連載コラム視点736
渡久地明(沖縄観光速報社)


720万人の決め方は合理的である

 一一年の観光客目標が六百五十万人から七百二十万人に修正されたが、県内日刊紙は両紙とも批判的だ。

 琉球新報は十二月十八日付朝刊で解説を付けて「公約意識、逆算的な設定」という見出し。沖縄タイムスは二十日付朝刊で「公約の帳尻合わせ/現状追認で消極的 問われる実行力」「検討委員らと認識に隔たり」と手厳しい。(公約を守るのは当たり前だと思うが)

 わたしは七百万人を予測していたので、プラス二十万人は思い切った目標であり、小泉構造改革以降、委縮しきった行政にしては画期的な決断であると高く評価している。プラス二十万人は期待や希望が混じった努力目標として絶妙である。ところが、県内新聞は全く逆の見方だ。わたしとしては素 直に県に荷担したコメントを書いておきたい。

 というのも、七百二十万人という数値は多くの検討委員の意見が収斂した結果だった。県はそれをそのまま目標値に採用しただけだ。何度も議論を重ね、未来を予測する方法はデルファイ法といって広く世界で活用されている。検討委はそれを意識したわけではないようだが、具体的には次のような やり方だ。

 「多くの専門家がそれぞれ独自に意見を出し合い、それを相互に参照し再び意見を出し合う、という作業を繰り返し行うことで、意見を収斂させ、未知の問題に対し確度の高い見通しを得るための方法。将来起こりうる事象に関する予測を行う方法としてよく用いられる。アメリカ合衆国の研究機関・ ランドコーポレーションが開発した」(はてなダイアリー)

 第三次沖縄県観光振興計画検討委は県の説明を元に、委員それぞれが独自案を出し合い、何度か集まって目標値を収斂させた。これをもっと丁寧にやればデルファイ法そのものになったはずだ。それでも検討委はデルファイ法とよく似た経緯をたどっており、新聞がいうほど根拠がないやり方ではな い。また、合理的・科学的でもある。

 デルファイ法によって予測された有名な未来に観光分野ではWHOの世界の到着観光客数予測がある。九五年を規準に二〇二〇までの長期予測を行ったものだが、驚くことに、九・一一テロなど大きな出来事もあったのに、〇七年現在、現状とずれていないのである。WTOの資料は検討委でも配ら れた。

 未来予測の方法には様々な手法があって、数値を精密に積み上げる方法だけがまともだというわけではない。コンピュータシミュレーションでも数値を少しかえるだけで、結果は大きく異なってくる場合がある。それよりも多くの委員の意見が収斂した七百二十万人という数値の信頼性の方が高い。 精密なことをやってかえって間違うより、大雑把に正しい方がよいのだ。

 会議は非公開だったので詳しい内容は本当は分からない。七百二十万人で意見が一致したというので、以上のように推測した。(明)(2008年1月15日号掲載)


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