連載 前川昌道・IT導入、成功と失敗の法則(6)
おきなわ観光情報研究会


目的を実現する最適手段を考える

前川昌道(アイスプランニング代表・観光情報学会)

 IT導入には、導入の目的、ビジネス、ビジネスモデルを明確にすることが必要であること、ビジネスと事業戦略が大切であること、HPの作り方、多くの人に利用される工夫が必要であることを前回までで述べた。

 ITの導入やシステムを開発する場合に、目的を明確にするということを前に述べました。目的の次に考えることは、多くの場合、その目的をどのように実現しようかということで、目的を実現する手段をあれこれと考える、いわゆる試行錯誤の世界に入るといえます。

 ここでIT導入や開発において大切なことは、目的を達成する手段の決め方に有ります。

 皆さんは、この手段を決める時にどのようにして決めていますか? 大抵の場合は、思い浮かんだアイデアの一つ、二つ、せいぜい三つぐらいを並べ、比較検討して決めているといえます。ひどい場合には、一つのアイデアで決定というケースもあります。これでは、成功率はぐっと落ちてしまいます。

『失敗しない手段の決め方の法則』

●手段を考える時に、あらかじめ目的を実現するのに必要な条件を決めること。この条件は@必須条件、A一般条件の2種類に分けます。必須条件は必ず実現しなければならない条件で、一般条件は、多少ずれてもよい条件として分ける

●目的を達成するための最適手段を選ぶこと

●最適手段の決定には、縦横斜め上下から眺めること。即ち、どの方向から眺めても合格点が得られる手段を選ぶこと

●できるだけ多くの手段を列挙し、比較検討すること。手段の洗い出しは徹底的に行い列挙すること。この時、列挙することを手抜きしないこと。時間と労力を惜しまないこと

●手段の選定は、与えた条件に沿って評価し、点数の高い手段を選ぶようにすること

 多くの場合、導入する人も、開発するSEもほとんどの人は、ここに述べた作業を怠っているといえます。

 よくある諺で「帯に短し、たすきに長し」では、成功はおぼつかないということです。

 ここで問題視している点を、身近な例で説明しますと、大きな樽か瓶に入った泡盛を一升ビンに入れようとしたとしましょう。その時ビンに入れる方法として@大きい柄杓で入れる、A小さい柄杓で入れる、B樽か瓶から直接ビンの口に添え入れえる、C漏斗を使って柄杓で入れる、D紙を折って漏斗代わりにして柄杓で入れる、などの方法が考えられます。

 ここで必須条件を色々与えましょう。A.絶対にこぼさない、B.早くて絶対にこぼさない、C.多少こぼしてもよい、と仮定した場合、どの方法が一番よいか考えることにしましょう。

 先ずここで方法(手段)に点数を仮に付けます、@30点、A60点、B20点、C90点、D70点としましょう。A.B.の必須条件で一番ベストな方法は、C漏斗を使って柄杓で入れる、といえます。C.の条件では、Aの小さい柄杓で入れる、Dの紙を折って漏斗代わりにして柄杓で入れる、まで拡大することができるかも知れませんが、Cよりも評価点数は低くなるでしょう。

 ここで問題を提起します。開発技術者が大きい柄杓で入れることしか知らなかったら、あるいは思いつかなかったら、結果はどうなるでしょうか? 30点しか取れず明らかに不合格です。しかし、技術者はこの手段しか知らないから、この方法がベストと思いシステム開発をするでしょう。また、発注者にこれがベストな方法ですと説明するでしょう。発注者が何も考えない、知らない人であれば、技術者の提案を鵜呑みにして、いいシステ ムが入ると信じるでしょう。しかし、導入して初めて失敗であると気付く結果になります。

 IT導入や開発担当者は、このような失敗を起こさないよう前述したことを念頭に置いて「必須条件・一般条件をきちっと与え、最適手段を選ぶ」ようにし、成功率を高める努力が必要です。(「観光とけいざい」第666号04年10月15日)


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