
本ホームページに掲載の記事・写真の無断転載を禁じます。すべての著作権は沖縄観光速報社に帰属します。
Copyright (c) 1996 Okinawa Kankou Sokuhousya. No reproduction or republication without permission.