連載 前川昌道・IT導入、成功と失敗の法則(46)
おきなわ観光情報学研究会


教育レベル低下する南米の日系人社会

前川昌道(アイスプランニング代表・おきなわ観光情報学研究会)

 ここ数号画期的な圧縮技術を活用した画像伝送技術によるビジネスを紹介しているが、市場で注目を集め開発会社の方には多くのビジネスの引き合いが来ている。IIC社の社長によれば月200件の引き合いをもらっているとか! すごいビジネスになりつつある。皆さんも新規事業として取り組んでみてはいかがだろうか。

■少子化進む日本で活用できないか

 さて、本号では少しITビジネスから離れ、南米日系社会と日系人問題に触れたい。何故かというと、

 @沖縄からの移住者がボリビアの移住地や他の南米諸国に多く移住していて沖縄社会ができている、

 A南米日系社会では、中心となる若者が日本に出稼ぎに出て、若者の空洞化が起こり大きな問題になっている、

 B現地では、大学を卒業しても就職先がなく、大学進学が減り、日系人の教育レベルが下がりつつある、

 C農業中心で、日系社会が大きく拡大せず、日系社会の活性化が問題になっている、

 Dこれらの問題が原因で日系社会が疲弊化しつつある、

 など南米日系移住地、日系社会で大きな問題が持ち上がっていることが、ここ2〜3年のボリビア、パラグアイ、ペルー、コロンビアなどの移住地や現地日系社会を訪問し、聞き取り調査で判明した。

 南米日系社会には多くの日本人や沖縄県系人の血が入った人々が生活する。南米に目を向け、日系社会が飛躍するよう、具体的な施策をもって南米の日系人を支援する必要があろう。

 南米からの多くの日系人出稼ぎ者は、日本でどのような職場についているであろうか。多くの出稼ぎ者は、自動車工場や周辺の企業、製造工場など工場労働者、いわゆる日本の若者が嫌う3K職場で労働者として働いているのが90%といえる。

 アンケート調査を実施したところ大学を卒業した若者も工場労働者として働いているのが実情である。南米日系人が、開発の職場やIT産業の職場でシステム開発者やプログラマとして働いている者はほとんどいないのが現状である。IT関連のプログラマやシステムエンジニアの多くは、インドや中国人が占めている。最近では、賃金の低いベトナムやインドネシア、バングラディシュからの出稼ぎ者が増えている。日本の血が入っている日系人の優秀な若者はほとんどが労働者扱いになっているのが、日本における出稼ぎの実態である。

 優秀な南米日系人の若者に目を向け、日本の少子高齢化の社会の重要な人手として活用するよう雇用環境を改善する必要があろう。この環境が変わらないのは、残念ながら日本の企業、現地の日系社会に問題がある。南米日系人の多くは、日本の人材紹介会社、人材派遣会社を頼り、出稼ぎの就職先を見つけている。この業者のほとんどは、工場と契約をしていて南米日系人を労働者として紹介・派遣しているのが現状で、この紹介の仕組みが変わらないことには、就職先が変わらないという構図になっている。

 また、南米日系人も現地より給料がよい働き先であればよいという考えで来日しているので、職種が何であろうと気にしない風潮がある。また、日本では現地より給料がよく、よい生活ができるのでそれで満足しきっている様相が見える。

 このような現状の下、現地日本人社会では大学の進学より、安易な日本への出稼ぎのマインドが進み、高校卒業と同時に日本に働きに出る風潮が増えていて、教育レベルの低下が起きつつある。この現象は、将来的な視点で見ると、これまで日系人は教育レベルが高いという評価であったが、この階層から落ち込んで底辺層に定着する人種になる可能性が大である。また、日本に来ても、教育レベルの高い日本では、やはり高学歴社会に入れず底辺層の人種として見られ、このはざまでの生活を余儀なくされる。

 このような状態になりつつある南米日系人であって良いのだろうか、非常に疑問に思えるのである。

 日本の少子化が進む社会で、南米日系人が徴用され、地位向上が望める絶好の機会といえる。この機に、地位向上の努力をするべきであろう。一つの解決策として、日本の企業で、専門知識とノウハウを学ぶことに視点を移し、企業の専門家として南米のプロのリーダーとしてノウハウを学び、南米で企業化すると同時に、日本と南米の高いレベルの連携システムの構築を推進することが必要と考える。

 IT産業分野がこの種の解決策として有望な産業分野といえる。それは何故かという点については、次号に譲りたい。

 筆者への連絡はメールで(メールアドレスが変わりました(08年9月3日)):
aissmaekawa@ybb.ne.jp

(「観光とけいざい」第743号08年4月15日号)


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