連載 Tourism Informatics (TI) の試み
(番外2)

国内での最近の沖縄ITの位置づけ
霞ヶ関のバックアップ=データセンター目指す

 地震が少ない沖縄の優位性を活用して、霞ヶ関のデータをバックアップする拠点にしようというプロジェクトが進んでいる。日本の成長戦略として沖縄ITを活用するというコンセプトだ。最近の沖縄ITの動きを取材したので紹介する。(本紙・渡久地明)

(1)■平井政務官が音頭 内閣府、モデル構築などに14億円要求

 新・沖縄情報通信産業振興研究会報告会が九月十四日、那覇市内のおきでんふれあいホールで開催された。平井卓也内閣府政務官(衆議院議員)が音頭をとって研究が進められていたもので、内閣府は研究会報告を元に来年度の沖縄振興重点予算として十四億円強を要求している。

 冒頭に平井政務官が「沖縄IT産業発展の第2ステージへ」と題して講演(写真)。「沖縄のIT振興は沖縄振興策だけでなく日本全体の成長戦略としてなくてはならないものにしていく」と方向性を示し、次のように述べた。

 沖縄のIT産業はすでに進出企業百社、雇用創出一万人に達し、二千億円産業に成長している。コールセンターは日本有数の集積地となり、データセンタービジネスも始動したと現状を説明。

 今後は民間主導でITビジネスを発展させるパスに乗せることが必要で、そのために県内外のIT関係者からさまざまな提案を受け、検討を続ける。

 沖縄振興計画後期五年の先導的プロジェクトとしてIT産業振興を位置づけ、継続的な雇用創出と経済発展を実現する自立型経済モデルを創造する。沖縄のIT戦略は一部地域の振興策だと行き詰まると問題提起し、最終的には行財政改革で進められている電子政府という新しい基盤を担うところまで視野に入れている。研究会は約三十の構想を提案し、先端技術や最新のビジネスモデルを幅広く反映するものとなっている。

 オフショア戦略としてIT。業務のアウトソーシング及びソフトウェアのオフショア拠点、人件費格差活用型から先端価値創出型への進化を第一の柱としている。

 第二にゲートウェイ戦略である。アジアとのブリッジ機能を拡充し、アジアへの情報通信ハブに発展させる。また、地震の発生率が低く、国際海底ケーブルの陸揚げ地である沖縄はグローバルIX形勢に有利である。

 第三に基盤整備が整いつつあること。沖縄科学技術大学院大学などとの産学連携を強化し、人材育成期盤が整備されつつある。IPv6やトラステッドネットワークといった最先端インフラの整備などすぐれた環境にある。

 オフショア拠点構想では業務確保の呼び水として政府のシステム・業務の沖縄移管を目指す。霞ヶ関からのシステムバックアップ・保守・運用、バックオフィス移管業務(BPO)を直接的な需要として期待。さらに官庁のレガシーシステムのオープン化を沖縄で展開する。これらの結果、沖縄IT振興、政府業務の合理化・効率化、政府の事業継続計画(BCP)(リスクヘッジ)の一石三鳥がねらえる。

 中長期的にはアジアの中心にある沖縄の地理的優位性、高度IT人材を活かし、日本品質で価格競争力のあるサービスを提供するブリッジセンターを目指す。

 平井氏はまたインド洋に浮かぶリゾート地・モーリシャス共和国がサイバーアイランド構想で過去十年間平均五%の経済成長を達成した事例を挙げ、同国を訪問した際、担当大臣が「沖縄との競合はない、連携可能だ」と意見が一致したと述べた。

 モーリシャスは人口百二十五万人(沖縄百三十六万人)、面積二千四十五平方キロ(沖縄二千二百七十三平方キロ)、南緯二〇度(沖縄北緯二五度)、産業はサトウキビとヨーロッパのリゾート地としての観光産業で、沖縄とよく似ている。

 その上でモーリシャスのサイバーアイランド化には首相が委員長となってIT内閣委員会を設置し、インセンティブ制度の構築、ビジネスパークの建設、通信インフラの整備、電子政府の主導・監督、人材育成制度の整備が国を挙げて進められた。この結果、十年間で一億五千万ドルの新規投資がなされた。

 沖縄の優位性は日本語を使うことで、外国より有利なこと。東アジアの中心に位置するというアジアのゲートウェイであり、日本で最も低い地震計数。安価な労働力をゲートウェイである沖縄はブリッジ機能を担い、品質を確保できること。国際海底ケーブルの陸揚げ地であり、整ったブロードバンドインフラをフル活用できる点が成功の鍵となる、とした。

