連載 Tourism Informatics (TI) の試み(10)
おきなわ観光情報研究会


沖縄の気候条件は観光資源

堤純一郎(琉球大学工学部環境建設工学科・教授)

 当たり前のことですが、沖縄は亜熱帯に属し、温暖な気候と言うことになっています。それを目当てに2月には多くのプロ野球等のキャンプが行われています。一方、昔から避暑とか避寒は旅行の目的の中でもかなり重要な部分を占めてきました。この点から沖縄の温暖な気候は、単純には冬の観光の資源となりそうな気がします。

私自身、沖縄で生活する以前は、沖縄の観光シーズンは何となく冬だろう、と漠然と考えていました。しかし、多くの人が沖縄の冬の寒さに閉口している事実を知り、また、夏が沖縄観光のピークシーズンと言うことがわかり、沖縄の観光資源は気候条件ではないのか、と意外な衝撃を受けました。

 建物や都市ではいろいろな意味で快適であることが要求されますが、私の研究室ではその一要素として温熱感覚、つまり暑さ寒さの感覚に関する研究を行っております。その延長線上にある研究として前述の衝撃を明らかにすべく、また、沖縄の観光資源としての気候条件と温熱感覚について考えることを目的として、観光客の温熱的快適性に関する調査を行いました。

 沖縄を訪れた観光客を対象に空港と首里城公園におきまして、出発地と沖縄の温熱感覚、温熱的な快適感を中心に、年間を通して4回のアンケート調査を行いました。その結果として男性からの回答には、暑さの程度が増すと不快感が増加する、湿気が感じられると暑く感じるなど、きれいな相関関係が見られたのですが、女性の回答にはこのような明確な関係がありません。実際にアンケート調査中に暑いけれど快適、という感覚が多くの女性から聞かれ、これはもしかすると快適感を理解していないかもしれない、と若干不安になっております。特に明確な結果として、出発地と沖縄の温熱感覚に若干の差があるときに、沖縄の気候を最も快適と感じていることです。この差は気象データの解析を通して月平均温度で8〜10℃程度と見積られましたが、これは東京や関西を出発地とすると11月、12月、3月、4月ころに相当する温度差です。この時期は沖縄の気候自体が非常に快適な季節ですから、温度差というよりも沖縄の気温そのものの影響も考えられます。

 温熱感覚を中心に観光を展開すれば初冬または春がベストシーズン、という結果が導かれたわけです。沖縄観光の一局面としてそんな快適な沖縄を売り込む手があるかもしれません。しかし、世界に目を向けると沖縄以上に快適なところがたくさんあります。例えばハワイは年間を通して28℃前後と、まさにこの世の楽園的な快適さです。世界の観光地としては温熱感覚だけでは勝負できません。個人的には沖縄の最大の観光資源は民俗文化と認識しています。オフシーズンを作らないような多様な観光資源を有効に活用したいものです。(「観光とけいざい」第653号04年3月15日号)


 |  連載11 |  HOME |
本ホームページに掲載の記事・写真の無断転載を禁じます。すべての著作権は沖縄観光速報社に帰属します。
Copyright (c) 1996 Okinawa Kankou Sokuhousya. No reproduction or republication without permission.