連載 Tourism Informatics (TI) の試み(15)
おきなわ観光情報学研究会


調査ターゲットと調査方法

岡崎威生(琉球大学工学部講師)

 先の参議院議員選挙前に、電話による世論調査を経験された方もあると思う。私が今回被験者となった調査は、録音テープからの音声に対しプッシュホン信号により回答するもので、不慣れな方や年配の方からどれだけ有効な回答が得られたか疑問を感じた。

 実は今回のコラムのテーマは、調査ターゲットと調査方法である。観光戦略を議論する際に、その核となるのは需要であり、直接的にその需要を知る手段は観光旅行者あるいは潜在的旅行可能者に対しての調査となる。沖縄県内でもその類の調査は産学官を問わず頻繁に行われており、私の研究室でも一昨年と昨年に旅行者個人プロフィールと訪問地嗜好の関係に関して那覇空港で調査を行った。

 統計的側面から調査の一般論について述べると、はっきりさせるべきなのは「誰に」対して何を調べるのかということである。「誰に」は明解であるはずで母集団と表現される。正確な母集団に対する調査には全数調査が要求されるが現実的ではない。そこで標本調査となるわけだが、標本の選出方法がキーとなる。乱数表などによる単純無作為抽出が基本であり、次に母集団を構成しているデータの属性(性別・年齢など)によって同じ属性を持ったグループに分割しそこから選ぶ層別抽出、調査範囲が広範な場合などまず調査する地点を選び第2段階で選ばれた地点の中から個人を選ぶ2段(多段)抽出、層別抽出と2段抽出を組み合せた層別2段抽出などがある。いずれも無作為化を保証することが重要であり、保証できない場合は統計的な正当性を持った結論が導き出せない。

 昨今調査方法としてその利便性(大量データの収集・データの電子化)からWebによる手法を取り入れているものが多い。従来型と違い被験者の意思によって抽出された標本である。その結果、本来の「誰に」を正確に反映することが困難となる。表現を変えると調査ターゲットが別のターゲットに変わる可能性があることになる。Web調査を否定するつもりは毛頭なくデータマイニングなどにおける有用性は明らかであるが、その解析においてターゲットが何であるかは慎重に判断すべきである。冒頭の世論調査において、被験者選出は恐らく層別2段抽出が適用されたと推測するが、回答者が母集団の無作為抽出に相当しているかが関心事である。

 最後に、先日の琉球大学観光科学科に係るアンケート調査にご協力頂いた方々に厚く御礼申し上げます。(「観光とけいざい」第662号04年8月15日)


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