連載 Tourism Informatics (TI) の試み(18)
おきなわ観光情報学研究会


ミニシンポジウムレポート

遠藤聡志(琉球大学工学部教授)

 去る10月4日(月)、琉球大学工学部情報工学科において本年度1回目のおきなわ観光情報学ミニシンポジウムを開催した。このコラムで7月開催を予定として紹介していたものであるが、都合によりこの時期までずれ込んでしまった。昨年は研究会員相互の情報交換を目的とし、各月ペースで研究会会合を実施したが、今年は研究テーマや活動を広報することを目的として、シンポジウム形式で、一般公開の形をとった。記帳者は30名であったが、もう少し多くの参加者があったように思う。新年度から観光科学科の開設が決まった琉球大学法文学部の伊波教授にもご参加いただいた。

 シンポジウムは、3つのセッションで構成した。セッション1は本紙編集長、渡久地明氏の基調講演『沖縄観光成長の法則』、セッション2は琉球大学の研究者による研究テーマ紹介、6つの研究テーマが紹介された。セッション3では、J‐時空間研究所の中井智治氏、ITC沖縄の平良弘氏による『観光向けユビキタスインフラの提案』が解説された。

 セッション1および3については、本紙別記事にて詳しい紹介がなされているので内容は割愛させていただくが、渡久地編集長の講演は参加した情報工学科の学生に好評であった。

 観光という情報工学にとってはなじみの薄いものが、データ分析や理論構築という身近な方法で解説され、理解を深めることができたものと思われる。個人的には、大学向けのテキストにまとめていただけないものかと思っている。

 中井氏のGISと携帯電話を活用した新しい観光インフラの起案は、現在産学連携プロジェクトとして本研究会で最も活発に議論、準備が行われている。今後、折に触れて内容紹介をしたいと考えている。

 セッション2の各研究テーマについて簡単に紹介する。

 松田善臣氏の『ファジィ最適観光経路問題』は、これまでに松田氏らの研究グループが提案した観光経路最適化問題を、人の感覚によくなじむ表現(ファジイ数)を採用することで、より実際の観光プランニングの場面で活用できる技術となっている。

 當間愛晃氏らの『デマンドバス導入に関する技術サーベイ』は、マルチエージェント技術を応用して沖縄県におけるデマンド型バスの運行シミュレーションシステム構築を目指している。

 赤嶺有平氏らの『GISを利用した需要予測に関する基礎研究』は、これまでパーソントリップ調査や交通センサス等のデータに基づいて行われた交通需要予測をGISおよびその付随情報によって推定する方法を提案している。この研究は、當間氏らの研究成果と融合し沖縄におけるデマンドバスシステムのデザインや採算性予測が可能になる。

 高志武綾氏らの『観光情報Webサイトに対する評価システム開発』では、web利用者の目的に応じたサイト評価の方法が提案されている。この技術をサーチエンジンに組み込むことで、情報発信側と情報利用側を直接的に結びつけることができるものと考える。

 玉城梓氏らの『オンデマンド観光経路計画のための観光情報データベースシステムの開発』は、XML形式の観光情報データベース構築を目指している。観光向けのXML標準としては、XMLコンソーシアムが、Travel XML仕様勧告案(http://www.xmlconsortium.org/wg/TravelXML/TravelXML_index.html)を定めているが、宿泊やパッケージツアーの予約や決済に関するものに限定される。観光経路計画に対するXMLの仕様策定は新しい試みである。

 堤純一郎氏の『観光施設や景観の問題、観光地の環境の問題に関する提言』は発電用の風車の設置を例に挙げて、人工建造物と景観の関係、人工建造物と環境保全の問題など観光開発に密接に関連した問題を解説いただいた。本研究会にとって新たな視点を提供いただいた。

 これらの研究紹介については、アブストラクトと各研究グループの連絡先をおきなわ観研webページにまとめてあるのでご参照いただきたい。(http://www.eva.ie.u-ryukyu.ac.jp/~tnal/kanko)

 次回からは、それぞれの研究テーマの詳細についてリレー形式で紹介していく予定である。(「観光とけいざい」第668号04年11月15日)


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