連載 前川昌道・IT導入、成功と失敗の法則(39)
おきなわ観光情報学研究会


南米各地の日系人社会を訪問して

前川昌道(アイスプランニング代表・おきなわ観光情報学研究会)

■南米日系社会では若者不在による空洞化が大きな問題になっている

 筆者らは、南米コロンビア、ボリビア、パラグアイの日本人移住地や日系社会を訪問し、現在起こっている諸問題を聞き取り調査した。その結果、若者の多くが日本に出稼ぎに来ていて、現地の日系社会における若者空洞化とこれに起因する日系社会の沈下が大きな問題になっていることが判明した。

 現地日系社会では、この問題解決に大変苦慮しているが、良い解決策が見つからない状態にある。日系社会の今後の発展と将来を考えると、早急に解決しなければならない問題であろう。

■解決策の提言

 日本大学国際関係学部でラテンアメリカを専門として教える福井千鶴准教授は『南米日系人の専門家養成と日本・南米連携システムの構築』の研究から具体的な日系社会の発展と空洞化対策に関わる解決策の試案を提言した。

 この提言による実践モデルについて、南米各地の日系社会や移住地において本年2月から9月にかけて説明会を開き、問題点の的確な指摘、具体的な問題解決策の一つとして大変評価された。

 ボリビアの日本人移住地のひとつサンファン移住地の日本ボリビア日系人協会より9月14日に説明会開催の強い要請があり福井准教授が出向き説明会が開かれた。また、同じ日にボリビア日系人連合会の要請で、サンタクルス日系人中央連合会の会議室にても説明会が開催された。

 本提案は、現地で大きな評価を受けたことによって、ボリビアでは、沖縄系2世の根間玄信さんが会長を務め、ボリビア国の日系人協会を束ねるボリビア日系人連合会が先週、この福井准教授による人材育成プロジェクトの窓口になることを理事会で決定した。

 また、パラグアイでは在パラグアイ日本商工会議所が窓口になる方向で具体化に向け進んでいる。

■IT人材育成を柱にした提言

 福井准教授の提唱する提言の趣旨は、プロのIT人材の育成を日本で行い、起業できる南米日系人のリーダーとリーダーの下に専門家グループを養成し、独立できるようにすることを狙いとしている。

 独立グループは、専門集団として日本の企業に認められることを第一の目標とし、日本企業との連携を確立し、その後、南米の日系社会に戻り起業することにより、現地日系社会における産業起こしと産業振興を目論むものである。

■何故ITなのか?

 IT産業を実践モデルの最初に選んだ理由として、

 (1)自己の能力があれば、コンピュータと小さいスペースがあれば極めて少ない設備投資で起業でき、比較的簡単に事業を起こすことができる

 (2)大きな投資を必要としないのでリスクが少ない

 (3)日本から中国やインド、最近はベトナムなどにソフトウエアの開発を外注する成功事例が沢山あり、南米の遠隔地でもソフト開発の受注が可能であることを、福井准教授はあげている。

■このプロジェクト推進の問題点・人材不足

 南米各地の日系社会や日本人移住地を廻り説明会開催と聞き取り調査をした結果、大学の情報処理学部を卒業した、あるいは、勉強中の若者が少しはいるが、プログラム開発の基礎知識を持った日系人の若者が極めて少ないことが判明した。

 新卒採用を除き、日本の企業でプログラム開発やシステム開発に携わる採用基準を充たす人材がほとんど居ない状況にある。この問題を解決するために、今後どのようにして基礎知識を持った若者を育成するかが課題といえる。

■南米日系の若者を登用しよう

 南米から来る出稼ぎの若者たちのほとんどは、日本の若者が嫌う3K主体の労働に就労している。これは、職業斡旋業者や、これまで来日した日系人を頼りにしていることから起こっているといえる。

 日本人の血を引く優秀な日系人の若者を専門家として育成し、独立を支援し、そして、南米の現地で日系社会の活性化に役立てるように配慮する必要があろう。また、日本において、日本人と対等に扱い登用する仕組みを確立するべきではなかろうか。

 日本社会は、少子化が進み、将来に人材不足が大きな問題になっている。この少子化、人材不足問題解決のためにも南米日系人の若者に目を向け登用する環境つくりが必要であろう。

■南米に大きな市場あり!

 このプロジェクトに興味ある方は、筆者までお問い合わせください。

筆者メールアドレスmaekawa@sky.tnc.ne.jp

(「観光とけいざい」第730号07年9月15日号)


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