連載 Tourism Informatics (TI) の試み(29)
おきなわ観光情報学研究会


空間情報社会と観光

名嘉村盛和(琉球大学工学部情報工学科・教授)

 「何が何処に」に関わる科学技術は「空間情報科学技術(Geospatial Information Science and Technology)と呼ばれ、近年急速に注目を集めている。その理由は、地理情報システム、地球測位システム、リモートセンシング技術、モバイル技術、各種センサー技術等の発展によるものであると考えられている。例えば、2010年には60基以上の測位衛星が存在し、瞬時にcmオーダーの測位が可能になるという。それが、高精度で新鮮な地図情報と組み合わせられると、「何が何処に」というインフラが整うことになる。さて、空間情報科学技術とモバイル技術、ユビキタスネットワーク技術を組み合わせると、いつでもどこでも「何が何処に」という情報が活用できるようになる。便利にかつ安全にこのような空間情報が我々の生活で活用されるような空間情報社会の到来はそう遠くない。

 この空間情報社会において観光分野は最も恩恵を受けるものの一つである。全ての観光地物(場所から物まで含んでいる)にはIDコードが割り当てられる。観光デジタルコンテンツには対応する地物のIDコード、位置情報が付加され、テキスト、静止画、動画、音声によって属性情報が記述される。観光デジタルコンテンツはその位置情報を介在して地理情報システムで管理される。利用者はいつでもどこでもその観光地理情報システムをアクセスすることによってバーチャルな観光が可能となる。あるいは観光地において、旅行者のレンタカーに備え付けられたGPS、GPS携帯電話によって取得された旅行者自身の位置情報と観光地理情報システムの観光地物の位置情報から、観光ナビゲーションが精度良く行えるようになる。両方とも目新しい応用例ではないが、これらが高精度でかつ新鮮な空間データのインフラのもとで実現されるのであれば、ものすごいインパクトになる。

 現状は空間情報社会実現のための課題解決に向けて議論が始まったところである。本年三月には日本学術会議で「空間情報社会シンポジウム」が開催されている。位置情報の表現・計測の技術的課題、プライバシーの保護と利便性のバランスの問題等、困難な問題が山積している。これらの問題に取り組むために、東京大学の全国共同利用施設「空間情報科学研究センター」を中心に空間情報社会研究フォーラムが設立されようとしている。琉球大学工学部情報工学科も空間情報科学研究センターの地方拠点としてフォーラムに参加している。

(「観光とけいざい」第688号05年10月15日号)


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