連載 前川昌道・IT導入、成功と失敗の法則(8)
おきなわ観光情報研究会


目的を実現する最適手段の決定方法(3)

前川昌道(アイスプランニング代表・観光情報学会)

 IT導入で成功するには、導入の目的、ビジネス・ビジネスモデルを明確にする、ビジネスと事業戦略が大切、多くの人に利用される工夫が必要、実践手段の選定を的確にする、入口と出口を考えることなどを前回までで述べました。これまで、述べてきたことは専門的には「要件定義書」の最も重要な基本的な部分のまとめ方、考え方に相当します。

 ITの導入やシステムを開発する場合に、目的を明確にする必要があることを前に述べました。目的の次に考えなくてならないことは、その目的をどのような手段で実現しようかということ、そして、前回は条件の与え方について、「入口と出口」を考える事例で説明しました。システムにおいても事業においても、ほとんど全ての事象には入口(入力口)があり出口(出力口)があるといえ、入力 と出力に置き換えることが出来ます。

 IT導入の成功には、この入口と出口の入力は何で、出力が何かを明らかにすることが重要になります。入口に入る物、出口で欲しい物が明確になれば、次に考えることは、入口に入れた物を出口で、自分の欲しい物をいかに加工してどのようにして取出すかということになります。

 今回は、入口に入れた物を出口で取出す方法と加工の考え方について述べます。

 簡単な表現を使えば「入口で物を入れ、加工して、出口で欲しい物を取出す」ということになります。入口に入れる物が分かっていて(明らかにしてある)、出口で取出したい物も分かっている(事前に明らかになっている)ので、ここの作業ではどのような加工をすればよいかを工夫することになります。即ち、システムや製造工場の場合には、加工する手段や方法を考えることになります。ビ ジネスモデルを考える場合も同じことになります。どのような手段で実現するか、最適手段の選択手法により取出したい物と加工方法を関連付けて考えることになります。

 簡単な例で考えます。コーヒー粉を作ることを事例に上げましょう。コーヒー粉の場合には、入れる物は「コーヒー豆」で、取出す物は「コーヒー粉」です。加工は「コーヒー挽き」と「焙煎(豆を煎る)」を行うことなります。この場合に、コーヒーだけではなく粉を作るだけの条件を考えると、入れる物は色々な物が想定されます。大麦、大豆などの場合も想定されますが、しかし、出力の条 件は「コーヒー粉」ですからコーヒー豆の選定になります。

 今度は、取出しの粉の条件設定が必要になります。どのような荒さの粉を取出すかになります。つまり、粗挽きか、細かいかを決めます。この希望する条件に添って「粉引きの荒さ加減」の設定が行われます。また、豆を煎るかどうかも条件に入れ、どの程度の煎り方にするか条件設定が必要になります。これが加工作業にあたる部分で、与えられた条件に沿って、最適な出力を得る加工作業の内 容と加工する機械などを決めることになります。製造やシステムでもビジネスモデルでもこの加工作業内容(仕様)を設定した条件、入出力の条件によって決め、加工を行う(システム内作業)ことになります。

 しかし、このコーヒー豆の加工で、一つ落としていることがありますが、お分かりでしょうか? 豆を煎ってコーヒー粉だけを考える場合には、これまでの方法論でよかったのですが、取出したいコーヒー粉の種類が抜けていますね。例えば、キリマンジャロなのかモカなのか、ブレンドなのかという嗜好条件が、通常入ると思われます。完璧にするにはこの嗜好条件を入れる必要があり、コーヒー 豆の選定と取出し物の条件設定の段階に加えるべき条件になります。もしこれを抜かすと取出し条件に合わない欠陥商品を作ることになるでしょう。

 このように、ITの導入を成功に導くためには、あらゆる面を考慮して条件設定を行う、入口に入れ、出口で取出す物を明確にし、入口と出口の条件設定と仕様を決めるようにする必要があります。

 このように、条件設定や入口と出口の検討を手抜き(全てを検討の対象にし考慮することを怠る)すると、欠陥商品や欠陥システムを作ることになります。手抜きは絶対にやらないことです。

 また、欠陥商品や欠陥サービスを導入しないためには必要条件の設定や入口と出口論の分からないシステム開発者やシステムエンジニアには仕事を頼まないことです。

 また、入口と出口の一番分かる人は、発注(導入)する人本人です。入口と出口を発注者は明確にする必要があります。発注(導入)側の果たさなければならない条件設定や作業も忘れないようにするべきです。(「観光とけいざい」第669号04年12月合併号)


 |  連載9 |  HOME |
本ホームページに掲載の記事・写真の無断転載を禁じます。すべての著作権は沖縄観光速報社に帰属します。
Copyright (c) 1996 Okinawa Kankou Sokuhousya. No reproduction or republication without permission.