連載コラム視点735
渡久地明(沖縄観光速報社)


1997年‐世界を変えた金融危機

 本紙第732号で「不況でハワイに行けなくなった日本人」、第733号で「ハワイに行かなくなった日本人」を取り上げたが、ハワイへの日本人客が減少し始めたのはハッキリ九八年以降であり、同時に九八年以降は民間給与所得が減少に転じていることを示した。九七年は四月から消費税の増税があり、これが影響しているのかと考えていたのだが、十月三十日に「1997年‐世界を変えた金融危機」(竹森俊平、朝日新書、720円+税)が出て、詳しい分析が行われている。九七年には同書がいうような世界を変えるほどの金融危機が起こっていた。

 ウィキペディアから主な出来事を抜き出すと、次のことが起こっていた。

 トウ小平死去(二月二十日)▽神戸連続児童殺傷事件(通称・酒鬼薔薇事件)(二月十日)▽消費税増税実施(四月一日)▽ペルー日本大使館公邸に特殊部隊突入、人質全員解放(四月二十二日)▽香港が英国から返還される(七月一日)▽タイ政府によるタイバーツの変動相場制導入により、アジア通貨危機が始まる(七月二日)▽第二次橋本改造内閣発足(九月十一日)▽金正日、朝鮮労働党総書記に就任(十月八日)▽北海道拓殖銀行破綻(十一月十七日)▽山一證券破綻(十一月二十二日)▽地球温暖化防止京都会議で京都議定書採択(十二月一日)▽金大中、韓国大統領選挙に当選(十二月十九日)。

 消費税増税だけが強く印象に残っていたが、アジア通貨危機、北海道拓殖銀行、山一證券の破綻もこの年だった。銀行や証券会社を潰すなど信じられない事件が日本では起こっていた。日本の経済成長率は七四年以来初めてマイナスとなった。まさに狂気が支配していたといえる。

 冒頭の「1997年‐世界を変えた金融危機」では、国内は「金融機関の不良債権問題への措置のまずさと、消費税の引き上げをはじめとする増税策とが、金融危機と景気の崩壊を招いた」と説明している。

 国際的にはタイから始まったアジア通貨危機で世界の投資資金が引き上げると、危機に直面した東アジア各国は九八年以降かえって貯蓄を殖やし、世界的な貯蓄過剰を生み、過剰となったカネを低金利しか稼げないアメリカに貸しつけた。世界の投資資金の流れはアメリカに集中し、世界のカネの流れが大きく変わったが、その原因は…。

 内容の詳しい紹介はしないが、改めて九七年を境目に日本も金融危機の影響をモロに受け、それが観光業界にも及んでいる。

 沖縄観光は九七年以降も伸び続けているが、消費金額は低下した。世界と日本の経済がこのように激変しているのなら、単純に沖縄観光は豊作貧乏というわけにはいかない。業界はどこも低空飛行だ。このような状況で単価を上げろ、質で勝負だ、というかけ声はシバキ主義にしか聞こえない。(明)(2007年12月合併号掲載)


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