連載 Tourism Informatics (TI) の試み(31)
おきなわ観光情報学研究会


電子マネーで消費拡大を目指す

遠藤聡志(琉球大学工学部教授)

 沖縄産学官共同研究推進事業は、大学等の研究機関がもつ技術シーズと産業界におけるビジネスニーズを融合させ、新産業創出や既存産業の高度化を目指す沖縄県の事業である。05年度は『携帯電話と電子マネー融合型情報提供サービスによる沖縄観光消費拡大モデルの構築』がプロジェクトの一つとして採択された。電子マネー「Edy」の携帯電話用ソフトウェアの開発等で知られる(株)サイ バード、POSシステムの開発管理などで沖縄を中心に事業展開する(株)レイメイコンピュータと琉球大学情報工学科が連携している。琉球大学は、本コラムでおなじみの岡崎先生、當間先生と遠藤が参画している。

 このプロジェクトでは、昨今話題の“お財布携帯”の購買ログ(どんな店でどのくらいの買い物をしたか)とユーザの簡単なプロファイル(性別、年齢など)をもとに、電子マネーユーザのセグメント分けを行い、各セグメントに対して感度の高い情報を選択的に提供するビジネスモデルを構築する。クレジットカード等に電子マネー機能が付加しただけでは実現が難しいこのサービスも、携帯電 話に電子マネー機能が乗る事によってより現実的なものとなった。

 大学の担当はユーザセグメントの抽出、抽出されたセグメントとそれに感度の高いと思われる情報(店舗情報、サービス情報など)を結びつける方法の開発である。ユーザセグメント抽出には、ニューラルネットワークと決定木と呼ばれる2つの人工知能技術を使うアプローチ、数量化III類と呼ばれる数値解析アプローチを検討している。選択的な情報提供には、書籍のネット販売で有名なamazon.com が用いる協調フィルタリングの技術を利用する。“あなたの選んだこの本を買った他の人は、こんな本も買っていますよ”という例の仕組みである。

 現在セグメント抽出の分析作業を行っているところであるが、大手コンビニエンスストアがEdy決済を導入した事もあり予想以上のデータが蓄積されている。いまのところ、決済単位(一回の買い物)でのデータによる解析が中心であるが、レイメイコンピュータのEdy対応POSレジが普及すれば、商品単位の分析とレコメンドも可能になる。

 昨今、旅行代理店ではダイレクトメールによる商品販売が大きな伸びを示しているそうである。観光分野においてもつねに市場に向けて情報提供を行う事が重要である。このビジネスモデルは電子マネーユーザーとサービスや商品を提供するサプライヤを効果的に結びつける枠組みを提供する。単独ではITを利用した広告手段の維持管理が難しい中小のサービスサプライヤにも利用可能なものと したい。観光消費の拡大につながるサービスが構築できればと考えている。(「観光とけいざい」第691号05年12月合併号)


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