連載コラム視点653
渡久地明(沖縄観光速報社)


雇用なき拡大、ITの活用法考え直せ

 ITの普及が県内ホテル業界の在り方にも強い影響を与えるようになってきた。ITの普及で旅行の総需要が伸びた形跡はないが、旅行の内容が大きく変化していると筆者は述べた。大きく変化したのがホテルの営業の在り方である。

 沖縄のホテル業界は海洋博を皮切りにスタートした。海洋博の入場者がどっと詰めかけるからホテルが儲かる、とホテルが続々建設された。

 しかし、フタを開けてみると驚いたことに旅行をコントロールしたのは旅行社であり、旅行社と契約しているホテルにお客が送り込まれ、契約のないホテルは苦戦した。この時の経験以来、県内ホテルは旅行社と提携して集客してもらうというパターンが定着したのだった。

 旅行社が沖縄旅行を造り店頭で売りだし、県内ホテルや航空座席は旅行商品のパーツとなった。ホテルは全室を旅行社に提供し、独自に販売できるのは二週間前の手仕舞い後の客室となった。

 最近まで冬はスカスカでいつでも部屋は取れたが、いまでは二月、三月も部屋が取れない状態が続いている。このことに当のホテルも困っている。ホテルの営業のトップがお得意さんの部屋が取れないという状態になってしまったのだ。そこで、旅行社に提供していた客室百室の内、五室を取り戻したいという交渉になるが、人気のあるホテルほど旅行社も手放したくないので交渉は難航する。

 そこに現れたのがIT集客が中心で旅行社との提携は薄いという新設ホテル群である。九五年のインターネット元年以来、ホテルの予約がITで徐々に増えていたが、全室IT予約で七割稼働するという海洋博直後には考えられなかったことが現実になった。

 旅行社とホテルの関係は沖縄という遠隔地のホテルが大消費地の東京などでホテルの営業マンにかわって旅行社が営業してくれるものという信頼関係で成り立っている。ところが、ITが旅行社に取って代わろうとしているのである。

 旅行の総需要はITでは伸びなかった。しかし、沖縄観光は伸びている。この伸びはITがあろうとなかろうと、ホテル客室が増えれば増えるほど伸びるという法則に基づいている。しかし、新しくできたホテルはITで集客しており、旅行社に手数料を支払わなくても十分ITで営業できるという実例がでてきた。

 いま、ホテルの手数料支払いは売上の二〇%にも達しており、これは宿泊客がホテルで食事をとらなくなったり、モノを買わなくなったことで比率が高まったのだと思われるが、金融機関への返済額よりも大きくなったという。金融機関がIT営業に転換したらどうかと考えるのに無理もない。

 一方の旅行社もITでの商品の売上が増えているので大幅なコストダウンが実現していると思われる。航空会社はもっと大きくITの恩恵を受けているだろう。しかし、総需要が増えない中でのコストダウン競争には限りがある。人件費抑制、サービスの廃止など雇用なき利益の拡大が起こっている。沖縄の場合、毎年確実に観光客数が増えるので、売上を伸ばしながらコストも下げられる夢の目的地である。

 しかし、ITの浸透で雇用なき観光の拡大となると本末転倒である。ITは集客コストを下げるのに活用する一方、サービス向上、雇用拡大のためにも活用すべきである。旅行の原点を思い起こし、ITの使い方を考え直す必要がある。(明)(「観光とけいざい」第653号04年3月15日号)

 


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