連載 Tourism Informatics (TI) の試み(19)
おきなわ観光情報学研究会


ファジィ最適観光経路問題

松田善臣(琉球大学大学院 理工学研究科)

 以前、本連載において、筆者らが研究を行っている「最適観光経路問題」についてご紹介した(本誌第649号)。最適観光経路問題は、各観光地にそれぞれ価値が与えられていると仮定し、出発地、最終目的地とそこへの到着時刻を指定したとき、指定された到着時刻に間に合い、かつ途中で訪問する観光地から得られる満足度の総和が最大となる経路を求める問題である。

 このような経路計画を行う際には、各観光地間を移動するのにかかる時間(ここでは旅行時間と呼ぶ)が必要となる。これまで筆者らは、この旅行時間に確定値を用いていた。例えば、「空港から首里城までは車で30分」といった場合の「30分」が確定値であり、29分でも32分でもなく、ちょうど30分で移動できるということを意味している。

 しかし、ここで挙げた例を見たとき、ちょうど30分で移動できると考える人は果たしてどのくらいいるだろうか。たいていの人は「30±α分」かかると考えるであろう。電車などの定時・定速の交通機関を利用する場合は別として、自動車などを利用する場合には、そのときどきの状況により旅行時間は変わってくるため、現実的には「およそ30分」といった、あいまいな表現をする方が適切である。

 そこで筆者らは、このようなあいまいな旅行時間を表現するために、最適観光経路問題にファジィ理論を導入した。ファジィ理論とは、1965年にカリフォルニア大学のザデー教授によって発表された「あいまいさ」を扱うための理論である。ファジィ炊飯器やファジィ洗濯機という言葉を聞いたことがある方も多いだろう。このような家電製品にも利用されている理論である。ファジィ理論によって、これまでコンピュータが苦手としていた「あいまいさ」を扱うことが可能となった。

 最適観光経路問題にファジィ理論を用いることで、「およそ○○分」といったあいまいな旅行時間を扱うことが可能となり、より現実に即した経路計画を行うことができるようになった。また、利用者が指定した時刻までに最終目的地に到着できる可能性を伴った複数の経路を導出することも可能になるため、利用者はそのときの状況に応じて柔軟に経路選択をすることができるようになった。(「観光とけいざい」第669号04年12月合併号)


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