連載コラム視点739
渡久地明(沖縄観光速報社)


政府紙幣の発行でファイナンス

 道路特定財源の一般財源化に関する民主党と自民党のやり取りはとんだ茶番劇である。ガソリンを安くして国民に還元するという案は額が小さすぎて話にならない。それより、道路を早くつくるべきで、十年で六十兆円などという悠長な計画ではなく、二、三年で六十兆円に前倒しすべきである。

 これは極めてまともな経済政策である。日本経済は九〇年代初めに世界のトップを走っていたが、デフレ突入後、どんどん世界に追い越されて、ついに〇六年の一人当たりGDPは世界十八位まで転落した。転落する過程で、給与所得は毎年減り続け、生活保護世帯は百万世帯を超え、ワーキングプアといわれる低所得者層が激増し、自殺者は毎年三万人と高止まりしている。

 いまの日本は一九二〇年代の昭和恐慌時と同じだ。第一次世界大戦のバブルがはじけ、当時も日本はデフレに突入した。一九二九年にはアメリカの株式市場が暴落、世界恐慌が起こる。

 八〇年前のデフレでは痛みに耐えて強い経済体制をつくろうと、いまと全く同じ議論が国会で行われていた。それをやめさせて政策転換したのが高橋是清だった。日銀に国債を引き受けさせて、積極財政を組み、国民にカネを行き渡らせた。おかげで景気はみるみる回復、世界恐慌後、最初にデフレから抜け出したのだった。

 高橋財政はうまくいきすぎたため、国民の間からもっとカネを刷れという声が起こり、高橋是清が暗殺されると軍部がカネを印刷してどんどん使うという間違った方向に走ることになった。

 現代の景気回復策に戦争という方向はあり得ないだろう。福祉や道路建設にカネを使い国民を豊かにすればよい。

 そのためにいくらくらいカネが必要なのかは政府なども使っているマクロ経済モデルで計算されている。十兆円や二十兆円規模の財政出動だとこれ以上景気が落ち込むのを止める程度の効果しかないが、四十兆円規模で行うと景気は急回復し、驚くことに政府債務の対GDP比は顕著に縮小する。財源は政府通貨発行益(カネを刷ることによる利益)が好ましい。四十兆円印刷して財政出動しても、インフレ率は三%以下に抑えられ、失業は解消、国民はどんどん豊かになる。

 国の経済運営とは国民を豊かにするために行われるものだ。現在は全く逆に国民負担をどんどん増やして、政府の債務を減らすことばかり考えている。経済政策を失敗したのは政府であり、増税して国民にそのツケを回すのは間違いだ。

 〇三年四月、ノーベル経済学賞受賞のスティグリッツ教授は日本の財務省でデフレ脱却のための講演を行い、日本に「政府紙幣の発行」を提言した。カネを印刷してファイナンスを行うべきだと強力にすすめている。これは荒唐無稽な話ではない。多くの経済学者も支持するまじめな政策である。(明) (2008年2月15日号掲載)


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