連載コラム視点720
渡久地明(沖縄観光速報社)


1000万人の根拠

 観光客千万人の根拠を数式で示せという問い合わせがあったので、再度応える。

 観光客数が一八年頃、千万人に達するという根拠は、過去の観光客数をグラフに描くと大ざっぱにはきれいな曲線(直線)を描いており、その直線は数式では、観光客の増加速度は観光客数に比例するという方程式の解になる。

 なぜこれが成り立ってきたかは、県内で受け入れ施設が増え、それにともない観光客数が増えるということがくり返されたからだ。増加の原動力となったのは観光業界の競争による。業界が競争し合って毎年売上が伸びている状態をつくり出すことで、持続的な成長が維持されてきた。

 それを阻害するものがあれば取り除いて、競争原理が働くようにすべきだ。当面の大きな問題は滑走路不足だと判断される。また、将来的に特定の企業が巨大化しすぎて、他社が成り立たなくり、戦意を喪失するような独占状態も避けるべきだ。競争がなくなっては成長も維持されない。大手から中小までが工夫を凝らして競争する結果、全体のパイが広がるので、各社が毎年利益を出し、競争が成り立つ。その状態を維持するためには人数や取扱金額の増加が必要だ。これがこれまで観光客が増えてきた理由で ある。

 観光客数の変動は単純な受入能力の拡大だけでなく、他に航空事故や景気、為替の変動、テロやSARSの影響もあったが、受け入れの充実が主に影響していると判断できる。

 ただし、このような理屈では観光客数は千万人を達成した後もどんどん増え続け、十億人でも百億人でも達成できるということになる。沖縄の観光客数は毎年安定的に四〜五%で伸びるという方程式は、これまでの実績から導かれる経験式であって近い将来には適用できるが、長期的にもこうなるとは限らない。

 そこで、上限を取り扱い、経済学などでもよく使われる適当な数式としてロジスティックス式を仮に沖縄観光に当てはめてみたところ、観光客の上限は千万人程度ではないだろう(もっと大きい)と推定される。

 限界は自然環境やマーケット規模なども影響すると思うが、それら個別の検討はしていない。他の類似環境からの推定で、自然環境は受入の制限要素にはならないと見る。たとえば、自然環境が沖縄と似ているハワイに比べて沖縄のリゾートホテルの密度がはるかに低いこと。また、マーケットは世界に拡張できるので、ハワイ並みの観光客数を想定するなら宿泊日数が変わらなければ沖縄では千八百万人(宿泊日数が変化するなら一日あたり滞在人口十八万人程度、現状は五万人)くらいはいける。

 だから、ハワイと沖縄の観光規模の比較は観光客数より、一日当たり滞在客数で比較するのが正しい。観光客千万人というのは、現実的に可能であると同時に分かりやすい指標でもある。(明)(2007年4月1日号掲載)


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