連載コラム視点732
渡久地明(沖縄観光速報社)


市場原理主義の実験台となった沖縄

 県内ホテルがどんどん外資系企業に買収されている。県内大型ホテル、百室規模の中堅ホテルも取引の対象で、〇〇年代に入って三十軒以上の経営者が変わった。

 長期にわたって観光客数は好調に伸びており、今後も伸びが予想される。国内で最もホテル稼働率が高く、年間を通じて客単価も高い。特に夏場のリゾートは客単価が五万円を超える。また、レイバーコストが全国一安いとあって、買収ラッシュとなった。投資に対する利回りは年間五、六%にのぼり、それが大きな魅力になっている。

 買収される側のホテルオーナーはホテル資産はなくなるが、同時に借金もなくなって一息つく。従業員の雇用はそのまま継続されるケースがほとんどで、外見上は何も違いはなさそうに見える。

 もう半年くらい前になるが、海邦銀行小禄支店でカネをおろすために待っていたら、営業窓口で担当者が二十代後半とおぼしきOLに「ゴールドマンサックスグループのアリビラへの投資が有望ですよ」とさかんにすすめていた。

 いわゆるファンドはこのようにして庶民のカネを全国から集め、投資に回すわけだ。外資がホテルを買っているが、その資金は国民が出している。

 一方、最近、外資系に買収されたホテル従業員から「借金がなくなり、設備も更新。がんばって営業して、業績は向上した。でも、給料が増えない。投資家への配当に回している」というような話を頻繁に聞くようになった。

 昔、株式はグループ企業の持ち合いで、企業が儲かると、配当よりも内部留保に積み上げ、労働者にも配分された。株主も配当より一層の設備投資と売上の拡大を奨励して、投資先の企業規模を拡大させ、株式の含み益を増やすことで満足していた。

 ところが、外圧によって日本型の株式の持ち合いが解消される。会社は株主のものであるというキャンペーンが行き渡り、それが功を奏し、企業は配当を最優先するのが当たり前になった。

 九〇年代から企業は従業員をパートやアルバイトに切り替え、人件費はどんどんさがっている。

 一方、戦後ズーッと賃金の低い沖縄は復帰後も全国最貧県で貧富の差も全国一高かった。革命が起こるといわれるほど失業者の多い地域なのに、そうはならなかった。この惨状を何とかしようというのが本来の沖縄振興策ではなかったのか。

 ところが、逆に市場原理主義の導入で、沖縄振興策は大きく後退している。沖縄は、同じ状態を日本中につくり出しても、国民は納得するという手本になった。小泉構造改革を見れば、昔の自民党は理想的な政治を行っていたと分かる。

 沖縄県民は踏んだりけったりだが、悪い手本を全国に示すことになった。まんまと市場原理主義の実験台にされたというわけだ。(明)(2007年10月15日号掲載)


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