連載コラム視点751
渡久地明(沖縄観光速報社)


どこへ行ったニコニコ笑顔

 沖縄の青少年はいつもニコニコしていた。筆者自身もそうだったと思う。大学に入った頃、沖縄の青年が筆者以外にも五人いたが、みんなニコニコしていた。あの笑顔は沖縄の人しかできないよね、とよくいわれたものだった。

 復帰前、確か興南高校だったか、甲子園に出た高校野球のチームが全員ニコニコしていた。ピッチャーがファーボールを出してもニコニコしていたのを、司会者が「あー、笑ってますね」と言っていたのを覚えている。

 いつの頃からか、たぶん三十代後半から、筆者自身もあまりニコニコしなくなっていた。「へらへら笑うなよ」という風潮になっていた。道を歩いていて笑っている人も少なくなった。

 昔、名嘉睦稔さんから聞いたような気がするが、東京で人混みの中で踊りながら歩いている人がいたので見ていたら、喜納昌吉さんだったという笑い話がある。喜納昌吉さんだったら本当に踊りながら歩いていたんだろう。

 ラグナガーデンホテルの東恩納総支配人からはこんな話しを聞いた。

 カラカウア通りを歩いていると、前から来た警官が立ちふさがって「イエローカード」を突きつけたという。

 笑顔で「スマイル、スマイル」といわれ、それからずっと笑顔で通した。

 ラグナはもともと笑顔でいることを従業員に教育してきて、ラグナスマイルとお客から評判だ。改めて笑顔でいることの大切さを思い知らされたという。

 ラグナの従業員向けエンターテイメント教育を筆者も一コマだけ新人社員と一緒に体験してみた。仲間由紀恵ちゃんを育てたという先生は、「どうしてお客さんが笑顔でないのか、それはあなたに笑顔がないからだ」と教えていた。笑顔はカガミだそうだ。自分が笑顔でいると相手もつられて笑顔になる。俳優を目指す子供たちに徹底的にこれを教え込む。同じことをホテル従業員にも教育している。これが行き届いて、ラグナスマイルが定着していった。

 先日、ロンドンからの電話は、筆者より少し年上と思われる女性からで、沖縄の観光についての問い合わせだった。

 「四十年前、わたしが中学生の頃、あなたのお父さんにあったことがあるのよ。お元気かしら」

 というので驚いた。

 「いつも笑顔でニコニコして、素敵な方だったわ」

 という。

 詳しい事情を聞きながら、二年前に亡くなった親父の笑顔を思い出して、懐かしくなった。確かにいつも、どんなときでもニコニコしていたなあ。

 沖縄の青少年はよく笑う性質を持っている。これはとても大切なことだ。ところが、最近は笑顔でいると気味が悪いという風潮になったように感じる。ハワイの警官がもっていたようなイエローカードを取り入れてみるというのもいいかもしれない。(明) (2008年9月1日号掲載)


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