連載 Tourism Informatics (TI) の試み(22)
おきなわ観光情報学研究会


(バス+タクシー)÷2=デマンドバス?@

當間愛晃(琉球大学工学部情報工学科・助手=写真)、赤嶺有平(同・特別研究員PD)、遠藤聡志(同・教授)

 昨年10月に開催された「第1回おきなわ観光情報学研究会ミニシンポジウム(*1)」では、『デマンドバス導入に関する技術サーベイ』と題して、沖縄県の公共交通網の一つであるバスに焦点を当てた諸問題を解決できる可能性のあるシステムとしてデマンドバス型の運行形態を紹介しました。このテーマは本学科の遠藤聡志教授による問題提起から始まった研究テーマの一つですが、それから約半年が過ぎ、解決すべき問題の一つである"デマンドバス経路探索問題"に関して幾らかの目処が立ってきましたので、その途中経過報告を兼ねまして筆を執ることになりました。

 それでは本文に入りましょう。まず、文頭から何度か出て来ている「デマンドバス」とはそもそもどのようなバスなのでしょうか。デマンドバスの運営上における特徴としては、通常の路線バスにおいて顧客は出発・目的地に近いバス停を利用してバスに乗降者するのに対し、デマンドバスでは顧客の乗降者要求(=デマンド)に応じて適宜顧客を送迎する点が大きく異なります。一言で述べるならば「より顧客のニーズに応じたソリューション」と言う事が出来るでしょう。その運行形態は大きく分けて寄り道タイプ(基本路線を設定し、路線付近まで送迎を行う)、セミデマンドタイプ(シャトルバス等、予め顧客が多いことが分かっている地点に乗降者地点を設定する)、フルデマンドタイプ(任意の地点に対し送迎を行う)の3タイプがあります。

 デマンドバスというシステムそのものは古くから存在していますが、その多くは「もともと固定路線のバスを運営するほどの需要が少ない地域(*2)」での運用を行っているようです。そのため、実際に顧客からの乗降者要求が出たとしても、それらのリクエストをどう処理することが顧客の満足度向上に繋がるのか、すなわち、既存のバス資源をどのように分配し、どの順序で顧客の送迎を行うことが「最適な運行プラン」となるのかをそれほど考える必要性が少なかったようです。このような問題は、工学的には組み合わせ最適化問題と呼ばれ、問題を構成する要素数(ここでは顧客数・バス数)の増加とともに考慮すべき解(運行プラン)が指数関数的に増えてしまいます。実行可能な運行プラン全てについてコストを算出し、最小コストもしくは最大満足度となる最適解を求めるというアプローチは、スーパーコンピュータ・PCクラスタ・グリッドコンピュータ等による並列計算を利用したとしても現実的には取る事が出来ません。

 ではコンピュータを利用して最適な運行プランを得る事は出来ないのかというと、学術的には「実運用上問題ない程度のコストで収まる準最適解を短時間で求める」というアプローチ(これを近似解法と呼びます)でお茶を濁すことになります。次回はこのアプローチについて話を進めていきたいと思います。

 (*1)本研究会のサイトは「http://www.eva.ie.u-ryukyu.ac.jp/~tnal/kanko/」です。先の第1回ミニシンポジウムにつきましても上記サイトにて紹介ページがありますので、興味のある方はご参照下さい。
 (*2)例えば、高知県中村市ではデマンドバス導入により利便性が増し、利用者数が4倍程度に増加しています。参考URL:
http://www.city.nakamura.kochi.jp/kanko/dbus.html
http://www.jice.or.jp/itschiiki-j/deployment/areas/06-1nakamura_change.html
(「観光とけいざい」第675号05年3月15日号)


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