連載コラム視点744
渡久地明(沖縄観光速報社)


成長しないという前提を変えるべき

 復帰後の沖縄観光客数の変化をグラフに表すと、きれいな直線になり、それを延長すると二〇一六年頃には一千万人になるだろうと予測したことがある。そう述べたのは一九九八年の九月だった。あれから十年経ち、一千万人達成は沖縄県の政策になった。

 トレンドを伸ばすだけで予測が成り立つのか、という疑問もあるだろう。しかし、グラフを紙に描いて(パソコン画面でもいいが)、過去の観光客数のみをデータとする予測方法もかなり有効なのだ。さまざまな増減要因があるが、それらは過去のデータに含まれている。今年は去年の続きであり、来年は今年の続きであるというところだけに着目すると、過去のトレンドを伸ばすという将来予測手法は十分合理的であると考えられる。

 このような分析は「時系列分析」といい、意外に有用性が高いとされている。

 実際に九八年の予測が〇七年までほぼ有効だった、というのが沖縄観光の事実である。九八年以降、最近のデータを追加すると一千万人到達は二〇一八〜二〇年頃まで後ろにずれるが、まあ、ほぼ九八年時点の予想通りといえる。

 同じ予測は日本経済全体にも当てはまる。現状の政策が続けば日本経済は将来にわたってわずかしか成長しないという予測が九〇年代半ばからあり、それが的中している。しかも、そのような低成長が続くと、増税などの国民負担が増え、弱いモノにしわ寄せが行く、と的確な分析が当時から行われていた。

 そのような論者こそホンモノの学者であると思うが、当然に解決策も示している。低い経済成長がさまざまな歪みを生むのだから、高い成長を回復することで問題は解決できるというものだ。これは誰もが伸びないと思いこんでいる前提を変えるという考えだ。

 そのためには五%の経済成長を達成するような経済政策をとればよく、具体的には大型の経済対策が有効である。政府の財源は増税などといわず、日銀からの借入でよい。政府は日銀に借用書を差し入れ、無期限・無利子のカネを借りて、前提を変えるための大型の経済政策を数年間行う。

 景気が回復すると政府の税収は自然に増えるから、そうやって余ったカネを日銀に徐々に返していけばよい(同じ政府であるから返す必要はないという考えもある)。

 沖縄観光はこれまでの成長がこれからの成長を約束していた。しかし、航空運賃が急激に上がったり、多くの国民の給料が減っていくなら今後、影響を受ける。

 一方、日本全体は去年と同じことが来年も続くなら、景気が回復する見込みはない。前提を変える必要がある。もし、成長しない日本経済がさらに続くようなら、国民はどんどんカネを使わ(え)なくなり、ついには国内観光客数は減少に転じるだろう。

 前提を変えること、すなわちマクロ経済政策の転換こそが現状を打破できる。(明) (2008年5月合併号掲載)


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