連載 Tourism Informatics (TI) の試み(2)
おきなわ観光情報研究会


重視される評判検索技術

遠藤聡志(琉球大学工学部助教授)

  前回、TI(Tourism Informatics)が観光関連情報の収集、配信、利用に関する技術開発の学問領域であることを述べた。従って、Webとの関わりあいはきわめて重要である。

 情報処理分野においては、Webコンテンツに散在する膨大な情報ソースから、本当に必要な情報を検索し、分析し、新たな知識の発見につなげるための技術としてWebマイニング(Mining):Webからの“知識発掘”が注目されている。AIにおける機械学習や大規模データベースに対する知識発見(Data mining)のWeb版と見ることができる。

 情報ソースをWebとすることで、Webマイニングは、おおむね次の3つのアプローチに大別されるようである。

(1)Web Content Mining…Webコンテンツからの必要情報をテキスト処理などで抽出する。

(2)Web Structure Mining…Webページ間のリンク情報から各ページ間の関連性や特定分野のWebコミュニティを発見する。

(3)Web usage Mining…Webページのアクセスログやクリック履歴をもとにWebページの利用パターンを分析する。

 特に(1)に関する研究としてWeb上で展開されるユーザの評判・意見を抽出する“評判検索”が重要視されている。特定製品について、良い/悪い、高い/安い、好き/嫌いなどといった選好情報を伴うテキストを数多く収集し、自社製品のWeb上での評判傾向を掴もうと言うわけである。当然のことながら、他社の競合商品に対する評判を調査することもできる。

 ところで、沖縄観光に関する評判情報は、個人の旅行記等としてすでに大量にWeb上に存在する。評判検索の対象を製品から観光スポットに置き換えれば観光地ごとの評判(評価)を抽出することが可能であろう。

 昨年度、私の研究室の卒業研究において試験的に観光地の評判検索を行った。100ケ所強の沖縄観光地に対して、Web上に存在する160件の旅行日記データに基づく評判計測であり、データ量の面で不十分ではあったが、評判の良い観光地は多くの日記で取り上げられている。評判が悪く日記データでの出現頻度が高いものはない(記憶にも残らないということか?)など、対象データが少なかったわりにいくつかの傾向が現れ、興味深かった。

 Web上の情報のように、情報発信者の素性が必ずしも明らかでないデータの信頼性がどれほどのものかという批判もある。しかし、個人旅行者のような積極的な旅行者は、Web等を活用して事前に情報収集を行なうと思われる。Webから情報を収集し旅行を計画した旅行者は、自分の旅行内容をWebにフィードバックする。次の旅行者は、その情報を利用して…といったサイクルが少なからず、観光地選択に影響を与えてはいないだろうか。

 個人旅行は今後も旅行形態の主流となるようである。そうであれば、すくなくとも今どのような評判がWeb上で発信されているかを把握する必要はありそうである。(「観光とけいざい」03年7月15日)


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