 いまは予算要求の段階でスタートラインに立ったところだが、地域のやる気さえあれば沖縄サイバーアイランドは実現可能だ、と力強く述べた。

 この後、行政、大学、企業の情報産業関係担当者が参加して「新たな沖縄IT産業振興ビジョン」をテーマにしたパネルディスカッションが開かれ、活発な意見が出た。

 政府のIT戦略本部は〇六年の重点計画・IT戦略を推進するための施策として、「沖縄における情報通信産業の振興(内閣府、総務省、経済産業省)」を盛り込んだ。八月二十九日、来年度の沖縄振興の重点施策として沖縄IT戦略構想事業調査委託費八千万円、IT新事業創出体制強化事業三億六千万円、地域活性型先導的情報通信モデル事業八億四千六百万円、情報通信産業人材育成支援事業一億五千万円の総額十四億円強を要求している。

(2)■データセンターを強化 NTT西日本‐沖縄 首都圏のバックアップ目指す

 宜野座村サーバーファームは沖縄北部特別振興対策事業で〇二年一月に約三十億円をかけて建設・竣工した。敷地面積は約一万u。二階建ての近代的な建物にはコールセンターとデータセンターがある。

 コールセンターにはIBMなどが入居し、三百人以上の雇用を創出している。時代を先取りした海の見えるリゾートオフィスとして人気があり、地元北部はもちろん中部、沖縄自動車道を使って南部からも通勤一時間圏内となるため、駐車場にはズラリと従業者の車が並ぶ。

 データセンターは免震構造の安全・安心の建物に企業や自治体などのコンピュータを収納し、運用するという施設。コンピュータを収納するラックが並んでおり、企業にラックごと貸し出す。また、中小企業向けにはラック半分を提供したり、大規模ユーザーにはデーターセンターのスペースを提供する。これらサービスをハウジングサービスといい、稼働監視、障害対応、レポートサービスなど基本的なサービスが含まれる。

 大企業や官庁のサーバーは本社所在地の東京などに集中しているが、企業の危機管理が重視されるようになると、大都市部の地震に備えたり、事故のリスクを分散したりするという考えが一般的になった。通信環境が整った沖縄にバックアップ施設を設置するという考えが、注目されている。大きな地震が起こらない地域であるため、沖縄のデータセンターとしての立地が高い評価を得ている。

 同時に大都市圏にコンピュータ専用ルームを確保するより、通信環境が整った遠隔地の割安な地域にスペースを求め、利用する方がコストダウンにつながるというメリットもある。

 宜野座村サーバーファームはもともと地震の少ない地域への立地だが、免震構造の建物として二重に地震に備えている。

 施設は、サーバーへの電源供給盤を二系列(二回線)とって安全性を確保。停電に備えてガスタービン発電機二基を備え、無停電電源装置(二回線)、受変電設備で停電時の館内電力の切り替えを自動的に行い、安定供給を図っている。この他、信頼性の非常に高い空調設備を採用している。

 建物への出入りは入口でICカード、対面でのセキュリティーチェック、モニタ監視、さらに入居企業別のセキュリティーチェックを行い二重・三重に管理されている。

 データセンターは企業や自治体のコンピュータを預かり、安全な環境で運用するものだが、利用スペースは半分程度しか埋まっていない。環境はすぐれているが、データセンターはもともと高度な技術を持つ企業向けというイメージが強かったため、詳細なメンテナンスなどは利用者側に任せていた。しかし、危機管理意識の高まりから進出を検討する企業が増え、同時に運用・監視サービスを強化して欲しいという要望が強まってきた。

 このニーズに応えるためにNTT西日本‐沖縄は社内の専門スタッフだけでなく、企業との技術提携も含めてスタッフを強化、データセンター利用のための高度なサービスを提供していく。

 NTT西日本‐沖縄でデータセンターを担当する大濱栄作さんは首都圏で精力的に営業活動を行ってきた。

 「基本的な運用・監視だけでなく、全部任せたいという企業が増えた。新たなニーズであり、技術会社と連携して柔軟に応えていく考えだ。リゾート地にサーバーを設置できるのは県外企業にとっても魅力があるという評価だ。今後、本土企業の進出が見込まれ、データセンターをIT分野の柱の一つにしていきたい。もともとインフラは強力であり、トレンド技術を次々に導入していくことが、重要になる。ぜひ沖縄でのハウジングを検討して欲しい。足りない部分は社外とのコラボレーションで対応する」と説明している。

■北部振興策でIT産業の環境整う

 宜野座データセンターは政府の北部振興策の一環で、特にIT産業は観光産業と共に沖縄全体で政府・県が推進している。〇〇年の沖縄サミットでお隣の名護市まで光ケーブルが導入され、名護市マルチメディア館はコールセンター、研究開発オフィス、ベンチャー企業育成事業などを行っている。また、宜野座村には〇四年に国立沖縄高専ができ、情報工学の教育に力を入れている。IT関連では施設と人材が北部に集中し始め、有望な環境が整い始めている。(「観光とけいざい」第708号06年9月15日号、Web公開06年11月12日)


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