連載コラム視点717
渡久地明(沖縄観光速報社)


V字より、那覇空港が急がれる

 那覇空港の増設が間に合わないことによる困った問題が鮮明に見えてきた。県などの試算では観光客数に換算して六百六十万人くらいが那覇空港の滑走路限界という。限界に近づいたとき何が起こるか、考えてみよう。

 県内では観光産業が今後も伸びることを見越して、ホテルが建設されている。埋立地や返還軍用地の多くが観光産業を主力に開発を計画している。ホテル進出の勢いも止まらない。その結果、客室は今後も順調に増える。それによって、雇用が発生するので県民所得は拡大する。失業が減るのはめでたいことであるが、空港の容量限界でそれが達成できない。

 〇七年度の観光客数は五百九十万人を目標にしており、〇八年には六百二十万人、〇九年には六百五十万人となって、ほぼ県が想定する滑走路限界に達する。

 ところが県内の客室はどんどん増える。観光客数が増えないのにホテルが増え続ければ、どうなるかはすでに経験済みだ。九五年前後の円高・海外旅行ブームで観光客が増えない時期とバブル時の計画が実現してホテル開業ラッシュと重なった観光危機である。これと同じことが一〇年以降に起こる。

 九五年の観光客数は三百二十八万人、沖縄全体に暗雲がたれ込め、全国紙が沖縄観光はもう終わりだと書き、県内観光学者は四百万人も無理だと悲観し、銀行はホテルにカネを貸さない方針を出したというまことしやかなうわさも流れた。この時は業界、政府が一丸となって強力なキャンペーンを展開し、観光客を増やして、脱したのである。

 ところが、観光客数が六百五十万人まで拡大すると、キャンペーンは効かなくなる。お客は増えようがない。しかし、造りたい人がいるからホテルはできる。新設ホテルは最悪でも五〇%程度の稼働率を確保しよう。既存ホテルは稼働率が大幅に下がり、危機が起こる。

 〇一年からの八次空整で関空の第二滑走路と同時に那覇を着工しなかったツケが一〇年以降、このようにに現れる。いったん縮小に向かったはずの失業は減らず、倒産ホテルが出て再び拡大する恐れもある。

 これを回避するには客数が制限される中、泊数を増やして、ホテル稼働率を高める必要がある。このときは否応なく沖縄観光の質を転換しなければならない。泊数を増やすという質の転換で、果たして、室料は上がるか、下がるか。日本経済がもし回復していなければ、旅行支出は増えないから、室料は下がる。景気が顕著に回復していれば、滞在日数も増やしやすく、室料もそれほど下がらないから、危機を回避できるかすかな可能性が残る。

 わたしは七百数十万人までなら離島も含めて観光客数は増やせると思うが、それでも一三年には危機的な状態になると予想する。それまでに、いやもっと早く那覇空港の平行滑走路を実現すべきだ。辺野古のV字型滑走路よりも、これのほうが急がれる。(明)(2007年2月15日号掲載)


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