連載コラム視点750
渡久地明(沖縄観光速報社)


国民が主導する景気回復策

 七、八月と入域観光客数が好調で、年度目標の六百二十万人達成に光が見えてきた。五月の連休明けにどんよりと曇っていた業界の表情はいまは明るい。人の心理というのは面白いもので、現状で伸びる、今後も伸びそうとなると楽観的な雰囲気が広がる。将来伸びるという予想は言葉を代えるとインフレ期待である。将来モノの値段が上がると予想できるなら、いま買っておこうとなる。

 逆に、価格が下がる状態がデフレである。売れないから価格を下げるの繰り返しが、デフレ・スパイラルという現象だ。この過程で生産量が縮小し、設備稼働率がドーンと落ち込み、従業員の賃金カットや解雇が起こる。賃金が減ると消費に回すカネがなくなるからさらにモノが売れなくなる。企業は膨大な生産能力を持っているのに設備は稼働しない、働ける人に職がないという本当のムダが発生する。

 日本は九〇年代初頭からこの状態が続いている。こうなった要因について、いろいろな指摘があるが、基本的には心理的な要因が大きく、多くの国民が景気の先行きに期待できないという不安がデフレの根拠だと考えられている。

 実際、不良債権問題とか少子高齢化、安い中国製品の流入などで、日本経済はこれ以上伸びないという迷信は、まさに迷信だったことが、いまなら説明抜きで分かるだろう。不良債権なんかとっくの昔に解決しているのにデフレから脱却していない。高速道路や郵便局の民営化で景気回復するという珍説もあったが、真っ赤なウソだった。

 経済学者は、不況を脱するには国民の信頼を取り戻せばよいと次のようにいう。

 「問題は要するに信用の問題だ。もし中央銀行が、可能な限りの手を使ってインフレを実現すると信用できる形で約束できて、さらにインフレが起きてもそれを歓迎すると信用できる形で約束すれば(略)、インフレ期待を増大させることができる。(略)必要なのは、経済が拡大して価格が上がり始めたときにも金利を上げないという約束だけだ」(クルーグマン、1998年)

 原著は十年前だが、もちろんいまでも有効である。論文では年率四%のインフレを十五年続ければ日本は正常化するだろうと結論する。

 二十年近く続いたデフレを脱却するには数十兆円規模の大型の景気対策が有効である。財源は通貨増発=金融政策である。

 この場合、従来型のの公共投資は行わない。国民に一律にカネをバラ撒いてそれぞれに消費してもらうことで、特定の業種に偏らない幅広い需要を産み出すのだ。これは経済学者丹羽春喜氏の提言だ。

 国民への政府小切手のバラ撒きはサブプライム問題でアメリカでも採用されている。景気落ち込みを回避するという強いメッセージである。わたしも丹羽教授の提言に賛同している。(明) (2008年8月15日号掲載)


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