連載 Tourism Informatics (TI) の試み(47)
おきなわ観光情報学研究会


人力検索 

おきなわ観光情報学研究会・遠藤聡志(琉球大学工学部情報工学科・教授)

■Web 2.0(ウェブニーテンゼロ)的なサイト

 数回にわたり琉球大学の當間先生により、コンテンツマネージメントシステム(CMS)や高度な情報検索を実現する手段としてのセマンティックweb技術等が解説されました。これらの話題は、ここ数年のwebの変容ぶりの一例であり、このweb上で起こった技術的な進化と新しいサービスを総称して“Web2.0”と呼んでいます。旧来のworld wide webシステムがバージョン1であり、ここ数年で大幅な性能向上や利便性が上がったのでバージョン2と呼ぼうという訳です。Tim O'Reillyが、“What is Web 2.0 Design Patterns and Business Models for the Next Generation of Software”*(1)の論文で用いたことにより広まり、ネット上では次世代バージョン3.0では何が起きる、4.0では何が起きるなど先読みの議論も盛んです。

 さてO'Reillyの指摘するWeb 2.0の基本的な性質の一つに、“参加のアーキテクチャ”という考え方があります。これまでのwebでは個々人が独立に情報提供(publish)を行っていた訳ですが、これに加えて昨今のwebでは、質問/投票/評価/データ分析などの活動が行われ、その結果が新たなコンテンツとして、利用者に共有されます。共有された新たな知識は再度利用者に評価され不適切なものが除外されたり、より洗練されたりしながら有用性を増していきます。このように参加者の共同作業で実現される集約された知識を「集合知:Collective Intelligence」と呼びます。代表的な事例としてはwikiペディアがあります*(2)。

 集合知を実現するwebプラットフォームは、現在のキーワード型の検索エンジンが抱える「ブログの更新直後の発見が難しい」、「適切なキーワードが思いつかないと検索できない」などの問題を解決する可能性があります。

 集合知の活用例として「人力検索」というweb上のサービスがあります。これは、参加者が事前文章で質問し、別の参加者が該当すると思われるURL(webページのアドレス)などを示しながら回答するというものです。国内では、人力検索はてな*(3)が有名です。このサイトの旅行・地域情報のカテゴリで沖縄を検索すると、例えば、

【沖縄本島限定で、スリル体験ができるスポットを調べています。(中略)沖縄のスリルスポットを教えて下さい。】の質問に対して、

【ありがちですが、沖縄市の八重島公園と宜野湾市の森川公園にあるすべり台。】、

【本島北部の安波タナガーグムイの飛び込みスポットはいかがでしょうか?】

 等数々の回答が示されています。かなり事細かな質問に対しても親切な回答が多数寄せられるようです。参加者のボランティア精神に依存したサービスですので、継続的な参加を促すため、優れた回答に対するポイントやランキング表示などのインセンティブがあります。沖縄観光と関連付けて考えれば、国内旅行者へのきめ細かな情報提供はもちろんですが、沖縄に関する事前情報が得られない海外からの旅行者への情報提供手段として考えてみるのも面白いのではないかと思います。

*(1)http://www.oreillynet.com/pub/a/oreilly/tim/news/2005/09/30/what-is-web-20.html
*(2) http://ja.wikipedia.org/
*(3)http://q.hatena.ne.jp/

(「観光とけいざい」第724号07年6月15日号)


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