連載 Tourism Informatics (TI) の試み(28)
おきなわ観光情報学研究会


情報検索技術にみる研究シーズ(2)

當間愛晃(琉球大学工学部情報工学科・助手)

 前回は、口コミサイトが溢れかえっている中で適切に情報を検索するにはどうすべきかと問題提起し、それに対する一つの解を例示しました。しかし、それだけでは膨大に増え続けるコンテンツから「本当に知りたい情報」を適切に抽出する事は出来ないと思われます。その理由を説明するために、口コミ情報が観光とどう結びつくのかを考えてみましょう。

 観光業界における観光商品の PR について考えてみると、インターネット上で口コミ情報を利用したケースは今のところ見受けられません。これは、一般的な商品と違い、以下に示すような観光商品ならではの特徴が混在し、その評価が日々変化するものであるからと考えられます。

 (1)[時事性] 観光商品は、時節物・イベント物など、短期的・長期的に関わらず時間の経過と共に商品価値が変化する(必ずしも劣化とは限らない)ものであること。

 (2)[地域性] 観光商品は、ある場所で観光する際、その近辺や中間点での観光・食事・保養するといった、距離的・移動時間的な近さを考慮した地域性の高いものであること。

 (3)[人間性] 観光商品は、多くの場合どこかで人と交わる場面があり、この時の印象といった人間性に関わりのあるものであること。

 (4)[リピート性] 観光商品は、過去に良い体験を得られたならば再び類似商品を購入するリピートがありえるものであること。

 このような状況を踏まえ、観光商品(に限る必要はありませんが)のPRシステムとして、時事性や地域性といった時空間情報を統合したブログを利用したサイトを構築し、情報発信源に一般ユーザを加えた人間味溢れるコミュニティサイト的なシステムが実現できたらどうでしょうか? 一つのシステム内で閉鎖的なサイトである必要は無く、TrackBack による他のサイト(個人管理のブログなど)との連携や、他の関連性の高いサイト間同士を繋げるためのインフラ的な役目を担っても面白いと思います。産業 側からの一方的なPRだけではなく消費者側の視点による善し悪しを組み込む事により、双方に取って互いの垣根を越えた情報を共有し、議論を促します。最初は井戸端会議かもしれませんが、一旦そこから素晴らしいアイデアが生まれると、場合によっては有志が集まってベンチャーを立ち上げるかもしれません。

 話が逸れてしまいましたが、このような井戸端会議システムを作るためには情報を収集・処理・整理することが不可欠です。検索エンジンであるキーワードについて調べた結果、10万ページ中5万ページが似た内容で見る必要が無かったりすると、そのような調査活動だけで膨大なコストがかかってしまい、いつまでたっても議論には進みません。そこで適切に検索(収集)する手法について考えてみると、人間性の関係する観光情報においては自分に近い価値観や興味を持つ人の意見が有用であると考えられる ことから、口コミベースのシステムは有用性が高いのではないでしょうか。また、発信者や利用者間における交流が発生する場ならば、それをキッカケに観光などによるオフ会交流を行うことも考えられます。

 理想としては、観光をキッカケとしたコミュニティの発生を通し、人との出会い・交流の生まれるシステムとすることで観光などの地域産業へのフィードバックを起こし、社会への橋渡しとして利用されるとなお良いでしょう。そのようなシステムを実現するにあたっては、以下に示すような技術を開発する必要があります。誰か挑戦してみませんか?

<研究シーズ例>
・時空間情報を付加した情報の一元化管理。
・一元化した情報をブログ等とのコンテンツサイトとの連携の取れる形での透過性の実現。
・上記機能のシンプルなインタフェースの実装。
・トピック情報からのトピック抽出。
・ホットなトピック群からの新トピックの自動生成。
・トピック間の類似性を元にした情報提供サービス。
・それらの類似性を計算する自然言語処理技術やメタ情報付加技術。

(「観光とけいざい」第686号05年9月15日号)


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