連載 Tourism Informatics (TI) の試み(11)
おきなわ観光情報研究会


多彩な研究成果と活発な議論 ■第1回観光情報学会全国大会参加レポート

遠藤聡志(おきなわ観光情報学研究会・琉球大学情報工学科・教授)

 平成16年3月11日(木)、北海道大学学術交流会館にて行われた観光情報学会第1回全国大会に参加した。午前のセッションでは、大会実行委員長、会長からの挨拶のあと、おきなわ、さっぽろ、スノーリゾート、ニセコ、はこだて、ほくだいがくせい、ゆざわ、の順に各観研の活動内容が報告された。おきなわ観研では、隔月の研究ミーティングを中心にオーソドックスな活動が行われてきたが、自治体の活動やその観光地特有のプロジェクト、学生によるボランティア的発想の活動等、いわゆる学の分野の人間が考える研究会とは明かに違う試みが多数紹介され大変興味深かった。

 ランチタイムを挟んで午後のセッションでは、まずPauline J.Sheldon 教授の特別講演が行われた。観光における情報過多(Information Overload)に関する指摘などの観光環境の解説から、インパクト分析、GISベースのデシジョンメーキングなど観光と情報の融合した研究テーマに関する話題まで、広く解説していただいた。また、情報ソースとして、ifitt(the International FederationforI Tand Travel & Tourism)のページhttp://www.ifitt.org/を紹介いただいた。観光と情報の融合分野における考え方を整理する上で非常に有益であった。また、おきなわ観研の活動を通して学んだ観光と情報技術の関係や現状に関する私の認識と共通部分が多く、観研活動の自己評価の点からも有益であった。

 若干の休憩のあと、ポスターセッションに移った。ポスターセッションでは、技術研究/開発18件の講演では、各発表1分間のリレープレゼンテーションが行われ、各ポスターのアブストラクトが紹介された。質疑の時間は設定されず、興味があればポスター会場でディスカッションができるという具合である。研究発表の全体像がある程度把握でき、必要に応じて、より深い情報収集ができる。大変面白い試みであり、本会の規模から考えてもよいアイデアだと感心した。

 ポスター会場では、一般講演に加えて7件の出展展示、7観研のポスター展示が行われた。セッション時間は、約2時間用意されており、一通り目を通すには十分である。わたしは、立場上おきなわ観研ポスターの紹介にあたらなければならなかったのであろうが、その役割は辞退して、他のポスター発表を勉強させていただいた。特に興味を引いたのは、北海道の野外彫刻の写真2,000点以上をデータベース化し、検索システムにのせるというもの。情報技術分野からみれば目新しいとは思わないが、北海道にこれほど野外彫刻があったのかという意外性(筆者は北海道出身)と写真として提供される美しさは、観光の動機付けになりうると思いつつ、しばし写真集を眺めていた。これまでの情報技術系の学会とは随分テイストの違う活動であるとも感心した。

 最後は『観光と情報〜観光立国へ向けて〜』と題したシンポジウム。パネリストは、観光カリスマのお一人、(株)阿寒グランドホテルの大西雅之氏、沖縄から(株)カヌチャベイリゾートの白石武博氏、国土交通省から東井芳隆氏に加え、司会に大内東学会長の4名。『北海道からミシュランを作る』(大西氏)、『受け地の責任自覚が必要』『学の理論と現場実務のギャップを埋めること』(白石氏)、『観光データの統一を図る』『価格競争からサービス競争への質的転換が重要』(東井氏)などの指摘がなされ、会場とも活発に質疑が行われた。ディスカッションの中で特に興味深かったのは、『この学会は現場の要求に応えることが一義のいわばnees指向である』(大内会長)、『極端にいえば学術論文とはならなくとも、観光の現場で役に立つシステムを提供することを目的とする』(北大、山本先生)といったご意見であり、従来のいわゆる学会活動とは趣を異にするムーブメントであると感じた。

 学生数名を預かる小さな研究室の責任者である筆者としては、研究としての成果・実用的なシステムの二兎を追わざるを得ず、なかなかここまでの割り切りはできない。この辺りの議論は、学会設立時の目的の一つ『産学官横断的な活動』とも深く関わると考える。どのような産学官連携プロジェクトが実施・展開されているのかという点について、本会議に参加する上で最も興味深い点であった。

 産学連携の事例としては、北大のオフィシャルサイト検索技術の開発と、(有)ソリューションテクノロジのシステム化の事例が紹介されていた。ソリューションテクノロジは、大内学会長が取締役をつとめるベンチャーであり、先の産学連携の問題に対する方法論としてうまいと思う。沖縄で同じことが出来るかといえば、まだ諸般の条件が整わないと思われる。

 次回第2回大会は沖縄開催が予定されている。情報系の学会にも通用する新しい技術開発、おきなわ観研において遂行可能な産学連携のアプローチ模索等、次回開催までのおきなわ観研の課題をあげて結びとしたい。(「観光とけいざい」第653号04年4月15日号)


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