連載コラム視点767ワイド版
渡久地明(沖縄観光速報社)


ハワイ 受入限界で量から質へ

■《視点ワイド版》 750万人で失業率全米最低

 ハワイ観光が七百五十万人前後で受入能力限界となっていることは、数年前から本紙も指摘していた。現地を見て責任ある立場からの証言を聞くとあっさり腑に落ちる。

 八〇年代後半、ワイキキの平均ホテルレートが百五十ドル、二百五十ドルに増やすためにコオリナを開発するという一大プロジェクトがスタートした。三つの人工ラグーンをつくり、ホテルやゴルフ場を集積するという計画だ。一千万人計画はこのときに打ち出された。

 ところが九〇年に日本のバブルが崩壊。複数の日本企業も進出を計画したが、とん挫した。ガリガリの岩場に穴を掘って、最後に海側の壁を爆破して三つのラグーンをつくるという計画は実行され、ゴルフ場もオープンしているが、ホテル建設は計画通りには進まなかった。

 ワイキキに磨きが掛かり、リゾートの中心として繁栄した。需要が増えることで客室レートは上がり、ホテルのリニューアル間隔が短くなっていった。

 カラカウア通りのショップは高級ブランド品の店に入れ替わり、アラモアナショッピングセンターは名称から「ショッピング」を外し、アラモアナセンターとなった。ショッピング以外の他の魅力が増えたことをアピールするためだという。

 コオリナの開発に急ブレーキがかかると同時に、ハワイ全体の客室数も九〇年以降、あまり増えなくなった(図2)。

 客室数は横ばいで推移した。観光客数も同様に増えなくなり、七百万人前後を維持することになる。この伸び悩みはハワイが行き詰まったのかと思わせたが、現地では別のことが起こっていた。観光客数の拡大による収益拡大から、品質を高め消費金額を拡大させる質の転換に主眼が置かれるようになった。

 直近で見ると、日本人観光客も米本土客も消費金額が拡大している。特に〇五〜〇七年は観光客はあまり増えなかったが、消費金額は急増した(図3)。

 この状態が維持できれば、ハワイはどんどん磨きが掛かり、人数はあまり増えなくても、あるいは少し減ったとしても消費金額は拡大傾向が維持できるはずだった。しかし、〇八年は年頭からサブプライムローン問題、九月にはリーマンショックが重なり、競争が激化した。各ホテルが価格を下げ始め、〇九年も継続するという。

 コオリナリゾートにはマリオットなどが進出しており、州政府もプロジェクトを推進しているという。しかし、コオリナがフルに開発される前の〇五年頃にはハワイの失業率は二・五%まで下がって完全雇用状態になり、行き着くところまで行き着いて、サステイナブルツーリズムを実現した。その実現までに明快な目標設定と、着実な推進作業が実行された点で、世界の観光地の手本になるだろ う。

 沖縄は改めてハワイの手法を学ぶべきだ。目標はハワイが数年前に実現したように完全雇用状態をつくり出すことである。それには大がかりなマスタープランと官民の桁違いの投資が必要になるだろう。嘉手納以南の米軍基地返還に向けて、新たな計画がたてられるべきだ。地方政府の役割は大きい。

 ハワイの観光客数は四年ぶりに七百万人割れとなったが、その理由は必ずしもメインランドの不況の影響ではないのではないかと一倉代表らは見ている。これも面白い。〇七年に上限に達したあと、上限に達したことそのものに起因する理由で〇八年の反動減が起こった可能性がある。〇九年も需要は冷え込むと各ホテルは見込んでいるが、一〇年には回復すると予想している。

 「〇八、〇九年と価格を下げた。一〇年には回復するので下げた分を取り返すため価格は上がりますよ。今年のハワイは得ですよ」と地元有力ホテルがいうように、本当に今年のハワイはお得と思える。(明) (2009年6月1日号掲載)


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