連載 前川昌道・IT導入、成功と失敗の法則(50)
おきなわ観光情報学研究会


豊かになる南米諸国‐出稼ぎが減少へ

前川昌道(アイスプランニング代表・おきなわ観光情報学研究会)

■南米からの出稼ぎに変化が起きつつある

 日本に来る南米からの出稼ぎはブラジル日系人が1990年の入管法の改正以来、著しく増え、自動車や電気製品、携帯電話などの製造や組み立て工場で労働者として就労し、これら職場のある市町村に集住している。

 日本大学国際関係学部の福井千鶴准教授による、2007年末まではブラジル日系人の来日が増加していたが、本年に入り減少し始めたという。静岡県は浜松市を中心に周辺都市、富士市や裾野市から御殿場市近辺にかけ自動車産業関連、電器関連の製造・組立工場が多く存在し、南米日系人が多く労働者として就労している。これらの工場に働くブラジル日系人が減少し始めていて、労働力が必要なのに供給の減少が始まり、人手が足りなくなって来ているという。

■ブラジル経済の好調が

 この出稼ぎブラジル日系人の減少は、近年の農産物の高騰、中国やインドなど新興国の鋼材需要の著しい増加によるものだ。ブラジルの鋼材輸出の増加が、ブラジル経済の急激な成長を促し、国内景気が高揚したことによって、これまで日本に向いていた労働力が国内産業に移り始めたからと言える。

 南米国内の景気が上向けば、日本への出稼ぎが減るという関連性を裏付ける現象ともいえる。

 ブラジルのように国内産業が大きく育っている国では、国内景気が上向けば労働力の吸収が比較的容易にできるといえるが、そこまで育っていないボリビア、パラグアイやコロンビアの国々ではブラジルのようなことが言えるか疑問である。労働力を吸収できる産業が多く設立されている国の場合は、経済が好調になれば労働力が必要になり、労働者の吸収が高まるが、小さい国では、労働者の吸収は弱含みで、来日出稼ぎ日系人の減少は望めないであろう。ブラジルと同じ事例がペルー日系人の出稼ぎにある。

 福井准教授によれば、日本のバブル期には多くのペルー日系人が出稼ぎに来日した。初期のころはペルー経済が極めて悪い時期にあり、弁護士、医師や先生など高学歴者が労働者として日本に働きに来ていたが、ペルー経済が回復し、経済環境が良くなると、これらの高学歴の日系人がペルーに戻り、また、ペルーに留まり、代わりにその下の層の日系人が出稼ぎで沢山やって来るようになったと いう。

 出稼ぎ初期のころは、自費で日本にやってくる必要があり、比較的所得が高い層でないと日本に来れなかったが、日本が多くの労働力を必要とするようになると、就職斡旋業者が渡航費を払うようになり、低所得層でも来日が容易になり、出稼ぎ来日者の層が変わったという。

 ブラジルもペルーと同じような現象が起こることが予想される。ブラジル国内で、先ず、高学歴者、経験者や専門知識のある者から就職が進み、普通にある労働力の提供者は後回しになる可能性がある。日本に出稼ぎに来る、あるいは、出稼ぎで残る層は普通の労働者ということになろう。

 日本の地域社会が腐心する南米日系人、特に、ブラジル系人の地域社会との共生推進に、層の変化は、子供の教育、非行化、犯罪の増加、生活上のマナーなど、さらに問題を投げかけることになりはしないかと心配である。

■日系社会の経済活性化をITで

 最近の出稼ぎブラジル日系人の減少は、経済成長が進み、好調になれば出稼ぎに来なくても自国で働く職場を見つけることができることを裏付けている。また、労働力の吸収の場を提供することにもなる。

 経済高度成長は、企業の活性化を大きく促すことができるもので、成長は同時に、設備投資を増大させる。この設備投資の多くには、IT技術と関連性のあるソリューションが含まれる。さらに、企業の在庫・流通や人材管理システム、会計システム、受発注システムなどのITソリューションの導入も進むことになる。経済の高度成長は、IT関連の事業活性化を刺激する好材料と言える。

 前々から、筆者及び前出の福井准教授は、南米日系人の地位向上と日系社会の経済活性化に向けて、今、経済発展が遅れていてITのニーズが低いかもしれないが、経済成長とともに企業は必ずITを必要とする時代がやってくる、南米諸国の日系人にITによる起業を、そして、専門家を養成しようと、南米諸国の日系人に呼び掛けている。また、出稼ぎに来るなら現地日系社会で生かせる専門知識、ノウハウを身につけ、南米日系社会の地位向上、経済活性化に役立てようと提言している。

 この呼び掛けにのり、ITのノウハウと専門知識を身に付け、産業起しと日系社会活性化を進めることをお勧めする。このようなことを根底にして福井准教授の下で南米日系人の支援を行うNGO組織の設立準備が進められている。設立が確定したときには、協力支援しようではありませんか。また、NGOの運営協力者を募集している。

 協力・参加を希望する人は筆者までメールを(メールアドレスが変わりました(08年9月3日)):
aissmaekawa@ybb.ne.jp

(「観光とけいざい」第750号08年8月15日号)


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